『愛って、なんですか?』前編
『愛って、なんですか?』キミに初めて会ったのは、穏やかに晴れた、春の昼下がりだった。病院の中庭で蹲り、苦しそうに咳き込んでいたキミを見付けて――ボクは、手を差し伸べずにはいられなかった。――それが、ボク達の馴れ初め。あれから、もう半年が過ぎようとしている。なのに、彼女の病状は相変わらずだ。心臓の病だと聞かされたときは、流石にショックで、目の前が真っ暗になったのを、今でも憶えている。同い年の娘が、刻一刻と近付く今際の時を待ちながら日々を送っているなんて、考えたこともなかった。でも、世界中では常に起きていること。ボクより若くして、この世から去っていく人たちだって居る。だから、ボクは毎日を大切に生きようと思い、今日もまた、彼女の元を訪れる。高校のクラスメートにして、彼女の親友でもある水銀燈と一緒に。「はぁい。今日も来たわよぉ。麗しき乙女たちの御登場ぉ~♪」病室の戸を軽快にノックするや、水銀燈は彼女の返事を待たずに、扉を開く。ボクは苦笑しながら、水銀燈の後ろに付き従う。二人でお見舞いに来る時は、いつも、この順番だった。水銀燈と彼女の関係を知って、なんとなく、そうした方が良いと思えたから。
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