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第五話 「幸せなただひと時」



ローゼンメイデン 冬の刻


真紅らはいつも通りこの喫茶で働いている。
雛苺も特に注文の品を落としたりもしないし金糸雀もただずっと曲を弾き
真紅もずっと紅茶を入れ、白崎は料理をずっと作りたまに酒を入れていた。
そんな中いつも通り客が来る。

カランカラン
「やぁようこそ・・・って水銀燈さんですか、珍しいですね。」
「久しぶりぃ、元気してたぁ?」

ドアを開けて入ってきたのは冬休みに入って初めて見かけた水銀燈だった。
私はいつも通りメモに言いたい事書く。

“その分じゃあなたは聞くまでも無さそうな程元気ね。“
「そんだけ言えるのなら十分元気ねぇ。」

カウンターの真紅の席の前に座りそう言う。
しかし相変わらず“麗“しい子だ。
時々嫉妬しそうになってしまう。
私は私でこの体型でいいのだが。

“で、ご注文は何かしら?“


サービスの紅茶を出しつつそう言う。
この季節サービスで暖かい紅茶を出すのはとても客に喜ばれる。
サービスだけを飲んで帰ろうとする迷惑な客も居るが。
まぁそこんとこは店の注意事項に必ず何かを注文をする事と書いてあるので
それを理由に何か注文させるが。

「そうねぇ、じゃあテキーラでもお願いするわぁ。」

そんな事を考えていると水銀燈が注文を言っていた。
しかし・・・

“あなたは未成年でしょう?“
「体は子ども、頭脳は大人よぉ、人に迷惑をかけないからいいじゃなぁい。」

全く、本当にどうしようのない子だ。
そんな事を考えつつ私は白崎さんにお酒の注文をする。
私は紅茶を煎れるだけの専門なのでお酒はいれないのだ。
最も未成年がそれをするのは違法なんじゃないのかとは思うが。
暫くすると白崎さんがテキーラ酒を持ってくる。

「はいどうぞ。」
「ありがとぉ。」

水銀燈はテキーラを貰うとがぶがぶ飲み始める・・・そしてそのまま全部飲み干してしまう。

“あなた死ぬわよ?“
「平気よ平気ぃ、慣れてるものぉ。」


顔色一つ変えてない、何者なのだ?と少し疑問に思ってしまう。
慣れてるって普段からこの子はそんなに飲んでるのか・・。
反面教師になれるわね。
しかし・・・さっきからずっと気になってたが。

“あなた・・・なんなの?その服?“

水銀燈は黒のフリルのついたような服を着てきている。
俗に言うゴスロリ服と言えばいいのか?

「ん?あ、これねぇバイトの制服のメイド服なのよぉ。」

どんなバイトだ。
そんな服を着てやる仕事だなんて・・。

“一体どういう仕事なの?“
「喫茶店のバイトよぉ。」
“そんな服の?“
「そうよぉ、今流行りなのよぉ。」

こんな服を着てやる喫茶が流行るなど
日本ももう駄目ね、そう言いたい所だけど
みっちゃんが推薦した自分の着ている同じ様な
このゴスロリっぽい制服を見ると
何も言えなくなる。

“世も末ね・・。“


“しかし何故此処で働かなかったの?“
「んー?そうねぇ・・・あなた達でもう充分じゃないかなぁって思ったのと
 やはりバイト代の違いねぇ。」

バイト代ねぇ・・・。確かにそれで選ぶのもあるでしょうけど
やっぱり自分の好きな事をするのが一番ね。
と言うか此処のバイト代は一般と比べて安いか高いかもわからない。
ん・・・そういや。

