真紅短編45
「ジュン、紅茶を買ってきて頂戴」いつもと同じすまし顔の真紅にいつもと同じ事を言われた僕は、いつもと同じように「はいはい」と言ってから席を立った。周囲ではいつもと同じようにクラスメイトが残り僅かになった昼休みを満喫している。そんな連中に適当にからかわれつつも、僕は我侭な彼女の言いつけ通りに紅茶を買いに教室を後にした。そしていつもと同じように、急ぐでもなく、ゆっくりするでもなく、僕は歩く。程なくして、いつもと同じ自販機に辿り着いた訳だけれど……そこで、問題が起こった。紅茶が無い。例えば売り切れてた――とかなら、まだマシだった。有ったのだ。しかも2つ。『つめたい』と『あたたか~い』の2つが。時期は6月。別に、そう珍しい事ではない。きっと来週には『つめたい』で統一されるんだろうな、と季節感すら感じる。でも僕にとって、『つめたい』紅茶を買うのか『あたたか~い』紅茶を買うのかは、重大な選択肢でもあった。「季節を考えると冷たい方かな」一人で呟いてから、財布からお金を取り出して自販機に入れようとする。だけれど、僕はその時、唐突に思い出した。「でも……そう言えば真紅のやつ、真夏でも家では熱い紅茶を飲んでたっけ」だったら『あたたか~い』方が良いかな。
僕はそう思いなおして、温かい紅茶を買おうと自販機にお金を入れる。そして、ボタンを押そうとしたとき、さらにもう一つ思い出した。「いや、でも……真夏に熱い紅茶、って言っても家の中はクーラーで涼しいかったしな」それから僕は顔を上げて、空で輝く太陽へと視線を向けた。時刻は1時頃というのもあって、けっこう日差しが温かい。梅雨時期にしては湿度は少ないように感じるけれど、それでも春先と比べると快適とは言えない。夏になりきる前の、ほんの少しの猶予期間。この自動販売機みたいに『つめたい』と『あたたか~い』の区別があいまいな時期。僕だったら、きっと迷わず冷たい飲み物を選ぶだろう。だけれど、これを飲むのは、僕じゃなくて真紅。ほんの少しだけ考えてから僕は、とりあえず『つめたい』と『あたたか~い』の両方を買う事にした。彼女が選ばなかった方を僕が飲んだら良いか、位の軽い気持ちで。それから教室に戻って、いつもと同じように僕の帰りを待っている真紅の所へと足を進めた。「ほら、買ってきてやったぞ。 アイスとホットがあるけど、どっちにするんだ」そう言い、机の上に2つの缶を置く。すると彼女は、少しだけ目を丸くしてから、僕へと向き直って微笑みながら答えた。「どちらでも構わないわ」その言葉を聞いて僕は、何だか少しの時間とは言え真面目に悩んだ事が馬鹿らしく思えてきた。
「なんだよ、それ」そんな愚痴みたいな言葉が口から漏れそうになる。けれどその前に、真紅が楽しそうに目を細めながら口を開いた。「だって貴方の事だから、どちらにしたら私が喜ぶか悩んで、 結局どちらが良いのか分からなくて、それで両方買ってきたのでしょう?」まるで僕の事なんてお見通しといった表情で、真紅は言う。そして一拍置いてから、青い瞳を僕に向けながら、彼女は呟いた。「貴方が買ってきてくれた紅茶ですもの。私はどちらでも構わないわ」少しだけ僕は、真紅に見つめられてるような気がして、何だか恥ずかしくなってしまった。「なんだよ、それ」今度はしっかり、そう言葉にする。それから温かい紅茶……ちょっと時間をおいてしまったのでぬるくなった紅茶に手を伸ばし、フタを開ける。いつもと同じ紅茶は、ぬるくなっていたせいか、いつもより少し砂糖が多いような気がした。
真紅「誰もいないわね…」真紅「くんくん!あなたのことが好きよ!付き合って!」真紅「え!?いいの!いやっほ…」ジュン「……」真紅「絆ックル!!!!」ジュン「なんで…へぶぅ!!」【いやっっ】【ほうっっ】
