【アクア】
べ「うおぉぉぉぉぉぉぉxx」朝、JUMと水銀燈が登校するとベージタの獣の断末魔のような雄たけびが教室の中から聞こえてきた。銀「なにぃ?あれ」眉をひそめた水銀燈が指差す先には机の上に乗り天高く拳を突き上げ叫びまくるベジータの姿があった。周りのクラスメイト達は関わり合いになりたくないのだろう遠巻きに汚物を見るような目でそれを眺めている。JUM達も先人達の例に習い、その獣から視線を外すとそれぞれの席につく。触らぬ神に祟りなししかし、残念ながらこの神、もとい獣は積極的に接触してきた。べ「JUM、これを見てくれ」J「うぁ、気持ち悪いから顔を近づけるな」べ「そんなことはどうでもいい、これを見てくれ」そう言ってベジータは手に握られた紙切れを突き出す。周りのクラスメイトは自分に被害が及ばなかったことへの感謝と犠牲になったJUMの冥福を祈り十字を切る。そんなクラスメイト達に恨みがましい視線を向けてからJUMはベジータの手に握られている紙切れに目を落とした。J「え~と、『マリンランド、ペア招待券』?」べ「そうだ、隣町に新しく出来たマリンランドのペア招待券だ。」J「確か、今月の頭にオープンした水族館だよな」べ「その通り、蒼嬢がここに行きたいとと言っていたのを聞いてな、これで蒼嬢をデートに誘おうと思って苦労して手に入れたのだ。」まだ蒼星石が行くと言った訳でもないのに我が世の春が来たとばかりに馬鹿笑いを続けるベジータを見ながらJUMはあることを思い出した。J(そういえば、水銀燈もあそこに行きたいとか言ってたよな)
そんなJUMにお構いなしに騒ぎまくるベジータなにやら窓を開け放ちギャリック砲と連呼しながら手から閃光弾を撃ちまくっている。そこへ何も知らぬ哀れな子羊蒼星石が教室に入ってきた。それに気がついたベジータは音速を超える勢いで蒼星石に詰め寄った。ベ「蒼嬢、これを見てくれ」チケットを突き出すベジータその勢いにたじろぎながら蒼星石。蒼「えーと、何かな?」ベ「マリンランドのペア招待券が手に入ったんだ、よければ今度の日曜日一緒に行かないか?」蒼「ごめんね、今度の日曜は翠星石と一緒にそこに行く約束してるんだ。」鼻息を荒くして、詰め寄るベジータから身を反らせながら蒼星石は申し訳なさそうにそう言った。それを聞いた瞬間、ベジータは矢吹ジョーもかくやといった様相で真っ白に燃え尽きる。蒼「ほんとうに、ごめんね、じゃあ僕はこれで・・・」白くなったベジータにもう一度謝ってから蒼星石は足早に立ち去っていった。JUMはそのベジータの肩にそっと手を置くしかし、かけるべき言葉が見つからない。そんなJUMの手にベジータはチケットを握らせた。J「おい、ベジータ?」ベ「お前にやる」J「いいのか?」ベ「俺にはもう必要のないものだ。お前が銀嬢と一緒に行け・・・」そういい残すとベジータはフラフラと教室から出て行ってしまった。そのベジータの姿に教室中が涙した。
さて時は流れてその週の日曜日、時間は午後1時少し前JUMはマリンランドのゲート前で水銀燈を待っていた。約束した時間にはまだ幾分早い。もっとも水銀燈に言わせれば女の子を待たせるのはマナー違反らしいのでこれなら彼女を怒らせることはないだろう。J(そういえば、付き合いだしてから水銀燈とデートするのこれが初めてかも)JUNと水銀燈は正式にお付き合いというものを始めてからまだ2週間と少しその間、一緒に下校したりはしていたものの休日に一緒に出かけるということはこれが初めてであった。もっとも、付き合う前から仲のよかった二人は休日共に遊びにいったりはしていたのでデート事態はこれが初めてではないのだが。しばらく待っていると約束の時間の少し前に水銀燈がやってきた。銀「またせジュン」彼女は黒のチューブトップに、白のYシャツ。ボタンを三つ開け、胸の谷間を覗かせている。下は七分丈のジーンズ。シルバーのネックレスに、腕にはリングと時計といった格好で現れた。 注意してみると薄く化粧もしているようだ。いままでに見たことのない彼女の格好に少し顔を赤らめた。銀「どうしたのぉジュン?」J「いや・・その・・・その服似合ってるよ」銀「うふふ、ありがと、さぁ行きましょう」そう言って水銀燈はJUMの腕に抱きついた。J「お、おい、抱きつくなよ」銀「いいじゃなぁい、私達こ・い・び・と同士なんだし」その言葉にJUMは「それもそうか」っと呟いてからゆっくりと館内に向けて歩き出した。マリンランド館内は薄暗い照明と静かなBGMが流れていた。その中を二人は一つ一つの水槽をじっくり見ながら回っていく。
