エンジュ荘ですから3
◆冬は焚き火◆パチパチ薔「垣根の……垣根の……曲がり角……」J「よう。焚き火してんのか、ばらしー」薔「……やあ、JUM」J「あれ? なに燃やしてるんだ、これ……?」薔「……手紙と写真、だよ。お父様からの……」J「……それは道徳的にいかがなものかと」薔「いいの……毎日ポストいっぱいになるくらい送ってくるから……」J「なんという子煩悩」薔「本当に……気持ち悪い」J「なんという親泣かせ」
◆ばらきらのお父さん◆薔「お父様は忙しい方……世界中を飛び回っているの」J「確か人形師だろ? なんで世界を旅する必要があるんだ?」薔「……生きた人形を……見つけるため……」J「…………そう、なんだ」薔「………………」J「………………」薔「……やっぱり……引いちゃうよね……」J「い、いや、そんなこと」薔「できれば若奥様な性格の人形がいいんだって……」J「さすがの僕でもそれは引くわ」
◆納得◆ガチャリめ「ふぁーあ……ん?」め「いよう、ご両人。焚き火かい」薔「……おっはー、めぐ」J「ずいぶん遅いお目覚めで」め「まあ、仕事は自宅警備ですから」J「それを言い訳にしたら色々と駄目だろ」薔「……自宅警備……なるほど……」J「いや、そこで納得するなよ」め「あら? これ槐さんからの手紙と写真燃やしてるの?」薔「うん……あんまり多いから処分に困って……」め「ふーん、なるほど」J「いや、そこで納得するなよ」
◆わかればよろしい◆め「そういえば最近、前髪がのびて邪魔なのよね。そろそろ髪切りに行こうかしら」J「『前髪で前がみえねぇ』ってか? ははは」め「…………」薔「…………」め「ところで昨日の金曜ロードショー見た?」薔「うん……見たよ……」J「HAHAHA、二人揃ってスルーは精神的に応えるなぁ」め「親父ギャグにもほどがあるでしょうに」J「……ごめんなさい」め「わかればよろしい」J「……でもさ、髪が邪魔と思うんなら、なんでめぐはそんなに伸ばしてるんだ?」め「ニートがマメに髪切るわけねーだろ、タコ」J「……ごめんなさい」め「わかればよろしい」
◆JUMと真紅◆コンコン真「JUM。少しいいかしら」ガチャリJ「ああ、新規。どうしたんだい」真「ええ、ちょっとね。ところで私の名前は真紅よ」J「わかってるさ、神秘」真「……まあ、いいわ。それよりあなたのアイディアを貸してほしいの」J「というと?」真「今私が執筆中の恋愛小説……別れの瞬間にヒロインが恋人を引き止めるシーンがあるのだけれど」J「ほほう」真「あなたなら、どのような言葉をかけてほしいかしら?」
J「なぜ僕に」真「やっぱりこういうのは実際に男性に聞くべきだと思って」J「ふむ。そうだな……『待ちなさい! このウジ虫!!』とか」真「……他には?」J「うーん……『今すぐ戻ってきて私の靴をお舐め!!』とか言われたらゾクゾクしちゃうかも」真「あなたに聞いたのが間違いだったわ。じゃあね」J「あ、ちょっと待って、新規」真「私の名前は真紅だけど、何?」J「さっきのセリフ僕に言ってみてくれない?」真「全力で断る」
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