銀「真紅ぅ、せっかく海に来たんだから貴女も泳ぎなさいよぉ」真「…私は遠慮するわ」銀「むぅ…」真「…」銀「…もしかして真紅、貴女泳げないのぉ?」真「!!」銀「でしょぉねぇw だって貴女、私と違って、浮力となるべき大事なトコロが貧しいんですものねぇw」真「…」雛「水銀燈がいないの~!」真「水銀燈は知らないけど、どこぞのだらしないホルスタインならそこで砂遊びしてるわ」雛「あ~!水銀燈が生き埋めにされてるの~!」銀「ぐ…ぐるじい…」【解き放つ】【海と乳】
ジ「おはよ~」真「まったく、夏休みだからってこんな時間に起床とは感心しないわね」ジ「んーはいはい明日からがんばりますよ…ってフォー!?」真「フォー?今日のお昼は冷や麦よ」ジ「おおおお前何でバスタオル一枚でー!?」真「なによ、さっきシャワー浴びただけじゃない」ジ「にしたってもうちょっと…!」真「私が自分の家でどんな格好をしようと勝手でしょう」ジ「そりゃ…だけどさ…」真(ふふふふ。どうやら効果はテキメンのようね。オスと言うのは単純でいいのだわ)真(本来は色仕掛けなど望むところではないのだけれど…色々と誘惑の多いこの時期。手綱を握る者としてしっかり諫めてあげなくては)真(チラチラとこちらを見ているのがわかるわ…無視したいけれど意識せずには居られない…まるでお預けをくらった犬のよう。悪くないわよ、ジュン)真(最近の奉仕には不満も無いし…便利な下僕に御褒美といったところなのだわ。さぞ目の保養になるでしょう?このスラリと伸びた足。くびれたウエスト。艶やかな髪に清楚な美貌…そして無駄の無い引き締まったスタイルの良くハリのある年をとっても垂れない上品で小さ)真「誰がまな板絶壁娘よー!!」ボカァ!ジ「何も言ってねー!!ぐはぁ!!」
紅「ジュン、紅茶おかわり」ジ「ほら、注いでやったぞ」紅「ありがと。……あら?これは何?」ジ「ミントだよ。風味が入っていいだろ」紅「あら、珍しく気がきくわね」ジ「そらどーも」数分後紅「あら?ミントが沈んでしまったわ」ジ「ホントだ。もう冷めてきてるし一気に飲んじゃえば?」紅「そうね」ゴクッ紅「うっ……」ジ「どうした?」紅「ミントが完全にとけてミントの味しかしない(ToT)」昨日の実話保守
長かった夏休みも、いよいよ最後の夜。月明かりの下、しゃがんで線香花火を見つめているのは、涼しげな浴衣姿の真紅。チャームポイントの長いブロンドが地に着いてしまっているけれど、真紅は気にする素振りもなく、小さな煌めきに瞳を奪われていた。淡い色のリップグロスを塗った唇をキュッと引き結んで、息を潜めて……瞬きすら忘れてしまったかのように、徐々に勢いを失ってゆく火の花に、目を注いでいる。僕には、その様子が、野に咲く可憐な花を愛でている風でもあり――また、もうすぐ消えてしまうものを悼んでいるみたいにも見えた。なにかと礼儀にうるさい君は、こんな時に話しかけられるのを嫌うだろう。だから僕は、なにも言わない。気の利いた言葉を見つけられないのも、一因だけど。そうすることが当たり前のように、ただ佇んで、見守っていた。「あ……」沈黙を破る、消え入りそうな吐息。もう、火の花は散ってしまって、闇があるだけ。真紅はゆっくりと振り返って、ぼんやりと呟いた。「終わってしまったわ、ジュン」「うん。これで終わりなんだな……花火も、夏休みも」「残念ね。もう少しだけ、楽しんでいたかったのだけれど。なんだか寂しいわ」「仕方がないよ、真紅。どんなことも、いつかは終わるものさ」始まりは終わり、終わりは始まり。そんな輪廻の中に、僕らは組み込まれている。じゃあ、いいカタチで結末を迎えたら、より良い始まりが生まれるのかな?そんな戯れ言を口にしてみたら、真紅は「あら、貴方にしては面白い発想ね」と。微笑みながら僕の前に立って、挑むように見上げてきた。そして―― 「試してみましょうか」言うや、真紅は蒼い瞳を瞼で隠して、ちょっとだけ背伸びをした。