第三話
雛「…じゃあまた明日ね!JUM!」
雛「……はぁ」
あの日からもう半年近く経とうとしている。季節は移り変わり、春。もうすぐ春休み。私はあれからまだ…一度もJUMの顔を見ていない。日に日に募るのは焦りばかり。もしかしたら…ううん!そんなことない!絶対に大丈夫!
そう思いなおして家路へと急ぐ。
不意に後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。誰?
金「雛苺!待つのかしら!」
金糸雀だ。でも、どうしてこんなとこにいるんだろう?雛「金糸雀…どうかしたの?」金「…ヒナに話があるのかしら」雛「話?何の話なの?」金「ヒナ…今日もJUMのとこに行ったのかしら?」雛「…うん。そうなの」金「まだ…あれからJUMに一度も会えてないんでしょ?」雛「……うん」金「もう半年も経つのにそんなんじゃ、いくら毎日JUMのとこに行ったって無駄かしら!」雛「……」金「そろそろ考えを変えた方がいいんじゃないかしら」雛「じゃあ…じゃあどうすればいいの!ヒナだって…ヒナだって…」
私だってそんなことぐらい分かってる。このまま毎日JUMのとこに行ったって何の意味もないことくらい。どうにかして変わらなきゃ前には進めないことくらい。でも、どうすればいいの?…涙が出てきた。どうすることも出来ない自分が情けなくて…
金「ちょ、ちょっと!ヒナ泣かないでかしら!別にヒナを責めに来たわけじゃないのよ!」雛「でもぉ…ヒッグ」金「カナが知恵を貸してあげるのかしら!だから泣いちゃダメかしら!」雛「エック…なにかいいアイデアでもあるの?」金「ヒナ、あなたJUMのとこには毎日決まった時間に行ってるでしょ」雛「…うん。そうなの」金「やっぱりね。それだからJUMと会えないのかしら」雛「どういうこと?」金「JUMはヒナが来る時間が分かってるんだもの。その時間になったら部屋に入ってるに決まってるかしら」雛「……」金「だから、少し時間をずらしてJUMのとこに行って見たら、もしかしたらJUMに会えるかもしれないかしら!」雛「時間をずらすって言っても…学校があるのよ」金「明日は短縮授業かしら。いつもより学校終わるの30分は早いかしら!」雛「でも……大丈夫かな?急に行って、JUM怒ったりしないかな?」金「それは…わかんないかしら」雛「そ、そんな無責任なの!」金「ただ分かってるのは、このままじゃ何も変わらないって事だけかしら」雛「……」
…金糸雀の言うとおりかもしれない。このままじゃ何も変わらないもん。ずっとこのままでいるくらいなら…
雛「…わかったの。金糸雀ありがとうなの!」金「うん。がんばるのよヒナ!」
金「…ふう」
ちょっと雛苺には可哀想な事をしてしまったかもしれない。私がもっと早く決心してれば、雛苺がこんなに長い間辛い思いをしなくてすんだかも…
…いや、そうじゃない。急いては事を仕損ずるかしら。わざわざこれだけ待ったんだもの。きっとJUMだって少しは心を開いてくれてるはず…
でも…ほんとによかったのだろうか。まだJUMが心を閉ざし続けているなら…ヒナが傷つくことになるかもしれない。そしたら、ヒナは今よりもっと辛い思いをするかも…
金「…考えてても仕方ないかしら!」
そう、もう行動を起こしてしまったのだから悩んでも仕方ない。そして、策士の名にかけて失敗するわけにはいかない。大丈夫。すべての場合は想定済み。…最悪の場合に備えて次の策を行動に移さないと!
―――雛苺のために……そして、彼のために
そして次の日…
(キーンコーンカーンコーン…)
ようやく学校が終わった!金糸雀が言ったとおりいつもより30分ほど早い。もたもたしてられない……急ごう。
雛「はっは…」
不安と期待で胸を躍らせながら、息を切らしてJUMの家へ走る。これならきっと金糸雀の言うとおり…もうすぐJUMの家…あとちょっと…
J 「ふう…この辺にしとくか」
今日もいつもと同じサイトを巡回し終わった。ふと、時計を見ると3時半。今日はなんだか早かったな。まあ、毎日見てるし、そんなに頻繁に更新されてるわけじゃないもんな。
J 「あいつが来るまであと30分はあるな…」
30分か…喉が渇いたし、何か飲み物でも取ってこよう。そう思って僕は部屋を出た。
雛「はぁはぁ…」
ようやくJUMの家に着いた。後はドアを開けるだけ…
雛「…ゴクリ」
(ガチャガチャ)
雛「あ、あれ?」
鍵がかかってる。そうか。いつもより早いからまだのりが帰ってないんだ。
雛「でも、大丈夫なの!」
ちゃんと鍵の隠し場所くらい…あった!やっぱり植木鉢の下にあったの。
雛「それじゃ改めて…」
(カチャッ…)
階段を降りている途中、玄関の鍵が開く音が聞こえた。誰だ…?おかしいな…まだ姉ちゃんが帰るには…
不審に思って、すぐ玄関を見る。…僕は目を疑った。
――そこにいたのは雛苺だった。
なんで?どうして?そんなはずは…だってまだ…
雛「JUM!!!」JUMだ!金糸雀の言ったとおり!あんなに会いたかったJUMがそこにいる!
J 「……っ!」考えてる場合じゃない。見られた!逃げなきゃ!早く部屋に!
雛「待ってJUM!ヒナは…」どうして?どうして逃げるの?私はただ…
(バタン!!!)
J 「はぁはぁはぁ…」
これでもう大丈夫。あいつは入って来れない。
雛「お願いJUM!開けて!!」
うるさい!頼むから黙っててくれ!
雛「ヒナは…ただJUMとお話がしたいだけなの…」
お前のことなんて聞いてない!
雛「…どうして…なの?ヒナは…ちっちゃい時みたいに…ただJUMと一緒にいたいだけなのに…」
そうだ…元はと言えばお前が…お前のせいで僕は…
雛「さびしいよぅ…JUM…」
お前が僕につきまとったりしなければ…!!!
雛「ねぇ…JU…」
J 「黙れ!」
雛「!!!!!!JU…M?」
J 「鬱陶しいんだよ!毎日毎日うちに来ては僕の部屋の前でべらべら喋りやがって…!」
J 「もう僕に付きまとうのは止めろ!もう小学生の頃とは…子供の頃とは違うんだよ!!!」
J 「お前がそんなだから…何も変わらないから…!!」
J 「僕がこんなことになったのも…全部お前のせいだ!もう二度と来るな!」
雛「……ッ!」
(タッタッタッタ…)
の「ただいま~!あら!ヒナちゃんいらっしゃい!今日は早いのねぇ」雛「……」の「ちょ、ちょっと?どうしたの?…行っちゃった」
の「…JUM君と何かあったのかしら?泣いてたみたいだけど…」
雛「……」
―――僕がこんなことになったのも…全部お前のせいだ!
私が…私のせいでJUMが…私が何もわかってなかったから?子どもだったから?私が…私が悪いの?
巴「どうしたの雛苺?」雛「!」
巴だ。巴がいる。
雛「巴…巴……うわーーん!!!」巴「雛苺!?一体何があったの?ねえ!ねえってば!」
…私はそのまま巴の胸の中に泣き崩れた。
―――JUMの言葉が頭から離れない…
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。