銀「あ、この子かわいい」J「えーと、エンジェルフィッシュか、なんか本当に水中を飛んでるみたいだな」銀「そうねぇ、あっ、こっちのこれは何かしらぁ」J「ピラルクって言うらしいな、世界最大の淡水魚らしいぞ」銀「ふーん、でもあんまり可愛くなぁい、こっちの水槽にはクラゲがいるわぁ」」水銀燈は目を輝かせながら一つ一つの水槽を楽しそうに覗いていく。J(きて良かったな、ベジータに今度飯でもおごってやろう)マリンランドは内陸にある水族館としてかなりの規模であった。さすがにイルカショーなどはなかったがそれでも大水槽があるなど設備は充実しているといえた。やがて二人はその大水槽の前にやってきた。大水槽の前にはソファーが用意されていてカップルや家族連れが肩を並べてそれに見入っていた。銀「ほら、ジュン私達も行きましょう」それを見た水銀燈はジュンの腕を引きそちらのほうに歩き出した。J「ちょっと待てって、なんか飲み物買ってくるから」JUMは腕を振りほどくと、近くにあった自動販売機を指差した。言われて水銀燈も少し喉が渇いたことに気がついた。銀「う~んそうねぇ、ちょっと喉が渇いたかしら」入館してから2時間半、柄にもなくはしゃぎ過ぎたようだ。J「だろ、僕が買ってくるから場所とっておいてくれよ」銀「うん、わかったわぁ、私はヤ・・・」J「言っておくけどヤクルトはないと思うぞ」銀「あらぁ残念、ならポカリをお願いね」JUMはそれに「ああ」とだけ返事をすると自動販売機の方への歩いていく
それを見送りつつ水銀燈はそこから少し離れた場所にある4人がけ用のソファーに腰を下ろし大水槽を見上げた。水槽の中にでは色とりどりの魚達が泳ぎまわっている。銀(きれいねぇ)そんな水銀燈に近づく影があった。男「ねぇ君、一人?」近づいてきた男は馴れ馴れしく水銀燈の横に腰掛けるとその肩に手を回してきた。銀「悪いけどぉ、ナンパなら他にいってくれる、私連れがいるの」男の腕から抜け出すと立ち上がりそう言った。男「そんなこと言わないでさぁ、俺と一緒に遊ぼうよ」しかし、男はなおも食い下がり水銀燈の腕をつかむ銀「離して!!」水銀燈はすかさずその腕を振り解こうとするが男の力にはかなわない。J「おい、なにやってる」ちょうどその時、両手に紙コップを持ったJUMが現れた。突然横から聞こえた声に驚いたのだろう、男は掴んでいた水銀燈の手を反射的に離す。JUMは開放された水銀燈を庇うように背中に隠して男を睨みつけた。睨まれた男はJUMを品定めをするように見ると鼻で笑った。男「なに、お前この子の彼氏かなんか?」J「そうだけど」そう言ってJUMはなおも男を睨みつける。しかし、男はもう一度「っへ」っと鼻で笑ってそれを無視するように水銀燈に話しかけた。男「ねぇ、こんなダサい奴なんかより俺と遊んだほうが楽しいよ」そう言って、水銀燈の肩に手を伸ばす。水銀燈はその手を払うと銀「触らないで、この短小早露野郎!!」っと言った。
男「・・・な、てめぇこっちが下手に出てりゃ付け上がりやがって」男は最初なにを言われたかわからない様子だったがすぐに顔を真っ赤にして水銀燈に掴みかかろうとする。しかし、それよりも早くJUMが二人の間に割って入り持っていた紙コップの中身を男の顔にぶちまけると水銀燈の手をとって走り出した。J「ほら、走って」銀「う、うん」そのまま二人は出口まで一目散に駆け出していった。結局デートはそこでお開きとなり二人は帰路にたっていた。J「はぁ悪かったな僕が離れなければあんなことにならなかったのに」JUNはすまなそうな顔して水銀燈に頭をさげた。しかし、水銀燈は首を振ってそれを否定する。銀「私も少し大人気なかったみたい」J「でも、お前楽しみにしてたんだろ」銀「そうねぇでも・・・」J「でも?」銀「今日はかっこいいジュンが見れたからそれでいいわ」そう言って水銀燈は微笑んだ。J「な、なに言ってるんだよ」顔を赤くするJUMを見て水銀燈はクスクスと笑う。そして腕を抱き寄せると少し背伸びをして銀「本当にかっこよかったわ、だからご褒美」JUMの頬にキスをした。照れて赤くなったJUMとその腕をしっかり抱いた水銀燈は夕焼けの中に消えていった。
FIN
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