雪華綺晶短編21
「僕が好きにならなくて、君はいいの?」 JUM様は悪戯っぽく目を細めながら私を見て笑っています。 そんな台詞が素面で言える彼は本当にすごいと思います。だって言われた方の私が緊張して、心臓もどきどきして、顔が熱くて。 意地悪な言葉でも期待してしまう、私がいて。「冗談だよ。そういうところ、とっても可愛いと思う」「な、なんですか! 冗談もいい加減にしてください……」「そんなに怒らなくても。じゃあ冗談じゃなくなってしまえばいいってことかな」「そっ、そういう問題じゃありません!」 ずっとずっと前から揺れ動く片想いの気持ちに頑張ってしがみついているのですが、今日だけは振り落とされそうな気がします。 JUM様の話術にこれまで何人の人たちが翻弄されてきたのでしょうか。 その中に私が入っているのもまた運命なのでしょう。だって好きになってしまったことには違いないですから。「でも僕は随分と前から君のことが好きなんだけど。どうすればいいんだろう」 ねえ、と問いかけるように私の顔を覗き込んできます。 顔が、顔が近すぎてろくに見られません!「こんなこと言うのもおかしいけれど、僕は君が好きだ。あとは君が僕を好きになってくれるだけでいい」「すすすすす好きです! 世界で一番誰よりも好きです! 生まれ変わってもJUM様に出会いたいぐらいに!」 返答速度、ゼロコンマレベル。しどろもどろな私の頭をくしゃりと優しく撫でて、「そんな答えを聞くと、やっぱり君を好きになってよかったと思うよ。きらきー」 JUM様に振り落とされないように、両想いの気持ちにぎゅっとぎゅっとつかまって。 恋する乙女はいつまでも恋をしていたいのです。
住み慣れた町並みだとしても、遠くから見ればそれは別物に見える。私は一人、遠くで町並みを眺め…………ビールを口に運んだ。ああ、乙女の要素皆無。何故にビール、何故に酔っぱらい。そもそもそれは桜も散りかけの今、花見をしようと誘ってきたお姉様達のせいであって、ビールが好きな私のせいではない。ああ、けど幸せ。この苦味が生きているという感覚をより鋭くされる。とかなんとか云々。飲み干した缶ビールを握りつぶし、私はくるりとみんなが盛り上がる、いや、修羅場の花見会場を眺めた。眼鏡が悪い。私は薔薇水晶一筋だから別に興味ないけどそれは分かる。いつか後ろから刺されるんだろうなぁ頭の片隅で思いながら、べたべたする薔薇水晶を見て、今刺しておこうかなぁなんて思ったのはここだけの話。
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