いきなりのことにドギマギしつつ、僕は、真紅の細い肩を両手で支えながら…… _ -- 、 ス 入 _> 、_人__人__人__人__人__, タ /:::/トイ::::| _) タ /:::/:::|::::|:::::| _) おおっと! タ /:::/:::;イ:::::l:::::| _) ここで30行ですぅ。タ /:::/:/:.!::::::l:::::l _) 【月光の】【下で】 _∠ニフ': : : :.',::::::l:::::l _) r┬':仁二): : : : : : :Y二二) ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒└ハに二Y ー-: : :_:_:_`フイ `}\:.)ノ: : : : : : : : :└rう ⌒'7辷_┬┬┬イノ)) / // / //⌒⌒´ ' // / // / // / / '. /
真「今日は私がカレーを作ったわ」雛「今爆弾発言が聞こえたの」銀「真紅の手料理…ざわ…ざわ…」真「物凄く嫌そうな顔しないで頂戴。貴女達がこの私の料理にどのような先入観を 持っているのかは知らないけど、文句を言うのは食べてからにしてほしいわ」雛「食べた後に果たして口をきけるかどうか分からないの」銀「上手いw」真「ええウマそうでしょ?さあ食べて頂戴」雛「…水銀燈には失望したの」銀「…仕方ないわね。いただきまぁす…」真「ワクワク」銀「モグモグ」雛「モグモグ」銀・雛「!!」真「どうかしら…!?」雛「在り得ないの!素晴らしい出来なの~!」銀「何これ何これぇ!本当に奇跡よぉ!」真「まあ!気に入ってもらえてうれしいわ」雛「味は極めて平凡なの!それでも!」銀「その平凡カレーを真紅が作ったとなるととても美味しく感じるわぁ!」真「…」雛「何の変哲もないカレーが美味しくなる!」ニパー銀「『真紅が作った』という事実のスパイス恐るべし!」ニパー真「今まで見た事のない貴女達の心の底からの笑顔…何故か涙が止まらないのだわ」【そんな】【顔しないで】
紅「…」ジ「…」紅「…」ジ「…」紅「…」ジ「…」紅「…」ジ「…」ジ「…なんか喋れよ」紅「おだまりなさい」保守
翠「んー、だいぶ過ごしやすい季節になりましたねぇ」蒼「そうだね。そろそろ長袖の準備も考えないとね」真「もうジュンったら…こんな場所で…」ジ「ごめんよ真紅…だけどキミの魅力の前では僕の理性なんて無力なんだ」真「そんなバカな事を…私のしつけが足りないのかしら?」ジ「おお…キミにしつけられたいがために道化を演じる僕を許しておくれ」真「いいえ、ダメよ。帰ったらキツいしつけをします…2人っきりでね」ジ「ああ真紅!キミは僕の理性すらも釘付けにしてしまうのか!なんと罪深い主様よ!」真「そうね…私は悪い女なのだわ。だからそんな私にアナタは罰を与え続けるの。ねえジュン…私の刑期はいかほどかしら?」ジ「もちろん、終身刑さ…」真「ジュン…」翠「んー、やっぱだいぶアッちいですねぇ」蒼「そうだね。そろそろ排除の準備も考えないとね」
真「今日は私が夕ご飯を作ってみようかしら」トントンジ「ただいま…っ!?」真「お帰りなさいジュン。どうかした?」ジ「いや…言葉にしにくいんだけど…」真「…」ジ「何というか…」真「…」ジ「…真紅?」真「ぐすっ」ポロポロジ「おっおいどうしたんだよ真紅」真「ジュン…どうせ貴方も、私にはロクに料理なんて出来ないと思っているんでしょう…?」ポロポロジ「そんな事…ないよ。僕は真紅の料理はまごころがこもってて美味しいと思う。それに…」真「それに…何よ」ポロポロジ「僕がさっき固まったのはお前が裸エプロン姿でいるからだ」真「私のこんな姿…嫌?」グスジ「まさか。むしろお前を食べたい。だからもう泣くなよ…」真「(嬉しい…)…べっ別に私は泣いてなんかないのだわ」ゴシゴシジ「思いっきり泣いてるじゃん…よしよし」真「こっこれは…そう!玉ねぎを切ってたからよ」ジ「それ玉ねぎじゃなくてニンジンじゃん」真「…」【乙女の】【涙】
