「あなたを呼ぶ」後日談4
外で遊ぶという情報のない頭を絞って考えた結果、ショッピングについては、彼女のほうが詳しいから駄目。遊園地にいこうと思う。ちょうど、くんくん関連の催し物があるらしい。彼女の部屋に行ったとき、くんくんのDVDが置いてあったし、ちょうど、いいだろう。昨今のくんくんブーム再燃に、僕は最大限の感謝の意を表する。財布と服装、その他諸々のチェックを済ませ、水銀燈を呼びに行く。ジ「水銀燈?準備できたか?」銀「はぁい」彼女は、いつもの黒い服とは、正反対の白い服を着ていた。銀「どうかしらぁ?」ジ「うん、白もかわいいよ。」よかった。どうやら機嫌は大分直ってるようだ?銀「それで、どこに連れていってくれるの?」ジ「行きたい所ある?」銀「そうねぇ、特にないかしら。 当然、ジュンがエスコートしてくれるのよねぇ?」ジ「う、お気に召せばいいんだがな。 遊園地のRosengartenでどうだ。 今、くんくんの催し物がやってるらしい。」銀「くんくんの催し物!?なにそれ!?始めて聞いた。」テンションが高い水銀燈に驚きつつも、僕はチラシを手渡す。しかし、日本語にすると、薔薇園って名の遊園地で、くんくんショー(正式名称:名探偵くんくん、すべての謎をここに)はどうかと思う。相当経営きついんだなーとかどうでもいいことを考えていると、水銀燈がしゃべり始めた。銀「……まぁ、私は別にこんなのどうでもいいんだけどぉ、 せっかく、ジュンが考えてくれたんだし、付き合ってあげるわぁ。」言い終わると、彼女は僕の手を引き、歩き出した。……というより、走り出したという速度に近い。ジ「水銀燈、歩くの速すぎ。もうちょっとゆっくり……。」腕が引っ張られてイタイ。銀「ジュンが遅いのよぉ。ほら、早くいきましょ?」彼女の速度は変わらず、遊園地につくまで、僕は引っ張られっぱなしだった。
くんくんショーの中身としては、、撮影に使用した人形や台本の展示、で、目玉は会場限定のオリジナルストーリーの放送だそうだ。会場限定のくんくんグッズもきっちり販売している。彼女は、時間をかけその全てを堪能した。会場限定のくんくんグッズは、僕がおごった。銀「まぁ、ジュンが買ってくれたものだし、 大切にするわぁ」と、会場限定、薔薇をくわえたくんくんを抱きしめる。オリジナルストーリーの放送後には、銀「うふふ、くんく~ん」と、幸せそうにつぶやいていた。……ちょっと、くんくんが羨ましいかも。その後、ロッカーに荷物を保管し僕と水銀燈は、遊園地を楽しんだ。最初は、「私は別に、こんな子どもっぽいもの」とか言っていたけど、途中から、「ほんとに楽しいわぁ」と言ってくれるようになった。本当に、心の底から楽しんでくれてるみたいでよかった。やっぱり、僕は、笑っている水銀燈が好きだ。日も暮れかけ、そろそろ閉園時間だ。楽しい時間も今日は、これでおしまい。銀「ジュン、おみやげ見ていっていいかしら?」当然、二つ返事でOKした。店に入ると、Rosengartenだけあって、薔薇をあしらったお菓子や、キーホルダーや、シールや、シャツなどが所狭しと並べられていた。しばらく見てると水銀燈が声をかけてきた。銀「買い物終わったわよぉ。」ジ「ん、じゃ帰ろうか?」銀「うん。」彼女は店からでると、薔薇のモチーフにしたネックレスとリングをとりだした。銀「ふふ、コレ買ったの。なかなか可愛いでしょ。」そういいながら、ネックレスとリングを身に着ける……が、リングのサイズが大きいようだ。銀「ちょっとリングが大きいわねぇ。 ジュンならピッタリなんじゃない? ジュンにあげるわ。」そういいながら、彼女は指輪を差し出してくる。ジ「僕に、指輪か……似合うかな?」とりあえず、受け取る。と、ここであることに思いつく。ジ「サイズ変えてこようか?」銀「駄目……。」ジ「なんで?」銀「なんでも。駄目なものは駄目なの。」ジ「そんなこと言われてもなぁ…… 僕には必要ないし。 ……ちょっと待ってて?」そういって、僕は店に向かう。薔薇のリングを前にして、考える。水銀燈のリングのサイズってどのくらいだろう?リングを手に取り、チェックしてみる。……ってか、試しに身に着けることができるのに、なんで、水銀燈は、サイズ間違えたんだ。……そっか、最初から僕にくれるつもりだったんだ。だから、交換は駄目ってわけか。なら……………。 僕が、水銀燈の元に戻ると、彼女は泣いていた。僕はあわてて駆け寄る。ジ「水銀燈?どうしたんだよ?」銀「なんで、私のプレゼント受けとってくれないの? ジュンは、やっぱり真紅って子が好きなの?」ジ「え?」意外な言葉に僕は止まった。銀「だって、電話で真紅と話してたとき、 すっごい嬉しそうな顔してたよ。 私といるときよりも、嬉しそうな……」ジ「そっか……。僕、そんな顔してたか……。」たしかに、真紅と話すのは嬉しい。彼女は、僕にとって大切な人だから。銀「私と紅茶飲むのだって、 私が、彼女の代わりだからなんでしょ? 私は、ジュンのことが好きなのに…… ほんとに、ほんとに、大好きなのに…………。 なんで?……なんで、私じゃないの……」確かに、僕にとって、真紅は大切な人だ。でも、僕が好きなのは――。ジ「水銀燈、手を出して。」銀「手?」ジ「いいから」彼女は、泣きながらも手を出す。僕は彼女の手に薔薇の指輪を置く。ジ「はい。水銀燈の分。」銀「……違うの、私が欲しいのは、こんなものじゃないの! 私は、ジュンとペアでつけたいのよ!」ジ「どうせペアなら、指輪のほうがいいだろ?」僕は、僕の左手の指輪を見せた。ジ「たしかに、真紅は大切な人だけど…… 僕が、好きなのは水銀燈だけだから。」水銀燈が、笑ってくれるように。水銀燈が、そばにいてくれるように。水銀燈に、僕の気持ちが伝わるように精一杯の思いをこめて、言った。銀「ほんとに、ほんと?」ジ「ああ、本当だ。」彼女は、さっきよりすごい勢いで泣きじゃくるジ「水銀燈?僕、へんなこといったか?」銀「違…うの。……私……嬉しくって…… ……すっごい………………嬉しくって」とりあえず、水銀燈をベンチまで連れて行った。目が真っ赤になってるし、冷たいものでも買ってやろうと思って立ち上がると、水銀燈が裾を引っ張ってきた。僕は、彼女のそばにいる。しばらくして、水銀燈は落ち着いたようだ。彼女は、指輪を薬指にはめた。水銀燈は、僕の目をみて、はっきりした声で言った。銀「ねぇ、ジュン……愛してるわよ」少し頬を赤くした彼女。ジ「僕も、愛してる。水銀燈」僕は、あなたを呼ぶ。
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