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かつて一人の科学者がいた。名はローゼン。彼は昔……研究によってある物を完成させ全世界に公表した……。その内容は、所謂「人造人間」の製作である。

「人造人間」……それは人の英知の結晶。または、我ら人間を生み出した創造の神への挑戦。
多くの研究者達が挑み、そして敗れていった。しかし中には、人造人間を完成させた者もいたが、何故かそれが公の場に出る事は無かった。この人造人間の製作技術の副産物は人類に大きく貢献したのに……。


 ローゼンは人造人間の製作に自分の息子、ジュンの細胞を使用した。彼の息子のジュンは、中学生の身でありながら、父親譲りの才能で自分の研究室を持てる程の天才であった。彼も父親の研究には興味があったので快く細胞を提供した。



実験体のコードネームは“MERCURY”。ジュンの細胞から造られたその人造人間は女性体であり(これ以降彼女)、
通常の人間の限界を遥かに超えたスペックを持つよう設定された。

当初は順調だった製作。しかし、製作開始から2ヶ月ほどたった頃から、
なぞのシステムエラーが発生するようになった。
その影響は彼女のほうに如実に現れた。彼女は、銀色の髪、赤い目。
そして背中に生えた堕天使の様な黒い翼……想像していた当初の姿形では無くなってしまった。
この件のせいで同伴の研究員達は今回の実験を失敗だと判断。ローゼンとその息子のジュン以外の者は、逃げるようにこの研究を放棄。蜘蛛の子の様に研究所から散っていった。


もともと人造人間の研究・製作は、様々な良くない噂があった。ある研究者は人造人間の製作段階で原因不明の火災にあい
データーから実験体まで無くした。さらにその後、研究を再開しようとすると原因不明の高熱を出し、苦しみながら死んでいった。
またあるものは、研究途中に突然狂ったようにあたり一面の薬品を飲み始め狂った笑みを浮べながら死んでいく。ほかにも精神病になったり、
遺書も何も無く自殺していったりする者が続出。一部では創造の神の怒り等と言われているが真相は定かではない。そのためにこの研究に着手する者は、ほぼ皆無。
だから研究員たちは自分たちの身に何かが起きる前に逃げていったのだ。

 研究者達が研究所を去ってから半年。今やこの研究所にいるのはローゼンとジュンの親子だけ。
それでも研究は今まで通り進んでいた。まるで彼らの努力に彼女が答えているかの様だった。そして彼女の外見年齢は
たった七ヶ月ほどで当時中学生だったジュンに追いついた。
そんな彼女をローゼンとジュンは、親しみを込め水銀燈と呼んだ。
 
人造人間製作は遂に終了した。彼女の体を精密に検査、耐久テストなどを全て終え、遂に彼女はカプセルから解き放たれた。

―この時はまだ誰も知らなかった………彼等でさえ彼女の中にある危険すぎる力に気付かなかった―





一方、ローゼンやジュンの2ヶ月は違った。
ローゼンはいち早くこの研究を学会、そして世界中に発表した。
まだ完成した水銀燈の公開こそして無いが
それでも世界中で話題となった。
しかしその事を妬んだ科学者や、
倫理機関などが黙っていなかった。
口を開けば、倫理だ、人権だと口を揃えてくる。
更には、宗教団体にまで神への冒涜だと言われ、
一部では“過激派が動き出している”という情報まで入って来た。
そして極め付けは“それは人類にとっていずれ脅威となる者では無いのか”
という言葉まで出始めた。
何故ここまで言われ続けられるのだろうか。
私達親子の研究は、確かに、人類の新たな可能性を生み出した。
私達親子は新たな可能性を生み出したのだ。
それなのに何故……ローゼンはこの2ヶ月で少しやつれてしまった。




一方ジュンは、この件で学校にも行けなくなってしまった。
行けば宗教団体の息子等に「お前は悪魔の子だ!」なんて言われて、
教室及び学校から追い出されてしまうのだ。
同じクラスの真紅達はジュンを庇うが、ジュンはそれにとてもありがたみと同時に自分の不甲斐なさを痛感した。
それ以来は学校へも行かず、ずっと研究室に篭って
水銀燈の経過観測を行っていた。
そして水銀燈は再び長い眠りから目を覚ました。
―――彼女は遂に目覚めた。内なる危険とともに―――――



「a coda name unknown」
『静寂』
 彼女は目覚めた――――――内なる災いの種とともに――――――

カプセルから解放され真に覚醒した彼女は、まずローゼンによって
この研究「Mercury」の世界的な公開、いや……お披露目として世界に姿を現した。
この間にも倫理機関等が依然しつこかったが、それを押し退けてお披露目会を決行した。
真紅の瞳と背中の黒い翼などがやはり特徴として挙げられたが、
一部のものは「だが、そ れ が い い」といっているものもいた。
反対に「認められない」、「悪魔の目・悪魔の羽」なんて言う声もあったが、
彼女のその美しさの前にはたいした事ではなかった。
彼女のお披露目姿は黒のゴシック調のドレス。彼女の美しさが
より際立つ。ジュンの趣味によって少しずつ作られた職人顔負けの、
この世にひとつしかないドレスだ。そのあまりにも美しいドレスを彼女はたい
そう気に入ったようで、とても大切に着ていた。


彼女はローゼンの家族として戸籍をつくり、家族として迎えられた。
母親も彼女を水銀燈と呼び幸せな家庭がおくられる…………はずだった。

 水銀燈の希望でジュンと同じ学校に行きたいという事になったのだが、
ローゼンと母は、「赤い目と背中の翼があるぐらい大丈夫だろう。最悪隠せば良い。」
なんてとんでもないことをのたまっていた。しかしその中でただジュンだけは反対した。ジュンの学校は宗教系の家の者達が支配しているような所だ。
その中で彼は立場的に弱い状況にあり、そんな親にも見せたことの無い弱い自分を
水銀燈に見られたくなかった。そんなこととも知らずに水銀燈はまったく譲らずに、
結果行く事になってしまった。

―――――――運命の歯車軋みを上げ始めた―――――――――



学校に行きだしてからの彼女はすごかった。もともと彼女は世界的な有名人
だったし、彼女の個性的な姿を一目みたいという者で彼女の周りから人がいなくなる
ことは無かった。ジュンといつも居てジュンに殺意や嫉妬の念を送る者も居たが、
それでも楽しく時は過ぎていこうとした。そう……このまま過ぎていこうとすれば
良かったのだ。
 水銀燈が学校に来てから数週間、彼らが現れた。この学園を仕切る数人組み。
彼らがジュン達に圧力をかけてきたのだ。
 ――――――幸せはもろくも崩れてゆく。春に降ってしまった雪のように――――――

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