第36話「今まで~之から」
家に帰ってみると、家の中では何も変化は無かった。しかし、ジュンの周りを囲む空気だけは、何故か妙に重々しく迂闊な質問をさせない。ジュンは、例の8人(雪華綺晶以外)皆を呼び出し、今までの事を話し始めた。
J「・・・最初っから単刀直入に言おう、俺はホムンクルスだ。」
ざわめきが広がる、今日のこの調子だ、嘘を言ってるわけではないため、対応に困ったのだろう。雪華綺晶は、この事を勿論知っている。
J「俺は、今までそして之からも、二度と作られる事は無い産物だと。」J「俺は、入隊して直ぐ特殊な実験体として、保管された。」J「何でも俺の体は特殊だったらしい、神は俺の何処が憎いんだろうな?」
その時、誰かが生唾を飲む音がした。
J「その後、様々な薬物投与、改造、筋肉の圧縮・・・様々な事をされた。」J「悲惨だ・・・あの時はそう思えた、しかし日が進むに連れてそういった感情も消え失せて行った。」J「狂わなかったのは、俺の体の特別な作用で俺が受ける、精神的ダメージすら削っていたらしい。」J「その時は、俺と同じような人が数人居た、どいつもこいつも大抵は死んでいった。」J「哀れな事に、そいつ等の中には人身売買で、よこされた奴もいたらしい。」J「6ヶ月だ・・・6ヶ月の実験の末、今の俺(ホムンクルス)ができた。」J「暫くは体が変化し続けて、自分でも中々使いこなせなかった。」J「何もかもが厭になって、その後あそこで暴れる気にもなれなかった。」J「実験が終わる日まで、いろんな人が遊びに来てくれた。」J「どの人も良い奴ばかりだった、国に帰れば家族も居る奴も居た。」J「結局、残ったのは俺だけだった、後にも先にも俺だけ、他の数人は中途半端な身体で逃げていった。」J「その後は、軍の特殊中位として任務に付いた。」J「そして今に至る。」J「あんな馬鹿げた事は、人がするべき行為ではない、あれ以来俺のような、ホムンクルスを作るのは中止になった。」
皆が黙りこくる、普通の人だと思っていたジュンが(確かに身体能力は異常だが)。ホムンクルス(人造人間)だった事に、聞いていた8人は驚いた。
J「暫くしてここに来て、それ以降俺は人には出来ない事が、出来るようになってしまったのが判った。」J「200キロの弾が、止まって見えて。」J「トラックの衝突が昔感じた、子供のパンチ位しか効かなく。」J「鋼鉄を豆腐の様にバラバラにし、硬球は握るとBB弾ぐらいのサイズに。」J「その力は実に、巨大すぎた・・・いつの間にか俺の人格は、それを非常事態と認識し。」J「自分の中に様々な人格を生成し、その各人格にその力を隠し、俺は自分の力も隠す事にした。」J「いつか、今日のような日が来るまで、何日も・・・何ヶ月も・・・」J「決して、この引き継いではいけない、ストーリーを揉み消すために。」
其処まで言うと、ジュンは立ち上がった。
J「・・・質問は?」
素っ気無い一言だった、しかし其れは余りに疲れて聞こえてしまった。とても、余りに寂しい話だった。
J「・・・無いのか・・・それでは、講習会を終わる。」
それだけ言うと、ジュンは自分の部屋に入っていった。余りに急な話だった、余りこういう話に耐性が無い雛苺と金糸雀は、ただただ呆然と立ち尽くしていた。
雛「・・・ジュン、話している途中何か寂しそうだったの・・・」金「確かに、そうだったかしら・・・」
しかし皆何も言わない、言うにも言い出せない空気のまま、皆は解散した。各自は自分の部屋の戻り、自分に出来る事は無いかと探したが。生憎何も見つかる事は、出来なかった。その中で、雛苺は感情が失せる事について考えていた。ジュンが、感情が失せていくという言葉が、酷く印象に付いたのだろう。
雛「感情が無いってことは・・・うにゅーとか食べても、美味しいとか思えないのかなぁ?」雛「それは・・・嫌だなぁ・・・ちょうちょさんを見ても、綺麗と思えないのかなぁ?」雛「どんなに友達が居ても、楽しくも無いのかなぁ?それは・・・哀しいなの・・・」
