MISSION no.2[紅の恐怖、翠の加護]
[ARMORED CORE BATTLE OF ROSE]MISSION no.2[紅の恐怖、翠の加護]「…なんでアナタがここにいるのよぉ……」任務を達成し、自分のガレージに帰還するはずだった水銀燈の前に、かつて死闘を繰り広げ、共に戦ったライバル、真紅が立ちはだかった。「アナタは…3年前、『大粛清』の時に…」『大粛清』。それは、今では過去の記憶となってしまった特攻兵器「UNKNOWN」の突然の襲来。しかし、今までの襲撃とは少し様子が違っていた。「UNKNOWN」の特徴である、蝗のような形状ではなかった。襲ってきた「UNKNOWN」全てが、人型をしていたのだ。そして、壊滅的な被害を受けたのは、全て大規模な工業地帯であり、無差別な自爆攻撃ではなかった。その後も度々襲撃はあったが、その時ほどの大規模な攻撃は現在までに行われていない。そしてその時、真紅と水銀燈は、共にキサラギのトライトン環境開発研究所を防衛していた。凄まじい敵の攻撃に、仲間は次々に撃墜され、ついに2人のACも限界を超えた。その時の水銀燈機は、最新のコアシステムを搭載していたおかげで、コアだけでも脱出・撤退が可能だった。しかし、真紅機は旧世代のコアシステムだったために、脱出が出来ずに機体ごと爆散してしまった―――。と、いうのが水銀燈の記憶している限りの事だった。だが目の前には―――。「…寝言は寝てから言いなさい、水銀燈。『漆黒の天使』も堕ちたものね」――彼女は、確かにそこに存在していた。「…随分と言うようになったじゃなぁい、真紅ぅ…。いや、『紅蓮の鬼乙女』さぁん?」「…御託を並べている暇はないわ。早く始めましょう――」「――私には、時間がないのだわ…!」「ホーリエ!ブーストを最大出力!!一気に距離を詰めるのだわ!!」『READY!』真紅機の背中から、強力なジェットが噴出され、速度をみるみる内に上げていった。物凄い速度で接近しながら、肩の拡散ロケット砲をこれでもかと撃ちまくる真紅。たまらず上空へ退避する水銀燈。それを狙ったかのように、上昇しつつ真下から特殊マシンガンのWH03M、通称「フィンガー」を乱射した。この特殊マシンガンは、他のマシンガンのようにマガジンを使用せず、弾薬が尽きるまで常時連射できる特性を持つ。そのため弾切れをおこしやすいが、総合的な火力はグレネード弾を遥かに凌ぐ。真紅機の左手から、さかのぼる滝のように襲ってくる弾丸。それをまともに受けたのでは、どんな装甲もまるで意味を成さない。「ぐぅっ!」『脚部損傷。駆動部に異常が発生しました』「くっ…!腕は落ちていない様ねぇ…!」体勢を立て直し、左手のレーザーブレード「WL-MOONLIGHT」で斬りつける水銀燈。「甘いのだわっ!」さらに加速する真紅機。水銀燈機の斬撃は見事に空振りし、真紅機が一瞬で視界から消える。今度は真紅機が上空を取り、ロケット砲を雨のように浴びせかける。もともと命中率の悪いロケットだが、動揺し、固まっている機体にならば当てることは容易い。「うぁっ!」『頭部破損。レーダーに一部異常発生』バランスを崩し、高度を下げていく水銀燈機。地面と接触し、わずかに機体が硬直する。そして、身動きの取れなくなったその一瞬を、真紅は見逃さなかった。「これで終わりなのだわッ!!水銀燈!!!」そう叫びながら、真紅は右手に装備した射突型ブレード「KIZUNA」を、水銀燈機の腹部に高速で叩き込んだ。「が…はぁっ……!」『コア損傷。脚部破損。ジェネレータとラジエータの一部に異常発生。熱暴走による装甲板の一部融解発生』強烈な衝撃と共に吹っ飛ばされ、地面に激突する水銀燈機。