「ジュン、クッキーを焼いてみたの」そう言い真紅が僕に差し出したのは、赤いリボンが付いた可愛らしい袋だった。彼女には料理の才能が全く無い。それは、知っていた。だけれどそれ以上に、彼女の期待を裏切りたくない。という思いがあった。「あ、ああ……ありがとう」ちょっとだけ顔が引き攣ってしまったけれど、それでも僕は微笑みながら真紅にそう言う。そして、受け取った袋からリボンを外し、早速、その中身を覗いてみた。見た目は……焦げてないし、形だって普通に見える。だからといって、油断は出来ない。今回は砂糖と塩を間違えてあるのか?それとも、中まで火が通ってないのか?まだ分からないけれど、真紅がまともなクッキーを作れるとは、とてもじゃないけれど思えない。僕は額からひと筋の汗を流しながら、考えうる最悪のパターンを何通りも考えていた。すると、クッキーを見つめたまま固まっている僕に、真紅から当然の言葉がかかった。「ふふ、遠慮してないで、食べても構わないわよ?」きっと今回のは自信作なのだろう。真紅は少し照れながらも、どこか誇らしげな表情で僕にそう言ってくる。……ええい、南無三。僕は真紅の期待に応えるためにも、クッキーをつまみ上げ、自分の口に放り込んだ。変な薬剤の匂いもしない。割れた調理器具の破片が口に刺さったりもしない。それどころか……信じられない事に、今回のクッキーは、何と、普通に美味しかったのだ。 「美味しい……このクッキー、美味しいよ!真紅!」僕は感動より驚きが先に立って、ついそう叫んでしまった。なのに真紅は、いつもと同じようなリアクション。「と、当然の事なのだわ。だって、この私が焼いたクッキーですもの」ちょっと頬を赤くしながらも、ツンとした顔でそう言っていた。そう言えば、生焼けどころか生だった時も、木炭みたいな味だった時も。僕は彼女の為に、決まって「美味しい」と答えていた。まさかその僕なりの思いやりが、本当の気持ちを伝えたい時に裏目に出るだなんて。それでも、後悔はなかった。だって……真紅がそれで喜んでくれたのだから。だからこそ、自分の料理の才能の無さに気付く事無く、今までクッキーを作ったりしてくれて……その結果として、今回のレベルまで成長してくれたのだから。あれ、何か、目頭が熱くなってきたよ。クッキーの入った袋を持ったまま、感動でフリーズしてしまっている僕。真紅は少しもじもじしながら話しかけてきた。「気に入ったのなら、全部食べてしまっても構わないわよ。 そ、その……無くなったら、また作ってあげるから……」最後のほうが小声になっている所が、また何とも可愛い。僕は微笑んで頷くと、再びクッキーを食べようと袋に手を伸ばして……その直前、気が付いた。無いのだ。クッキーなら、袋の中に大量に残っている。ただ、僕の口の中に、水分が全く無いのだ。それはまるで、食パンを一斤水無しで食べた後のように、口内サハラ砂漠。たった一枚のクッキーでここまで水分を奪うのは、並大抵の技術では無理だ。それを易々と成し遂げた真紅の料理の腕前を思うと、背中に冷たい汗が流れてくる。そんな僕の内心に吹き荒れる葛藤の嵐には気付かず、真紅は顔を赤くしながら、そっぽを向いて呟いている。「どうしてもと言うのなら、これから毎日焼いてあげても……べ、別に私は構わないのだわ……」そうか。分かった。分かったから、水をくれ。このままでは、口の中がパサパサになり死ぬ。苦しみもがく、といった表現が最適であろう僕の本心に、真紅は気付かず。というか、僕が彼女の為に、何を食べても美味しそうな表情を作る練習をしてきたお陰なのだが。とにかく、そんな僕に対して。瞳をうるませはじめた真紅の言葉が、まるで処刑宣告のように、容赦無く無慈悲に振り下ろされた。「あら、どうしたのジュン。 ……食べてくれないの?」よし。口の中パサパサになり死ぬ覚悟が出来た。
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