一日目-3
私たちは現在、昔ながらの山村、白蛇の里に居る。白蛇の里には、土産物屋が沢山並んでいるのだわ。あちらこちら……どの店からも活気が溢れている。さて、どの店でお土産を買おうかしら……。けれど、こういう所のお店って、どこも似たり寄ったりなのよね。
翠「ひゃあ~……お店が沢山あるですねぇ」苺「どの店でお買い物をするか迷うの」薔「……あの店なんてどう?」蒼「え?どこだい?」薔薇水晶が一軒の店を指差した。こじんまりとした小さいお店ね……。うん、私は好きなのだわ。銀「ちょっと……こじんまりとしているけど、良いんじゃない?」雪「良いですね。ああいうお店にこそよいものがあると思います」金「おまけに混んでないし、言う事無しかしら」紅「それじゃ、行きましょ」私たち八人は、そのお店に入る事にした。店内は冷房が効いていて、非常に過ごし易い。中をよく見ると奥のほうにカウンターがあり、おばあちゃんが一人でぽつんと座っていた。おばあちゃんも私たちに気づいたらしく、いらっしゃいと声をかけてきた。……一人でやっているのかしら?早速私たちは、お土産を見ていくことにした。蒼「お爺さん達には……このキーホルダーなんてどうかな、翠星石?」翠「それより、こっちの『無病息災』の方がいいですぅ」蒼「翠星石……それは日本中どこのお土産屋でも買える物だよ」翠「ほあぁ~~っ!! そうなんですか!? 蒼星石は物知りですぅ~~!!」蒼「くっ……苦しいよ。翠星石~~~」蒼星石と翠星石はキーホルダーを見ているようだ。翠星石が蒼星石に思いっきりギュウ~っと抱きついているのだわ。蒼星石が手足をばたつかせているわね。一体、何をやっているのかしら?
金「みっちゃんにはこの『金運』を司るクリスタルにしようかしら」苺「トモエにはこの『必勝』の石をかうのよ。試合に勝ってほしいの!」金「でも……こっちの『結婚』にした方が良いかしら? みっちゃんにもそろそろ結婚して欲しいかしら」苺「みっちゃんさんは売れ残りのクリスマスケーキなのよ~。結婚できるか分からないのよ~!」金「そっ、そんな事はないかしら!」二人はクリスタルを手にとって見比べているようだ。金糸雀はみっちゃんさんに、雛苺は巴さんへのお土産かしら。話が漏れ聞こえてきたけど……二人ともみっちゃんさんに失礼すぎるのだわ!雪「これくらいで、白﨑へのお土産はいいですわね」薔「私もお父様にお饅頭を……買いすぎじゃない?」雪「いやいや、二人へのお土産はこっちの二箱です」薔「じゃあ、こっちに積み上げてあるのは……?」雪「私のおやつです」薔「……」雪華綺晶と薔薇水晶はお饅頭のコーナーに居た。二人とも饅頭の箱をかごに入れて……雪華綺晶!! 貴方それ本当に一人で全部食べるつもりなの?5~6箱はあるのだわ……そろそろ私もお土産を買っておこうかしら。まずは食べたいと思っていた『白蛇飴』をかごに入れる。そして、『白蛇の勾玉』を手にとって見比べている水銀燈に声をかけた。
紅「水銀燈、勾玉、買うの?」銀「真紅……ええ、めぐのお守りに、どれが良いかなぁ……ってねぇ。今度手術だから……私も少しくらい力にならなくちゃ」二つの勾玉を私に見せてくる水銀燈。めぐさんの事を本気で心配しているのがよく分かる。……めぐさんは水銀燈の年上の友人、ずっと心臓の病気で入院しているのだわ。銀「こっちの『成功』にしようか……『回復』にしようか……迷うわね」紅「そっちの……『回復』はどうかしら」銀「『回復』……? 」紅「貴方がこれだけ祈っているのよ。めぐさんが死ぬはず無いのだわ。術後のことを考えておきなさい」私は水銀燈に『回復』の勾玉を押し付けるようにして渡した。水銀燈は渡されたそれをじっとみてしばらく考えていたが、決意したみたいだ。銀「ありがとう……これにするわ」紅「そう、良かったわね」水銀燈は『回復』の勾玉を大事に握り締めた。さて、私も何か買おうかな。紅「どれにしようかしら……?」沢山種類があるわね……。迷うのだわ……。銀「貴方が買うのは一つしか無いでしょ。これよぉ!これぇ!」水銀燈が渡してきたのは『恋愛』の勾玉。
