「とある夏休み」16ページめ
16ぺーじめ暑い夏、今日も今日とて全員集合。真「今日は何をするの?」銀「ずばり!」翠「金儲けですぅ!」蒼「…」雛「お仕事するの~?」雪「正確には、カブトムシやクワガタムシを捕まえに行くんですわ」薔「そして…それをネットで売るの…」真「…」雛「…」銀「真紅…?」真「ちょwなぁんて面白そうなの!?」雛「美味しすぎるお遊びなの~」翠「ですよね!?さすが真紅ですぅ!」蒼「…」…というわけで、一同は近くの林に入りました。あの防空壕は今日も口を開けています。翠「ここではひどい目に遭ったですぅ」蒼「誰かさんのせいでね…」雪「ですわ」真「…ところで水銀燈、虫取り網は持ってきてないようだけど?」銀「あらぁ、私達には虫取り網要らずの必殺技があるのよぉ」真「へぇ…樹に蜜を塗っておいたりするとかかしら?」薔「それもだけど…もっとすごい方法があるよ」雛「楽しみなの~」雪「効率の良さでは蜜に負けませんわよ」蒼「まあ、見てみたら意外とあっけないんだけどね」一同は、防空壕のある林の斜面を少し上がり、木々がうっそうと生い茂る真っただ中に入りました。銀「じゃぁ、見ててちょうだいねぇ」言うが早いか、水銀燈は傍のクヌギの木をするすると登り始めました。真「まぁ、何て身軽なの」雛「すごいの~」あっという間に、水銀燈は枝葉に隠れ、樹の中ほどまで登りつめました。真「ねぇ…蒼星石、貴女達は皆ああやって木に登れるの?」蒼「うん、登れるよ」雪「私達は片目しか使えませんから遠慮してますけど…」薔「うん…」真「…」少し空気がしんみりとなりかけたその時、頭上から水銀燈が声をかけました。銀「じゃ行くわよぉ」翠「それじゃ皆で樹の周りを囲むですよ」真・雛「…?」蒼「上をよく見ててね」真紅と雛苺はきょとんとしつつ上を見上げると…ふいに樹がゆさゆさと大きく揺れ出し、枝葉を鳴らしました。真紅は、揺れ動く枝葉の動きを目で追っていると…突然何かが視界に入り、真紅の足元に落ちました。真「…何かしら?」真紅はちょこんとかがみ、天空から降ってきた何かを恐る恐る両手で拾い上げてみると…何と、小ぶりなクワガタムシがもぞもぞと動いていたのです。虫に触れる機会など、それまでの人生でほとんどなかった真紅は、思わず声を上げそうになりました。蒼「あ、見つけた?クワガタだね」隣にいた蒼星石の手にも二匹のクワガタムシが載っています。雛「親方!空からかぶとむしが降ってきたの~」雪「あら、大きなカブトムシですわね」薔「そっちはどう?」翠「こっちも三匹降ってきたですよ~」クヌギの樹の下は熱気につつまれています。銀「どぉ?面白いでしょお?」いつの間にか樹から降りてきた水銀燈が、しゃがみ込んでクワガタをしげしげと眺めている真紅の側に腰をおろしました。他の連中は虫カゴに戦利品を詰め込んでいます。真「ええ、ものすごく」銀「良かったわぁ」真「でも本当に…貴女達は強いのね。自然の中に溶け込んで色々出来るなんて」銀「まぁ…サバイバル的なことも施設で教わったし…」真「カブトムシをネットで売るという発想もすごいわね」銀「結構高く売れるのよぉ。カブトムシには気の毒かもしれないけどねぇ…」真「…それも、施設にお金を入れるために?」銀「ん…まぁ…似たようなもんねぇ。自分達で参考書買ったりするからねぇ」真「え!?参考書に使うの?」銀「ええ…まあ…」真「…貴女達、本当に…たくましいというか…偉いわ」銀「…。さっ、次行きましょお?翠星石ぃ、落としたのは全部捕れたぁ?」翠「ぬかりはねーですよ!じゃあ次はあの樹に翠星石が登ってみるですぅ」蒼「気をつけてよ…?」雪「じゃ移動しましょうか雛ちゃん」雛「はいなの!」薔「元気な娘っこだぜ」それから少女達は夕方まで木々をめぐり、たくさんのカブトムシやクワガタムシを捕りました。樹に上った翠星石がカブトムシと一緒に落下したり、上を見ていた雪華綺晶の開いた口にクワガタムシが飛び込んだりと、いろいろなハプニングがありましたが…。大量の獲物を持って意気揚々と林を降りる少女達。山歩きに不慣れな真紅の手を支えている水銀燈が、真紅に耳打ちしました。銀「ねぇ、明日、施設に泊まってみない?」真「お泊り?良いの?」銀「ええ、今は先生達が少ないからねぇ」真「大丈夫よ。お泊り…ずっとしてみたかったわ」銀「じゃあ、待ってるからねぇ」少女達は、薔薇十字の門の前で別れました。これを見計らったかのように、黒い車がその横を通り過ぎて行きました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・真「ただいま、白崎」雛「ただいまなの~」白「お帰りなさいませ…おや、カブトムシですね」雛「うん!お姉ちゃん達からもらったの~」雛苺は、カブトムシが二匹入った、竹を編んで作られた虫カゴを得意そうに掲げました。白「…左様でございましたか」真「そうそう、明日は薔薇十字の施設にお泊りに行くことになったわ」雛「なの~」白「!! お泊り…でございますか」真「ええ、だから明日の夜は留守にするけど、よろしくね」白「…承知しました。…あ、お風呂は既に沸かしておりますので」真「今日は一日中歩きまわって汗だくね。雛苺、行きましょうか」雛「うぃ~」白「…」二人が浴室へ入ったのを見計らい、白崎は電話の受話器を取り、短縮ダイヤルを押しました。音声アナウンスに従ってボタンを押し、しばらく待ち…「私だ」「白崎です。至急報告したい事が…」つづく
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