四日目-3
私達は何とはなしに、ブラブラと歩き続けていた。すると、途中の土産物屋で梅岡先生を見つけた。ソフトビニールの剣と木刀を手にとって見比べている。どうやら、お土産を選んでいるみたいね。邪魔をしてはいけないので、私達は早々にその場を立ち去ることにした。翠「おっ、あれはソフトクリーム屋じゃあねーですか」翠星石が視線を向けたその先には、どこの観光地にも一つはありそうな、簡素なソフトクリーム屋があった。銀「どうする?」雪「私は別に構いませんよ」翠「それじゃあ、行け行けゴーゴー!ですぅ」特にこれと言った目的地も無い私達は、そのソフトクリーム屋に足を向けることにした。蒼「これはまた……破壊力の高そうな味ばかりだなぁ」金「うげ……酷すぎるかしら」二人がそういうのも無理はない。いくらなんでもこのラインナップは強烈過ぎる。柚子に薔薇に水母……一番強烈なのは、『味噌』だろう。一体誰が買うのかしら。薔「……柚子」仗助「おれは無難に、バニラで」早速注文しているのは仗助君と薔薇水晶の二人。かなりベターなものを選んでいるわね。
ベジータ「俺はやっぱり味噌を頼むぜ」ウルージ「お主本気か?」ベジータ「俺の生き様を見てろよ!貴様らぁ!」笹塚「みんなアイスの方に夢中だよ」ベジータ「何ィ!?」なんというか、やっぱりと言うか、ベジータはネタに走り、一番の地雷候補の『味噌』を注文していた。さて、私はどれにしようかしら……。あっ、紅茶ソフトなんてあるのね。これにするのだわ。紅「ジュン、貴方は決まった?」ジュン「うーん……僕はチョコレートにするよ」紅「私は紅茶にするのだわ」ジュン「こんな時でも紅茶かよ。ジャンキーだな」紅「うるさいわね。美味しいものはどう扱っても美味しいものよ」銀「ちょっとぉ、後がつかえてるわよ。掛け合いなら他所でやりなさぁい」うっ……どうやら邪魔をしてたみたいね。私達も注文を済ませ、ソフトクリームを受け取る。店の前に大勢で居るのは他の人の迷惑になると言う事で、中央部の広場へと13人で移動する。広場も江戸時代の往来を再現したものらしく、どことなく昔っぽい雰囲気がしている。その中心でミスマッチに設置されている噴水のそばで、みんなでアイスを食べる事にした。
銀「ああ、至福の時ね」紅「随分安っぽい至福なのだわ」銀「それは言わないでぇ」水銀燈がソフトクリームをぺろぺろ舐めながら言った。どうやら水銀燈はカルピス味をチョイスしたようだ。真っ白いソフトクリームが彼女の真っ赤な舌の上で踊っている。銀「ねぇ真紅ぅ……一口くれなぁい」どうやら私の食べている紅茶ソフトが欲しくなったのか、そんな事を言い出してきた。紅「一口だけよ」私は食べかけのソフトクリームを彼女の前に差し出す。それを大きく口を開けて……ってああああああ!!紅「ちょっと!食べすぎなのだわ!ああ……私の分が」銀「一口は一口よぉ」悪びれもせずそう言う水銀燈。はぁ、こうなる事を予想しておくべきだったわ。でも……くすん。私の食べる分が殆ど無くなっちゃったのだわ。ジュン「僕の分で良かったら食べるか、真紅」え? ……ジュンが私にチョコレートアイスを手渡す。それはまだ殆ど口が付けられていない。
紅「本当にいいの?」ジュン「ああ、甘いものはあまり得意じゃあないからな」紅「なら、ありがたく頂くのだわ」私はチョコレートアイスに口をつける。銀「やりすぎたわぁ。ごめんなさい」水銀燈が心底すまなそうな顔をしている。さっきまでの私なら烈火のごとく怒っている所だけど、今はもう気にもならない。紅「もう気にしなくても良いのだわ」銀「それなら、そのチョコアイスも頂戴」紅「お断りよ」銀「ケチぃ」許してあげたらすぐこれよ。全く……ベジータ「ぐおおああああああ!!」笹塚「ベジータァァァ!!」ベジータ「ほあああああああああああ!!」ど、どうしたの!? 急にベジータが狂ったように大声を上げだした。手に握られているのは、あの『味噌』アイス。……予想通り、もの凄く不味い代物だったみたいだ。薔薇水晶が興味を持ったのか、すかさずもがき苦しんでいるベジータの手から味噌アイスを奪いとる。そしてベジータの口の付いていない所を選んで一口。見る見るうちに顔が苦悶の表情になっていく。しばらくその味とみっちり付き合った後、彼女はそのソフトクリームをゴミ箱に叩きこんでいた。
紅「どうだった?」私は薔薇水晶に聞いてみた。薔「……最悪、バニラに味噌を入れたらちょうどこんな感じになる」紅「……そう」そう言って薔薇水晶は仗助君に背中をさすってもらっている。私はその味をイメージしようとしたが、あまりにも想像できなさ過ぎたので、やめた。ベジータ「ようし!完全復活だ!」ウルージ「二度と目覚めなければ良かったのだがな」ベジータ「馬鹿言え。俺がいなくて薔薇学がなりたつか。な、そうだろ蒼嬢」蒼「寝言は寝てからいいなよ」ベジータ「うわーん!」そうこうしている内にベジータも復活したらしい。元のハイテンションに戻っている。ジュン「おい、そろそろ行くか?」翠「ちょっと待ったぁぁぁ!!」ジュンが振り向いた瞬間、翠星石がその流れを思いっきり断ち切った。紅「どうしたのよ。どこか行きたい所でもあるの?」翠「いやいやいや、違うですよ」
翠星石は手を振ってそれを否定する。そして翠星石が蒼星石のバッグをまさぐりだした。蒼「うわっ……何をするんだい?」翠「アレですよ、あっ、あったですぅ!」掲げられているのは、あの高性能カメラだった。写真を撮りましょうって事ね。翠「ちぃと待ってろですぅ」突然駆け出すと、近くを歩いている人に交渉を始めている。しばらくするとすぐに、一人の男性を連れてきた。その親切な人にカメラを手渡して、私達は噴水の前に立つ。親切な人「ハイ、チーズ(ホントは女子のフトモモだけアップで撮りたいなー)。……はい、終わったぜ」皆でお礼を言ってその人からカメラを受け取る。写真を見てみると、腕がいいのか、なかなか良く撮れていた。思い思いのポーズをした私達が写されているこの写真。十年二十年したら、きっとお酒の肴にでもなっているのだろう。いいわね、そういうのも。
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