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 2006年7月――といえば、月初から煙草の値上げがなされた。
 たばこ税の増税だという。
 愛煙家にはかなり痛いニュースなのではあるが。

「ああ、こんなことだったら先週に買いこんでおくのだったわぁ」
 ため息をつきながらも手元のクールから1本取り出して火をつける水銀燈。
「まったくですわ。私の吸ってるやつなんて350円ときたものだからたまらないですわ」
 愚痴をこぼしながらもパーラメントに火をつける雪華綺晶。
「カナは策士だから買い込んでおいたかしら!段ボール1ケース買い込んだかしら!」
 自慢げに言いながらヴァージニアスリムを吸っては紫煙を吐き出す金糸雀。
「ちゃっかりしてるよね、君は。というか吸いきれるのかい?」
 そんな金糸雀を半ばあきれた様子で見ながらマルボロを手にする蒼星石。
 愛煙家の彼女達はそんなことを口にしつつも、煙草を吸うのはやめられないといった様子だった。


「馬鹿なのだわ」
「まったくですぅ。値上がりしてもやめる気配はまったくねえです」
「かなりあもよくやるのー。ダンボール1箱分に30000円も出すなんて、ヒナにはできないのー」
「……買い込んだにしても、そうでないにしても無駄遣いには変わりない……」
 その光景を影から見ているのは、まったく煙草を吸わない真紅、翠星石、雛苺、薔薇水晶の4人。
「下手したら病気になるからやめろって言ってるですけど、全然気にしていないようです」
「本当にそうね。ほいほいと国に訳の分からない税金をあげているようなものだわ」
「でも、みんな気持ちよさそうに吸ってるのー。ヒナも吸ってみたいの」
「……絶対やめたほうがいい……。むせ返るし、一度クセになったらおしまい……」
 深刻な顔をして雛苺にそっと囁く薔薇水晶。
「……確実にあれは体を壊すよ……。肺がんやらのとんでもない病気の原因が第一それだし……子供を産めなくなるってこともある……」
「そうですぅ。一番いやなのはCOPDです。肺気腫ってやつですぅ。吸っているうちに肺が壊されてボロボロになって普通に息が出来なくなるですぅ」
「……ほら、この間公園で酸素ボンベを引っ張りながら鼻にチューブをつけた人がいたでしょ……。
 最悪、酸素ボンベなしに生活ができなくなってしまう……そうなりたい?」
 鬼気迫る勢いでそう言って雛苺に顔を近づける薔薇水晶と翠星石。


「い、いやなのー」
 雛苺は身震いしながら、今にも泣き出しそうになっていた。
「……だったらやめたほうがいい……ついでに苺大福の食べすぎも……」
「そ、それは関係ないのー?」
「思い切り関係があるですぅ。苺大福を食べ過ぎたら、体内の糖分が増えきってしまって、糖尿になっちまうですぅ。そうなったら、食事療法をしなくちゃだめですから、大好きなうにゅーが二度と食えなくなっちまうですよ。ついでにそれで皮下脂肪も増えてぶくぶくと太っちまうですぅ。相撲取りみたいになっちまいたいですか?このままいくと……大変なことになるですよ……」
「い、いやなのー。分かったの、うにゅーは1日3個までにするの……」
 そんな光景を想像してしまい、翠星石のいわれるがままに苺大福を食べる量を減らすことにした雛苺。
 そんな彼女を見て陰でにやりと笑みをこぼす薔薇水晶と翠星石。
 そして二人でこそこそと内緒話をする。


(雛苺はうまくいったですぅ)
(……計算どおり。この調子でいったら月々の出費が大幅に減らせる……)
(まったくですぅ。煙草に卵焼きにヤクルトに紅茶にかかる金は膨大ですぅ。
次は真紅でいくですぅ)
(……了解……)
 彼女ら二人はとある本の知識を元にして雛苺に話していた。


『この世の怖い病気大全』(民名書房刊)


 世間のあらゆる難病・奇病をとりあげて警告する内容の書物だった。
 

「……真紅も紅茶を飲む量は減らした方がいい……」
「何故なの?」
「……紅茶に含まれる成分にはカテキンとか体にいい成分も含まれていることで知られているけど……中にはヘロインなどの麻薬成分があって……」


 しかし、この書物はこの話をしている時点で、内容がまったくのでたらめだということが暴露されていることを二人は知らなかった。
 ウソ本であることでニュースでは大っぴらに公表されているのだが……二人はそんなこともつゆ知らず話しているのである。
 対する真紅はこのことは新聞で見て知っていた。
 もちろん、今薔薇水晶が話そうとしている紅茶の恐ろしさの内容も。


 その後、薔薇水晶と翠星石は真紅に10日間も地下室に監禁されて折檻を受けることになる。

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