“あなた、何でバイト以外の時間にその服を着ているの?“
「休憩時間よぉ、けど脱ぐのがめんどくさくてぇ。」

私なら休憩時間中でも着たまま外を出歩くような真似は出来ないのだが・・。
この子はよくそんな事が出来るな。

「あ、おかわりお願ぁい。」
“またお酒?“
「今度は紅茶でお願ぁい。」

水銀燈がそう言うので私は紅茶を煎れ始める。
湯の温度を調整しカップに紅茶を注ぎ水銀燈に出す。

「ありがとぉ。」

そう言い終えると水銀燈は紅茶を飲み始める。
しかし酒の時と同じで一気飲み、90℃の紅茶を一気に胃に注ぐ。


「ごちそうさまぁ。やっぱりこの喫茶の高級な紅茶は私の所と違っておいしいわぁ。」

・・・声も出ない。いや元からだが。
この子の神経はホントに正常なのか?
あんな熱いのをさらりと一気に飲むなんて。

“よく一気に飲めるわね・・。“
「余裕よぉ、真紅もしかして猫舌ぁ?」

確かに少々猫舌ではあるが猫舌でなくとも
普通の人でもこんな熱い紅茶は飲めない。

“確かにそうだけどそうじゃなくても一気は無理なのだわ。“
「そんなものなのぉ?」
“そんなものよ。“

そんな会話を繰り広げながら私は自分用の紅茶をカップに注ぐ。

「勤務中に飲むのぉ?」
“人が少ないから大丈夫なのだわ。“

そうじゃなくとも大体いつも飲んでるのだが。
そして飲み始めた頃に水銀燈が口を開く。

「そういえば真紅、あの人のお墓にお花供えてるのあなたぁ?」

私はずっとあれ以来花を一ヶ月に一回は供えに行くようになっている。
この子知っていたの?


“ええ、恐らく私なのだわ。知ってたの?“
「勿論よぉ、ずっと知ってたわぁ。」
“へぇ、いつから知ってたの?“
「二ヶ月ぐらい前からよぉ、あなたが供えるのを見たわぁ。」

見られてたのか、しかし全然気が付かなかったのだわ・・・。

「あなたが供えてるあの花なんて言うのぉ?」
“千日紅よ、花言葉は“変わらぬ思い“なのだわ。“
「“変わらぬ思い“ねぇ、悪くない言葉ねぇ。」
“ふふ・・・そうね。“

私は微笑みながら自分の飲んでいた紅茶の入ったカップに再び
紅茶を煎れる、煎れてる時に水銀燈が時計を見ながら言う。

「そろそろおいとまするわぁ、休憩時間が終わっちゃうわぁ。」

時間は二時三十五分だった。また中途半端な。

“何時に休憩が終わるの?“
「三時よぉ、けど行くのに二十分ぐらいかかるからそろそろ行かないとぉ。」

二十分も道をそのメイド服姿で歩いていたのか。
改めてある意味凄いと思った。あくまである意味。

「はぁい、お勘定。」


水銀燈は私にお金を渡してくる。
折角の久々の再開だったので一割引にしておいた。

“毎度ありがとうなのだわ、また来るのだわ。“
「あなたも私の店に来てねぇ。」

それだけ言うと水銀燈は出て行った。
まぁその店に行くとしても普通の格好で私は行くが。
そして水銀燈と入れ違いに家族連れの客が入ってきたので
私はいらっしゃいまでというプレートを見せるとカウンターに戻る。
雛苺が家族連れが座って暫くすると注文を聞きに行く。
そして注文を聞き終えるとこっちに戻って来て私に紅茶を2つ
そして白崎さんにパフェの注文を言った。
そうだ。
急に私はある事を思いつく。

“雛苺、ちょっと来るのだわ。“
「うゆー?なんなのー?」

私は懐から造花を取り出すと彼女の頭に串のように刺す。
思ったとおりやはり似合っている。

“似合ってるのだわ。“
「うゆー?何の花なのー?」
“苺の花よ。“
「うゆー!苺なのー!」


苺と言うだけでそんなに嬉しいか。
そんなに喜ぶと私も嬉しくなってくる。
そして私は注文の紅茶を渡すと雛苺に持っていくように言う。
雛苺が紅茶を持っていくと家族の母らしき人が
雛苺の頭に刺さってる串代わりの花を見て
その後壁にかけてある掲示板を見ると微笑む。

「ありがとね、お嬢ちゃん。」

雛苺はそう言われると喜びながら帰ってくる。
こうやって客に誉められたりする時はほんと嬉しいものなのだ。

「うゆー!誉めてもらったのー!」
“良かったのだわ。“
「ところで真紅ー。苺の花言葉は何なのー?」
“壁を見て御覧なさい。“

雛苺は壁にかかってる掲示板を見る。
掲示板には私が花の写真と花言葉を少し載せている。
そこには苺の写真と花言葉が載っていた。

“幸福な家庭、あなたを喜ばせる“


それを見ると雛苺は再び笑い、私の方を見て優しいなどと言ってくれた。
花言葉通り喜んでくださってよかったのだわ。
幸せそうな家族連れの方。
ふと見ると母らしき人がこっちを見てきたので私も家族連れの方へ目を向ける。
その人は微笑んで何かを囁いたようにも見えた。
私はそれを微笑みで返す。
こういう仕事をやってるとよく思うことがある。

一人でも多くの“麗“わしい幸せを見たい。

また一人の幸せを見れた。喜んでくれた。
それを見ると私も嬉しくなってくる。
私は幸せを見て“麗“しくなっていきたいだわ。
幸せなただひと時なのだわ。
そんな事を考えてるとまた客が来る。
私はいつも通り笑顔で客を迎える。


幸せなただひと時の出来事











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