翠星石短編42
朝起きると……いつの間に降ったんだろう、庭は一面の雪景色だった。「翠星石、起きてよ!翠星石……翠星石ってば!」とっても綺麗だったから、翠星石にも見てもらおうと思ったんだけれど……「う……ぅん……うるさいですぅ……」そう言って、翠星石は頭まで布団をスッポリ。もう!せっかくの雪なのに寝坊してばっかりなんだから!仕方が無いから僕は、一人で窓越しに雪景色を眺めていた。庭一面に広がる銀世界はキラキラしていて、まるで僕の心みたいに純粋だね。それから、パジャマの上にコートを羽織って、庭に出てみる。「ふふ、やっぱり寒いや」純白の世界の中で、そう呟く僕の息が白くなる。やっぱり、冬はこうでなくっちゃね。久しぶりに見た雪模様に、僕もすっかり上機嫌。ついつい、テンションが上がっちゃっても仕方が無いよね。ウキウキ気分の赴くままに、ついつい昨日テレビでやっていたのを真似しちゃっても仕方が無いよね!「凍てつく氷の息吹を受けてみろ!必殺!!エターナルフォース」「ふぁぁぁ……あ……お、おはようですぅ……」「ブリ……ザー……あ……うん、おはよう」 【冬の】【魔法】
僕は校門の前で、空を見上げている。雲一つ無い澄み渡るような夕焼け空が、ゆっくりと黒く染まっていくのが分かる。じわじわと、星が瞬くのが見え始めてきた。「……お待たせですぅ」僕を呼ぶと同時に、鞄を肩から提げている翠星石が僕の元へと駆け寄って来る。僕は目線を夕焼け空から彼女へと戻した。彼女の頬は寒さのためか、まるで熟れたリンゴのような色をしている。おそらくは、僕自身もそうなんだろうけど。「ん? そんなに翠星石を見つめて、どーしたんですか?」「え……いや、何でもないよ」「ふーん。そ、ですか」どうやら、いつの間にかじっと見つめてしまっていたらしい。「ま、いいです。寒いからとっとと帰っちまうですよ」「忘れ物なんかして、待たせたのは君なのに」「うっ、細かい事はどうだっていいですぅ」「あはは……お腹もすいたし、行こうか」「はいですぅ」僕と翠星石は二人並んで歩き出す。帰り道の途中、翠星石がまたもや面白い話をしてくれた。ふふっ、どうやらベジータ君が、またなにかやらかしたらしい。そのまま、のんびりととりとめもない事を話していると、翠星石が突然僕の手に白磁のような指を絡めてきた。「どうしたんだい?」「そ、蒼星石が待ちっぱなしで寒かったと思ったからですね……その……」「ふーん。それじゃあ、僕も」「え、ええっ?」僕は彼女の真っ白な手を引き寄せ、その上から自分の手を重ねた。はっとした表情をした翠星石は、僕の方にはにかんだ笑顔を向けて、言った。「……あったかいですぅ」「僕もだよ」少しだけ暖かくなった手を繋いで僕らはゆっくりと歩いていく。夕焼け空が、僕達の背中をやんわりと照らしていた。
「ただいまー…ん?」「すぅ…すぅ…」家に帰ると、リビングのソファで何故か翠星石が寝ていた。なんでこいつは平然と他人の家にいるんだろうか。しかも寝てるし。姉に電話して状況を把握する。どうやら翠星石がやってきたのはいいが、僕がいなかったために帰ってくるまでここにいると言ったそうだ。で、姉はその翠星石にお留守番を頼んで買い物に出かけたらしい。そして僕帰宅。お留守番をまかされていたお嬢さんは眠り姫へと変化していたと、そういうことのようだ。…お客さんに留守番任せていいのかよ…。「すー…zzz」しかし本当に良く寝てる。可愛い顔で寝てる友人を見たらいじりたくなるのが人の性というもの。指で軽く突っついてみる。「んぅ…むにゃ…」起きない。しばらくやってみたが、起きる気配はまるでなし。「どうしてくれようか…」独り言をつぶやきつつ、思案に暮れる。やがて名案を思い付いた。ニャマリと顔が崩れる。…我ながら変な効果音だ。紙とペンを持ち出し、さらさらと内容を書き、翠星石の寝顔の横におく。そして翠星石の肩を二、三回叩き、ダッシュで階段を上って部屋に入る。5秒後。「ほあぁぁぁーーーーーっっ!?!?」翠星石の叫び声と、階段を駆け上がる音が聞こえてきた。バンッっとドアが開けられる。「ジュン!?な…なななんですかこれは!?」そういって顔を真っ赤にして紙を僕に突きつける。書かれていた内容は、『君の唇は頂いたぞ、お姫様』僕はもう一回表情を崩して翠星石に言ってやった。「おはようございます…眠りのお姫様?」【夢見る】 【乙女】
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