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ジュンの受難 第三話


「まだ痛いよ・・・。この体、当社比90%弱くなってる・・・」
あちこちを老人のように擦りながら呟くジュン。
「あの後、離してもらえたはいいけど、今度は『上へ行って』かよ」
女なんて信じないほうがいいらしい。いや、あの歌は男だったか。
とりあえず、図書館で借りてきた本でも読むことにする。

「ええっ!そんなことしちゃっていいの?」
「構わないと思うわよぉ。実際、ジュンは困ってるわけだしぃ」
「でも、やっぱりちょっと抵抗があるですぅ・・・」
「なら、翠星石は帰ったら?私は退かないわ」
「そそそそんなこと言われたら帰るわけにはいかないですぅ!」
「じゃあ、電話を借りなきゃ。ええっと・・・」

「降りてきていいですぅ!というかさっさと降りてきやがれですぅ!」
階下から響く声にジュンは叩き起こされる。
「また寝てたのか・・・。体が睡眠を欲しがってるのかなぁ?」
しばらく目を眠たげに擦ると、大きい欠伸を一つして、さらに伸びを一つ。
それでやっとスイッチを入れたのか、ゆっくりと部屋を出る。
下に降りると、そこに待っていたのは色とりどりの表情だった。
翠星石と蒼星石は頬を赤らめているのまではいっしょなのだが、
蒼星石はどちらかというと喜色のほうが濃く、翠星石は恥じらいのほうが濃い。
真紅は決意を明らかに貼り付けてあるし、水銀橙に至っては妖艶な笑みさえ浮かべている。
ここから何かを読み取れなんて問題が現代文に出ても、男は赤点だろう。
(とりあえず何か言おう)
「あのさ、他の子達は?」
「ああ、遅くなっちゃったから来れないって」
(ああ、なんだ、この空気)
ジュンは何だか圧迫感を感じる。しかし、何か共通点を先ほどの表情から取り出せないか。
必死に考えてみた結果、そこにはなんだか悪戯を隠した子供のような雰囲気があった。
隠し事をしている時の、甘美なときめき。自分だけの秘密。
(ん?隠し事?)
「なぁ、君たち。この場で重大発表とかそういうのないかい?」
「よく聞いてくれたわねぇ♪ジュン?実は私たちから発表があるのぉ」
「それも、とびっきりいい奴が、さ?」
「よく聞いておくといいのだわ」
「いいですぅ?今から言うですぅ」
「泊り込みでぇ」「元に戻れるまで」「仕方がないのだわ」「世話を焼いてやるですぅ!」
「はぁ?」


頭の上に特大のクエスチョンマーク。目は点で、口は半開き。
「あの、言っていることがよく分からないんですけど」
「だから」
「いや、もういいもういい。無意味な会話はよそう。たださ、どうしてそういう結論にたどり着いたの?」
「簡単よぉ。だって、ジュンがその身長でいろいろやるのって、相当ムリがあるじゃない?」
「そりゃまぁ、そうだけど」
「だから、私たちがお手伝いしてあげるのよぉ」
「ありがたいけどさぁ・・・。僕はこれでも男だよ?」
「大丈夫よぉ。別にジュンになら何されたって構わないからぁ」
そう言ってウインク。論点の違いは無視されている。
「と、いうことで。ジュン君、もう僕たち親とかに連絡しちゃったから」
「だから着替えとかも取ってきたですぅ!」
「ついでに今日は歓迎会なのだわ。主に私のために」

ジュンはしばらく思考停止し、やっと頭の回転を取り戻した頃には既に晩餐の準備が整っていた。
どうやら自分はお誕生日席に座っているみたいで、右を見ると双子がいることが分かった。
「いやぁ、実際どうなるかと思ったけどねぇ・・・まさか許してくれるなんてねぇ♪」
「ほんとですぅ!あのじじいもたまには寛容な時があるですねぇ?」
グラスに入れたジュースをちびちびやっている双子。
「どんな魔法を使ったんだろう・・・。いや、結構本気で」
「これも愛のなせる事だよ♪ジュン君」
「あーっ!蒼星石、今のは抜け駆けですぅ!」
左を見ると真紅と水銀橙。
「大体、水銀橙は大きすぎるのだわ!半分分けなさい!」
「ごめんなさいねぇ、貧乳さん?そういう趣味の世界も世の中にはあるから気にしないほうがいいわよぉ」
「その余裕ぶった態度・・・ああもうっ!」
ジュンは聞かなかったことにした。
いつの間にか会もお開きになって、テンションがおかしかったことに気づいたジュンは、
やはり片付けの途中で酒類を発見した。お酒は20歳になってから。
「全く、結局片付けは僕がやってるんじゃないか・・・」
苦笑して、そして片づけを終わらせるとお風呂のお湯が溜まったので入浴することにした。

「ふぅ・・・湯船が広いや」
体が小さくなっているのでちょっと贅沢な気分で風呂に浸かれる。
「これからどうなるんだろ。大丈夫かなぁ・・・」
不意に不安が押し寄せてくる。
冷静に考えてみれば、自分が小さくなっていたなんて、ありえないのに。
「はぁ・・・」
溜息をついてもたいして胸は軽くはならないのだ。
その時だった。風呂の外の脱衣所で、衣擦れの音がした。
「ジュン~。一緒に風呂に入ってやるですぅ!感謝しろですぅ!」

歯車は、一つ狂うとどこまでも狂うらしい。
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