二日目-4
バスは高速道路を走り、午後四時位に『チャイナタウン』に到着した。『チャイナタウン』は四方を城壁で囲まれた中華テーマパークだ。中はとっても広くて、確か一つの町がすっぽり入るくらいらしいのだわ。それにもう一つ、特殊な決まりがあるの。それは……。銀「ええ!? これに着替えないといけないのぉ?」雪「なんと言うチャイナ……」私達女性陣に渡されたのはなんと、滑らかな生地のチャイナドレスだった。男性陣には中国服が手渡されたみたいだ。女子はみんな唖然としている。これは……このドレス、露出が多すぎるのだわ。スリットは腰まで入っているし、胸元もギリギリまで開いている。梅岡「これを着ないと、施設には入れないからなー!」翠「はぁぁーーー!?」梅岡先生はいつの間にか中国服に着替えていた。昔の拳法家みたいだ。仕方が無いので、男子はバスの外で、私達はバスの中で着替える事にした。私達は身に纏っている制服を脱ぎ捨て、きめ細やかなチャイナドレスに袖を通す。翠「うぅ……恥ずかしいです……」蒼「意外と……悪くないね。うん、気に入ったよ」綺麗な緑色のチャイナドレスを着て、恥ずかしがっている翠星石。うわあ、本当にスリットがギリギリね。他人のを見ると、自分の着ているものがどれだけ派手なものか良く分かる。蒼星石は、翠星石とは違ってこの服装を気に入っているみたいだ。頭にしっかりとお団子までつけている。
銀「ちょっとぉ。これ派手すぎなぁい?」紅「水銀燈、貴女は特に派手ね」銀「仕方ないじゃない。この体が悪いのよ」水銀燈が自分の体をキョロキョロと見ている。豊満な肉体がピチピチのチャイナドレスで覆われている。胸は生地越しでも分かるほどに盛り上がり、ムチムチの太股もすごい。道行くオスが全員、一度は振り返りそうだ。雪「何だか、格闘ゲームのキャラクターみたいですね」薔「……あちょー」雪華綺晶は水銀燈に負けず劣らずのムチムチの太股が、わずかな生地で覆われていた。薔薇水晶は紫色のチャイナドレスを着て、拳法家のマネをしている。かなりノリノリなのだわ。金「どうしてカナだけ……子供が着るような服なのかしらー!」苺「金糸雀は子供なの~!」ぷっ……金糸雀だけ私たちと同じチャイナドレスじゃなくて、子供が着るような中国服だった。
銀「あははははははは!」翠「これは……傑作ですぅwwwww」みんなが金糸雀を見て笑い転げている。本当にしっくりきてるからまた……。しばらくするとみんな着替え終わったみたいだ。お財布を持ってバスから降りる。外では男子が着替え終えたらしく、まるでどこかの奇妙な集会の様な風景が展開されていた。ベジータ「おぉ~! 紅嬢に銀嬢、みんな綺麗だなぁ~~!!」銀「アンタに言われてもカケラも嬉しくないわねぇ」ベジータ「酷いぜ銀嬢~」ベジータが苦笑している。ベジータなのに、何故か着ている服はあのツンデレ海王の着ていたものだった。新手のコスプレかしら……。この後先生からの諸注意があった後、私達は『チャイナタウン』へと足を踏み入れた。
チャイナタウンの中は、私たちと同じ様に中国風の服を着た人でごった返していた。ちょっと気を抜いたらはぐれてしまいそうだ。どうやら、ここで夕食をとるらしい。どこのお店も食べ放題だと聞いている。サービス精神旺盛ね。薔薇水晶が女子だけだと不安だと言ったので、ジュンや笹塚君を加えて、一緒にチャイナタウンを巡る事にした。雪「さすがに男子五人を加えると、かなりの大所帯ですね」紅「ふふ……そうね」私達は人ごみを掻き分け歩いていく。ウルージ君が前を歩いて、防波堤の代わりをしてくれている。ウルージ君がいなければ、前に進めたかどうかも怪しいわ。ウルージ「まだ夕食まで時間がある。あそこの雑貨屋でも見てはどうだろうか」ウルージ君が大きな手で雑貨屋を指差す。私は背が低いから、見ることが出来ない……。背伸びをしても見えなかったのだわ。私は、もっと牛乳を飲もうと決意した。翠「もう人ごみはうんざりですし、あそこで時間を潰してやるですよ」蒼「僕も賛成だよ。もう暑くて暑くて……」苺「ヒナもおっけーなのー!」と、言うわけで十三人で雑貨屋に入ることにした。中は予想以上に空いていて、おまけに涼しい。ラッキー。ウルージ「それでは私は見たいものがあるので。行こうか、M字の人」ベジータ「おーけー」ウルージ君はベジータを連れ、奥のほうへと消えていった。