銀「真紅は一つ上の段階の、『キス』出来るように頑張りなさぁい」紅「……水銀燈。貴方、楽しんでない?」銀「えぇ? 楽しんでるわけないじゃなぁい」ニコニコ笑いながら水銀燈が言った。はぁ、絶対楽しんでるわね……。昔からこういう性格してるのだわ。銀「さっ、私たちも買いましょ。皆を待たせちゃダメよぉ」私たちはレジに勾玉を持っていった。おばあさんがテキパキとその見た目からは想像できないスピードでレジ打ちをして行く。す……凄い。私たちが勾玉のお金を払い、品物を受け取ろうとしたとき……おばあさんが私たちに話しかけてきた。おばあさん「あんた達の願い事、叶うじゃろ」銀「……え?」おばあさん「ここの勾玉はよーくきくんじゃあ……頑張りな」そして私たちの手を握り締める。おばあさんの力が、流れ込んでくるような感じがした。私たちは、お礼を言って店から出た。
銀「もうそろそろ時間ねぇ」苺「お空は夕焼けなの~ カラスが鳴くからかえるのー!」紅「別にカラスは鳴いてないわ」水銀燈が綺麗な銀色の腕時計を見て言った。空は夕焼け空で、とっても綺麗だ。蒼「後はホテルに戻ってご飯とお風呂だね」雪「ご飯……楽しみです」蒼星石のその言葉を聴いて、雪華綺晶がよだれをじゅるりと啜る。私はそれを見て、獲物に喰らいつく寸前のライオンをイメージした。翠「枕投げ大会が楽しみですぅ! この翠星石の力を見せてやるですよ~!」金「カナの策で優勝間違いなしかしらー!」薔「……自爆しないように気をつけてね」拳を上げて意気込んでいる翠星石と金糸雀、それをみて薔薇水晶がくすくすと笑っている。私も枕投げ大会は楽しみなのだわ。
私たちがバスに戻ると、既にクラスの殆どのメンバーが戻ってきていたのか、各自の席に座っていた。仗助「よぉ~ どうだった?」薔「……楽しかったよ。お土産買えた?」仗助「ああ」仗助君と薔薇水晶が楽しそうに話しているわね。その横ではジュンが笹塚君に何か言われている。何事かをからかわれているみたいだ。私はジュンに声をかける。紅「ジュン、どうしたの?」ジュン「いや……」笹塚「ジュンがさ、『恋愛』の勾玉買ったんだよ。真紅さん」ジュン「おい、笹塚……あーくそ」ジュンの言葉を遮って、笹塚君が言った。銀「あらぁ~……実は真紅も買ったのよ。その勾玉」ジュン「え!?」翠「もしかしておそろいですかー!?」苺「うゆ~……これって偶然なの?」紅&ジュン「うっ……うるさい(のだわ)!」
ちょっと水銀燈、バラさないで頂戴!しかもハモっちゃったのだわ……。みんながニヤニヤこっちを見てくる。雪「やっぱり離れていても貴方達はつながっているんですね」蒼「二人の絆だね、うんうん」ウルージ「しかしお揃いとは……これは珍しいものを見た」ふむふむと頷いている雪華綺晶に蒼星石。お土産で買ったのか早速手に数珠を巻いて祈る動作をするウルージ君……三人ともやめなさい!恥ずかしいじゃないの!ベジータ「そして夜は下半身もつながrグバァー!」紅「死になさい」金「ベジータぁぁぁ! 大丈夫かしらー!?」私の拳がベジータのどてっぱらに食い込む。ちょっとは学習しなさい!金糸雀が気絶したベジータの頬をぺしぺしと叩いている。
私たちを乗せたバスは山道を進んでいく。次の目的地は旅館『白蛇館』まだ一日目、楽しい修学旅行はまだまだ続くのだわ。
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