平穏な日常 プロローグ
僕は今までの人生のなかで比較的平穏な日常を過ごしてきたと思う。普通に小学校に通って卒業し、中学校も普通に通ってこれた。念のため言っておくが別に中学校で引きこもってなんかいないからな。ここ重要だぞ!引きこもってなんかいないからな!…なんで重要なのかって?なんか言っておかなきゃいけない気がしたんだ。自分の人生の中で大して事件など起きなかった。ニュースでよく見る事件などは自分に何の関係もない。自分を中心とする大きな出来事などには遭遇しなかったのだ。退屈。そう、それは退屈な人生とも言えた。そんなわけで僕は普通に義務教育課程を修了し、この薔薇学園高校に入学した。裁縫が得意だったこともあり、将来はデザイナーを考えていてこの学校もただの通過点でしかなかった。ここでも僕は平穏に、そして退屈に過ごしていくのだろう。そう考えていた。
―――――どうやら僕は、その考えを改めなくてはならないらしい―――――
そこまで考えて、僕―桜田ジュン―は額を覆っていた右手をどけた。同時に、他の考えも2つほど浮かんできた。1つは、果たしてこの事を考えるのも一体何回目だろうか、ということ。そしてもうひとつは―――――――――
「だぁから何度言えばわかりやがるですか!一番美味しい食べ物はこの鈴カステラに決まってるです!」「そっちこそわかってないかしら!この甘い卵焼きこそ至高の逸品かしら!」「飲み物に関して言うなら、このヤクルトを差し置いて右に出るものはないわねぇ。異論は認めないわよぉ?」「そっちこそこの緑茶の良さを認めてほしいな。こればっかりは譲れないよ」
「チビ人間!」「ジュン!」「ジュ~ン?」「ジュン君!」
4人の気迫に負けて一歩後退り。むしろこのまま回れ右して逃げ出したいのだが、それは無理だった。なぜかって?・・・・すでに出入り口は封鎖されているようなんでな。
「「「「どれが一番美味しいと思う!?」」」」
―――――これは、果たして平穏な日常と言えるのだろうか―――――
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