仗助「それじゃおれも なにか良いものが無いか 探してくっかな~~~~」うーんと大きく伸びをする仗助君。彼の背骨がパキ、ポキと小気味良い音を立てている。薔「ねえ……私も一緒に行って良い?」仗助「ん? ま、いいけどよ」最近妙に仲の良い二人は、一緒に奥のほうへと歩いていく。銀「へぇ、あの二人、あんなに仲良かったのねぇ」金「ジュンと真紅もうかうかしてられないかしら~」紅「ちょっとどういう事? 別に……私は薔薇水晶と競っているわけではないのだわ」ジュン「そうだぞ」私は金糸雀にツカツカと詰め寄る。金「だから、あの二人の方が先に行ってしまうかもしれないと言う事よ」銀「そうねぇ。真紅よりも薔薇水晶のほうが可愛いしぃ」紅「……何ですって」銀「冗談よ。本気にしちゃ駄目よぉ」ちょっと水銀燈、今のは聞き捨てならないわ。……ジュンも黙ってみてないで、フォローしなさい。銀「ま、いいわぁ。私も置物でも見てこようかしら」雑貨屋ではみんなバラバラ、別行動で過ごす事にした。
べジータ「腹がへったな。店でもさがそうぜ」ジュン「それがいいな」いつの間にかもう午後六時。そろそろ晩御飯の時間だ。私達は近くの店で夕食をとることにした。雪「この店なんて良さそうですね。良い匂いが漂ってきます」翠「行け行けゴーゴー! 入るですぅ!」蒼「迷惑になるから静かにしなよ、翠星石。」幸い大テーブルが空いていたので、そこに皆で座る。すぐに店員さんが注文を聞きにやって来た。指定の食べ放題メニューを注文すると、それと同時に沢山の大皿がわたしたちのテーブルに所狭しと並べられていく。酢豚にエビチリに春巻きetc……す……凄いわね。いただきますを言って、料理に箸を付け始める。私はエビチリを食べてみる事にした。テーブルをまわそうとしたのだけど、どっち向きに回せばいいのだか……忘れてしまったのだわ。くすん。八宝菜、酢豚などなど、大方の料理を食べ終えると、次はデザートの杏仁豆腐がやってきた。白い光沢がきめ細やかなシルクをイメージさせる。スプーンですくって一口。口の中でさらっと溶ける……美味しい。私が夢中になって杏仁豆腐を食べていると、ジュンが言う。
ジュン「なあ真紅。僕、杏仁豆腐苦手なんだ。食べてくれよ」紅「ええ、良いわよ」私はあっさりと了承し、ジュンからそれを受け取った。蒼「ごちそうさまでした」金「ごちそうさまかしら」二人がいち早く手を合わせて、ごちそうさま。これは基本的なマナー。仗助君がレジでまとめてお金を支払っている。美味しいご飯も食べたし、集合時間も迫っている。バスに戻るのだわ。
豚マンを買いに行くと言うジュンたち男連中と別れて、私達は駐車場までの道をぶらぶらと歩いていた。お腹もいっぱい、お土産も買った。気分はとっても満ち足りている。ああ……このまま寝てしまいそう……。ドン!!痛い! ……誰かと肩がぶつかってしまったようだ。紅「あら、ごめんなさい」そのまま歩こうとした私の肩を、誰かががっと掴んだ。不快感を感じて後ろを振り向くと、そこにはドラマとかでよく見かける金髪やモヒカン、所謂『DQN』と呼ばれる人がそこにはいた。にごった目と私の目が合う。そして金髪の方がねっとりとした口調で話しかけてきた。DQN1「おいおいおいおいお~~~~い それで終わりかい?」DQN2「それは無いよねお嬢ちゃん♪」紅「もう私は謝ったわ。だから離して頂戴」私がもう片方の手で振り払おうとした。しかし、その手もあっさりと掴まれてしまった。
DQN1「駄目だよね~~。そんなことしちゃあさ~~~」紅「いいから離しなさい!」DQN1「強気だなぁ。おれっちそーゆうの嫌いじゃないよ」銀「ちょっとぉ……真紅に何やってるのぉ?」翠「早くその薄汚い手を離すです!」DQN2「おっおっおwwww」異変に気付いたみんなが戻ってきてくれたみたいだ。女の子ばかりとはいえ、八人も居る。何とか引き下がってくれないかしら……。DQN2「へぇ。カワイイ子ばかりじゃん。お持ち帰り決定~~~。おい、お前ら出て来い」その声と同時に、ワラワラとゴキブリの様に十人位のDQNが姿を現し、完全に私たちは囲まれてしまった。どうしよう……ジュン、助けて―――
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