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【赤い糸~魔法の指~】
第3話


(キーンコーンカーンコーン)
午前中最後の授業の終わりを告げる鐘が鳴った。
先「――――…それでは、チャイムが鳴ったので本日の授業はここまで」
結局、午前中の授業は色々考えていたおかげで、曖昧なものしかならなかった。
先生に指されることがなくて、助かったわね…。

ベ「よっしゃーっ!!昼だーっ、学食へ急ぐぞぉーっ!」
笹「待ってよ、ベジーター!」
授業終了の合図とともに、ベジータや何人もの生徒がわれ先へと教室から出て行った。

薔薇学では、昼休みに食事を取る際大きく二つのグループに分けることができる。
一つ目が、薔薇学園名物の大食堂に行って食事を取るグループ。
もう一つは、お弁当やパンなどを用意して持ってくるグループである。
少数派として、学校を出て外に食べに行く人や、何も食べない者などもいる。
私はというと毎日お弁当を持ってきて友人らと一緒に食事を取っている。
友人らとは水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、雛苺、薔薇水晶、雪華綺晶、巴、そして私を含めた9人で食事を取っている。
日によって人数に多少の変動もあるが、基本はこのメンバーだ。

雛「真紅~、早く来るの~!みんなもう屋上に行っちゃたのよ~」
雛苺とその傍に立っている巴が呼んでいる。どうやら、今日は天気がいいので屋上でお昼を取るようだ。
真「ごめんなさい。今、行くのだわ」
私はお弁当をいれた鞄を持って2人の後に続いた。

(キィー ガチャッ)
屋上へと続く階段をのぼりドアを開けると、真上に昇った太陽の柔らかな日差しと緩やかな風が私たちを迎えてくれた。

翠「あ、やっと来やがりましたね。こっちですよ、真紅、巴、チビチビ苺~」
翠星石が呼んでいる。どうやら他のみんなもあつま…って――――

雛「ぶー雛はチビじゃないの~…あっ、ジュンなの~!今日はジュンも一緒なの~?」
雛苺の言う通り、先に集まっていたみんなの中にジュンがいた。どうして?
巴「雛苺、いきなり呼び捨てはちょっと…」
ジ「いや構わないよ。名前で呼ばれることの方が慣れてるから好きに呼んでくれて構わないよ」
雛「わ~いジュン~、ありがとなの~」
水「それじゃあ、私もジュンて呼ばせてもらうわねぇ。私は水銀燈よ、よろしくねぇ~」
ジ「う、うん。こちらこそ…」
翠「何デレっとしてるですか!じゃあ、翠星石はチビ人間て呼んでやるです」
ジ「おいっ!それは悪口だろ!いくらなんでも失礼じゃないか!」
翠「なんですか、なんか文句でもあるですか!?好きに呼んでいいって言ったのはそっちですよ!」
ジ「だからって、悪口言ってんじゃね~!!」
ギャーッ、ギャーッ
蒼「翠星石、今のは明らかに君が悪いでしょ…ごめんねジュン君」
翠「蒼星石に裏切られたですぅ~…」
雪「ふふふっ、ジュン様はおもしろい方ですわね」
とたんに喧騒に包まれる屋上。そうして、ようやく私も再起動することができた。

真「え~とそれにしても、ジュ…桜田君はどうしてここにいるのかしら?」
私は疑問を直接聞いてみることにした。
ジ「………ジュンで構わないよ。えっと、僕は―――― 」
薔「私が呼んだ。今日の主役は俺たちのものだぜイェーイ(サムズアップ)」
雪「お手柄ですわよ。薔薇しーちゃん」
水「でかしたわよぉ、薔薇水晶。えらいえらい」(ナデナデ)
薔「エヘヘヘ」
なるほど、彼女が呼んだのか…迂闊だった……、こういう事態も有り得るはずなのに気づけなかった。
まったく、今日の私はどうかしている。
金「もう、そんなことどうでもいいかしら!早く食事を始めるのかしらーっ!」
よっぽどお腹が減ってイライラしていたのか金糸雀のその言葉で昼食が開始された。

金「今日のお弁当は、みっちゃん特製オムレツとたまご焼き弁当かしら~!」
雪「み、見事にたまごづくしですわね……」
薔「…シュウマイおいし」
雛「トゥモエーッ!今日のお弁当はな~に?」
巴「今日は雛苺の好きな花丸ハンバーグよ」
雛「わぁ~、おいしそうなの~ありがとなの巴~!」
翠「ふう。相変わらず、ダメ苺は巴に作ってもらってるですか…たまには自分で作ってみたらどうですか?」
水「そぉーんなこと言っちゃってぇ、翠星石だって今日は蒼星石の手作りじゃなぁい」
翠「き、今日はたまたまです。そ、それに翠星石は自分で料理できるからいいんです!」
蒼「そうだよね今日はたまたま寝坊しちゃっただけだもんね」
ジ「なんだお前、寝坊なんてしてたのか。雛苺のこと言えないじゃないか」
翠「うるせえですよ!チビ!…蒼星石にまた裏切られたです。お姉ちゃんはかなしいですよ…」
蒼「そんなつもりじゃ…」

水「真紅のお弁当は小母様の手作り?相変わらずおいしそうねぇ~」
真「あげないわよ」
水「もう真紅のけち~。ね、ジュンもそう思うわよねぇ~?」
ジ「えっ!?い、いや自分の分なんだからいいんじゃないかな…」
真「ほら見なさい。やっぱりあなたが意地汚いだけじゃないの。ねえ、じゅん?」
ジ「ん。そ、そうだな」
水「ふ~んだ何よ2人していじわる。もういいわよぉ~」
ふぅ、何だ普通に話せるじゃないか、どうやら少し気負い過ぎてたみたいね。