いつの間にか雛苺は寝ていた、見たのは何故か変な夢で。ジュンが虚ろな目をして、ただ座っている夢だった。周りは皆楽しそうなのに、一人だけ虚ろな目をして、ただジッと座っていた。その周りをちょうちょが舞っても、花が咲き乱れていても、眉一つ動かさない。そしてジュンは何処からか湧いた手に、連れ去られてしまった。
・・・目が覚める・・・最初に見たのは、白い天井・・・徐々に脳が覚醒する。起き上がって、最初に見たのは翠星石で。目が覚めて、一番最初に言われたのは、翠星石の大丈夫ですか?で。第二声が、とっとと用意をするですよ、だった。じっくりと考えてみる、寝る前の記憶は無い。雛苺はどうやら、うなされていたようだ。
その頃のジュンはと言うと・・・
J「さぁ・・・覚悟と我慢の時間だ・・・」ア「さっさと用意しろよ、あの姿のほうが早いな。」J「・・・出来ればこういう理由で、使いたくなかった。」ア「早くしろ、バレて移動手段がなくなるぞ?」
それもその筈、使えるのは家にある大型防弾車のみ。おまけに、何処が安全なのか判らないため、迂闊な雪華綺晶のテレポートは出来ない。おまけに何時から、こうなったのか判らないため、何時陸軍が来るのか判らない。しかも生憎誰一人、陸海空軍のレーダーの番号を知る者も居ないため、陸軍との会話もまま成らない。相手もコレを読んでるであろうがため、追い討ちになるのは目に見えている。まさに、地獄だ。
翠「つまり、この家が見つかるのも時間の問題、とっとと出て安全な所に逃げてしまう、と言う事です。」雛「うゅ?それじゃあ、この家ともさよならなの?」翠「お馬鹿苺にしては、随分いい線をつきますね、判ったらとっとと家を出る用意をするです。」雛「雛は馬鹿じゃないもん!」翠「はいはい、さっさと用意するですよ?」雛「うぃー・・・」翠「さてと、私も用意をしないといかんです・・・」
そう言うと、翠星石はさっさと行ってしまった。さっさと用意をする雛苺、持ってきたのが基本的に少なかったため、用意する量は他の人より無かったが。
雛「ふぅ・・・やっと終わったの・・・」
ふと何処からか甘い香りがする、匂いを辿っていくと・・・ジュンの部屋のようだ。最初は入る事に良心が咎めたが、余りある好奇心に勝てなくなったのか、入っていく。其処に居たのは、白いコートのようなよく判らない、丈夫そうな服を着て長い黒髪の人が居た。胸の膨らみから、女性である事が雛苺にも判った。(用途はよく知らないが。)どうやら、匂いはこの人から出てるようだ。
雛(うゅ・・・甘ーくて優しい、とても良い匂いなの・・・)雛「うゅ・・・おじゃましますなのー。」??「えーっと?・・・あれ?貴女はだぁれぇ?」雛「うゆ?雛は雛苺って言うのよ、あなたは?」メ「私はメグ、姉崎メグ!雛苺ちゃんかぁ・・・良い名前ね、それじゃあ用事があるからじゃあねぇ?」
少し雛苺を舐め回す様に見た後、もの欲しそうな顔をした後。メグは、颯爽と廊下を駆けて行ってしまった。此処の先には男子トイレと、掃除用入れしかない。
雛「あ・・・誰だったんだろう?まぁいいか。」
その後をゆっくり追うように、雛苺は其処を出て行った。メグの行った方に進んでいて、水銀燈に会った。
雛「うゆ?」銀「あらぁ、雛ちゃんじゃない、用意は出来たのぉ?」雛「うい!雛はもう用意は出来たのよ。」銀「良い子ねぇ。」雛「えへへー・・・あ!此処を黒くて長ーい髪の人は、通らなかった?」銀「うーん・・・生憎そういう人は、見てないわぁ、ごめんねぇ?雛ちゃん。」雛「うゆ?うーん・・・判ったの!それじゃあ、また後で会うの!」銀「はーい、また後でねぇ?」
そう言うと、雛は自分の部屋に戻り、荷物を持って広間に上がっていった。暫くすると、皆が上がってきたが、やはりメグの姿を見ることは無かった。
J「さて・・・後は、車に乗って行くだけだ。」翠「本当に、大丈夫なんですかぁ?こんなチビ人間と一緒なら、心配で心配で堪らんのです!」J「なっ!お前の方が・・・まぁいいや、とっとと行くとしよう。」翠「・・・何か物足りんです・・・」薔(翠星石Mだ・・・)
そう言うと、全員は車の所に行き、荷物と乗せ整理すると全員は車に乗り込み、点検をすると出発した。
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