BLACK ROSE 第二話
BLACK ROSE 第二話「はぁっ!?」「真紅!何を、言ってるんだい?」突然の事に驚いたが、驚いているのは私だけでは無い様だ。栗色の少女も、連れの突然の言葉に驚いている様だ。「この娘を勧誘してるだけなのだわ。何か問題があるの?」「大有りだよ!」「ちょっとぉ…」私の事など忘れて、彼女達は口論を始めている。突然の事に驚かされ、自分も何か言ってやりたいが、このままでは、次の日まで待たなければならないかもしれない。流石に、それは嫌なので、私は無視して家に帰ることにする。「真紅、彼女とは会って間もない。それに、他のメンバーには、どう説明するのさ」「まったく…貴女も頑固ね…って、水銀燈がいないのだわ!!」「やれやれ…真紅も頑固者だよ…」次の日の朝。水銀燈は目を覚まし、冒険者のもう一つの仕事をすることにする。道具や武具などのお得な物を見て回るのだ。「ちょっと!貴方、これがこんなに高い筈無いわぁ。別の店では もっと安いわよぉ!」凄い剣幕で怒鳴る彼女に商人の男もオドオドしている。「で、ですから…何度も申し上げてる様に、それの値段はこれ以上下げれません」「なんですってぇ!」ヒィ、と情け無い声を上げる男が可哀想なので、助け舟を出すことにする。それにしても――この声はまさか――「貴女、いい加減にしなさい。怯えてるじゃないの。…って、水銀燈じゃないの」「はぁっ?どこのどいつよぉ?――あらぁ、真紅、だったかしらぁ?何か用?」「まったく…貴女はこんなチンピラ紛いの事をいつもやっているの?」「ふんっ。そんなことある訳ないでしょ。おばかさぁん。」突き放す様な態度を水銀燈は取っている。けど、顔がちょっとだけ、笑っている様に見えた。案外、私の第一印象は好感触だったのかもしれない。「ふふっ。また会ったのも何かの縁だわ。昨日は聞けなかったけど、 答えを聞かせてくれないかしら?」実際、真紅の予想は当たっていた。水銀燈は真紅を嫌っている訳ではない。一人での限界が身に染みてきたし、真紅は信用できる人間の様な気がする。
「水銀燈?」「……だけなら…」「え?」「少しの間だけなら入ってあげてもいいわって、言ったのよぉ!!」言ってしまった。もう後戻りは出来ない。顔が熱い。恥ずかしさで死んでしまいそうだ。「本当に!?アタックし続けた甲斐があったのだわ!」「…え?本当に、いいのぉ?」「何言ってるの!私は大歓迎よ!早速、他のメンバーにも紹介しなくちゃ!」手をギュッと握り締められ、半ば引き摺られる形で連れて行かれる。彼女の手は柔らかく、温かかった。出来れば、ずっと――(って、何を考えてるのよ私。おばかさん。)心の中で言い聞かせても、顔がにやけている様な気がする。久し振りに人と手を繋いだからだと思う。真紅に声を掛けられ、目を覚ます。「着いたわ、ここが私のチームの拠点よ」「うわ…結構大きいわねぇ…」「ふふっ、ありがと。さ、中に入って頂戴」「お邪魔しまぁす」そんな言葉が自分の口から出てきたのには驚いた。真紅には受け入れられたものの、他の人に受け入れられるか、それが心配だからだろうか。柄でも無い。
「やぁーっと帰ってきやがったです。遅いですよ!真紅!…ん?そいつは誰ですか?」緑色を基調としたその服装は、どうやら魔女のようだ。第一印象はその外見の通り、腹黒そうだ、と思った。そして、彼女の言葉と共に、他の人からも視線が集まる。「初めまして。と言っても、知ってる人もいると思うけど。私は水銀燈よぉ。 職業は冒険者。私を貴方達のチームに入れてもらえないかしらぁ?」「はぁ…結局連れて来ちゃったんだね、真紅」「ふふっ、二日続けて会うなんて、何かあると思わない?」「偶然じゃないかな…」昨日の栗色の少女は心底呆れている様だ。その時、奥の方から眼鏡を掛けた黒髪の少年が出てきた。「真紅、その人が昨日言っていた、新しい仲間か?」「そうよ。一目見て分かったけど、彼女は腕が立つのだわ」「うん、僕もそう思う。僕は賛成でいいよ」「ジュンは賛成っと…。翠星石と蒼星石は?」ジュン、と呼ばれたのが黒髪の少年だろう。後は、緑色の方が翠星石で、蒼い服を着ている方が蒼星石だろうか。他には見当たらないので、この三人が残りのメンバーであろう。「翠星石は別にいいですよ。ジュンと真紅の二人が認めるんですから 信用に足る人物だと思うです」「うーん…そうだね、僕も賛成でいいよ。ただし、条件があるよ」「…その条件は?」
「今日は、迷宮に潜る予定なんだ。早速で悪いけど、 水銀燈にも加わってもらう。そこで、君がチームに 悪影響を与えるなら、辞めてもらう。厳しいと思うけど 僕は本当に信用できる人物じゃないと、一緒に戦う気にはなれない」「ホントに厳しいわねぇ…だけど、大丈夫よぉ。 心配しなくても、私はそんなに弱くない。貴方達に迷惑は掛けないわぁ」「うん、楽しみにしてるよ」蒼星石はこっちを向いて微笑むのだが、それが逆に怖い。悪気は無いのだろうが…「大変な事になったわね…けど、私は信じているわよ、水銀燈」「ええ、頑張るわ、真紅」「あの二人、昨日会ったばかりなのに、もう打ち解けてるです。 気が合うのかもしれないですね」「そうだな。真紅があんなにはしゃいでいるのを見たのも、久し振りだよ」今から迷宮に潜るというのに、二人は、これからピクニックに行くかの様に見えた。口にはしないが、誰もが、頼もしい仲間が増えることを喜んでいた。
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。