――――
「ごちそうさまー」
みんな口々にお昼を終わらせていく、私も食後の紅茶をいただくとしましょうか。

水「そういえばジュン。あなたどこから引っ越してきたのぉ?」
食後の暇つぶしだろう。みんながジュンに質問し始めた。
ジ「自己紹介で言っただろ…聞いてなかったのか。知ってるかなドイツのミュンヘンだよ」
蒼「へーそうなんだ。翠星石は知ってる?」
翠「翠星石は知ってるですよ。Wカップの開会式が行われた所ですね」
ジ「みたいだな。あいにく始まる前に引越しちゃったけど…それと外車メーカーも多かったな」
金「それはうらやましいかしら。カナも一度見てみたいかしら」
巴「オペラやオーケストラでも有名だよね」
ジ「う~んあいにくそっちは、あまり興味がなかったな」
雪「それにしてもジュン様は日本語がお上手ですね。とても引っ越してきたばかりとは思えませんわ」

(ドクン)
胸が激しく高鳴った。そして、だんだんと血の気が引いてきた。
何を聞いてるの?そんなことどうでもいいじゃない(…嘘)
まだ知らなくていい(…それも嘘)
うるさい!うるさいっ!うるさい、うるさい、うるさい、うるさいっ!!私の中で余計なことを言うな!
ジ「さ、様って…。僕の家族はみんな日本人なんだ。だから、家の中ではいつも自然と日本語だったんだよ。
  それに、幼稚園の時ぐらいまでは日本に住んでたんだ。このすぐ近くだよ」
雪「そうだったんですか。では、もしかしたらお会いしたこともあるかもしれませんわね」
やめて!それ以上聞きたくないの。お願い!これ以上私を追い詰めないで…。

真「そうなの。それじゃあジュンはその時のことを覚えているかしら」
だというのにこの口は勝手に何を聞いているのだろうか?これじゃあ、まるで…
ジ「えっ、僕が?…真紅は覚えてる?」
ジュンはいったい何を聞いてるのだろうか?『覚えてないのか?』ですって?ふざけないで、忘れたことなんてないわ。
そうだ、ここで言ってしまおう(私はあなたのことをずっと覚えていたわよ、ジュン!)と。
だが、私の口はまた逆のことを言ってしまった。
真「……私はよく覚えてないのだわ。なにぶん、昔のことだから」
(なに?私はなにを言ってるの?はやく言おう!嘘よ、ちょっとした冗談よって…)
ジ「…そうなんだ、僕も覚えてないよ。覚えてくれてる人がいないかなって思ってたんだけど、
  やっぱり子どものころのことなんてみんな忘れちゃうよね…」

―――― 時間が止まった。まるで血が凍っていくような錯覚に陥る。

水「そうなんだ。じゃあ、私がこれからゆっくり教えてあげるわよぉ♪」
翠「ず、ずるいですよ水銀燈!しょ、しょうがないですね。翠星石が教えてやらねぇこともないですよチビ人間」
薔「いいよ銀ちゃん、翠星石。ジュン、私が隣の席だから色々教えてあげるね?
  大丈夫、梅岡にも助けてやれって頼まれてるから…」
翠「こら!薔薇水晶おめえ抜け駆けするんじゃねえですよ!」
(ギャー ギャー)

喧騒が遠くに聞こえる。まるで私だけがどこか世界に追いやられてしまったようだ。
『覚えていない』ジュンはそう言った。水銀燈や巴のように…
私が恐れていたことが起こってしまったのだ…。

巴「真紅、真紅?どうしたの顔色真っ青だよ」
真「大丈夫だわ。でも、少し気分が悪いから先に失礼させてもらうわ…」
それだけ言い残して、私は逃げるように屋上から出て行った。
最後に見たジュンの顔は私のことを心配してくれているようだった。

梅「―――― それでは、本日はここまでみんな気をつけて帰るように」
梅岡の号令で、帰りのHRが終わった。
屋上での会話の後、その後のことは覚えていない。いつの間にか授業が始まり、いつの間にか学校が終わっていたらしい。
もうさっさと帰ろう。

水「真紅、あなたどうしたのぉ?さっきからおかしいわよ」
真「なんでもないのだわ…」
水「でも…」
真「うるさいのだわっ!もう放って置いてちょうだい!」
水「あっ、真紅ぅ」
よっぽど今の私はひどい顔をしているのだろう。しかし、心配してくれる水銀燈の言葉を無視して、私はまるで逃げるように学校から帰っていった。
今の私にはそんな気遣いさえわずらわしかった。


どこまで走っただろうか、どれだけ走っただろうか。
苦しい、体力のない私にはきつい。
でも、止まれない。止まった瞬間きっと私は泣き出してしまうだろう。
そんな、無様な姿見せるわけにはいかない。
とうとう最後は足を引きずる様にして私は家に帰っていった。

母「おかえり真紅ちゃん…?どうしたの?」
お母様の出迎えを無視して、私はすぐに自分の部屋へと入った。

真「はぁ、はっ…はっ…はぁ……うっ、ぐすっ…ひっく…うっく…うぅ~……」
自分の部屋に戻り疲れ果てた私はもうすでに限界だった。
そして、今まで溜め込んでいたものをすべて吐き出すかのように私はいつまでも泣き続けた。

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