コックピットであるコアはぎりぎりで外れていたものの、動力のほとんどを削がれ、もはや戦闘続行は不可能であった。そして、止めを刺そうとする真紅。「うぐぅっ…。真紅……。アナタは…」「………さようなら、水銀燈――」ピーッ、ピーッ、ピーッ…真紅機に、突然警報が鳴り響く。――ブーストの過剰な使用による熱暴走だろうか。それとも、別の――?水銀燈が思考していると、真紅は銃を降ろし、こう言った。「―――そう、わかったわ、ホーリエ。………残念だけど、『時間』がきてしまったのだわ。 …また会えるといいわね。水銀燈」そう言うと、真紅は急旋回し、来たときと同じ方向へ撤退していった。◇「………真紅………アナタは……いったい――― ―――いえ、それよりも、まず脱出するほうが先ねぇ…」幸い、脱出・帰還だけならコックピットの緊急レバーさえ壊れていなければ可能である。緊急用のモードに切り替え、ACを破棄して帰還をしようと試みた――――――突然、北東の空から何発ものグレネード弾が降り注ぎ、大地を大きく削いでいく―――!「!?一体なんなのよぉ!? ―――まさか、コレって…!」レーダーには、1つの敵反応。そして、空には―――。「人型の…UNKNOWN………!」上空に浮遊していたその兵器。UNKNOWN。かつて地上の荒廃の原因となったそれは、水銀燈が先ほど制圧した工場を、完膚なきまでに叩き潰そうとする。グレネード、マシンガン、レーザー…。様々な武装を駆使し、工場施設のみを的確に破壊していく。その無慈悲なまでに冷徹な攻撃が、忌まわしい記憶を呼び覚ます――。「くぅっ…!今日は人生最大の厄日よぉ……!このまま脱出したら間違いなく蜂の巣だわぁ…! メイメイ!何とかして機体を起こしなさぁい!」『了解。………。全てのエネルギーを動力部に移行。完了。武装を全てパージしてください』「わかったわぁ…!」水銀燈は機体の全ての武装の連結を解除し、身軽になった機体を起こす。機体の各所が異常な駆動音を上げるが、それに構っている暇はない。ジェネレータの出力を上げ、ブーストを高出力で使用できる状態に持っていく。―――その時、攻撃中だったそのUNKNOWNが、攻撃の矛先を変えた―――!「…どうやら、『戦力』となり得るものは全て破壊しないと気がすまないようねぇ…。 さっさと離脱するわよぉ!メイメイ!最大出力でブーストを使うわぁ!!」『了解。ブースト、最大出力』機体をブーストで持ち上げ、次の瞬間には最高速度に達する―――!―――はずだった。次の瞬間、目の前にあったのはUNKNOWNの放ったグレネード弾。ぐらつく機体の制御に全神経を傾けていた水銀燈には、それを回避する術はなかった。正面からまともにグレネードを喰らい、再度吹っ飛ばされる水銀燈機。辛うじて踏みとどまるものの、UNKNOWNは既に第二射の体勢に入っていた。メイメイが告げるエラーメッセージが、水銀燈をさらに絶望に叩き落す。『頭部破損。右腕損傷。出力低下。ジェネレータ、完全に沈黙。メインシステムダウン。保護モード、起動しません』「…ここまでかもねぇ………」『水銀燈!頭下げてろです!!』不意に通信が入る。その直後、機体の頭部スレスレを、巨大な閃光が通り抜けていった。その光がUNKNOWNの胸部辺りに直撃し、凄まじい爆発音と共にUNKNOWNが吹っ飛んでいく。そして、水銀燈とUNKNOWNの間に、エメラルドグリーンの機体が割って入る。「…その甲高い声…。翠星石ねぇ…!」「その通りですぅ!翠星石がきたからにはぁ、もうあんなイナゴモドキに好き勝手などさせないのですぅ!」しかし、装甲が損壊してはいるものの、UNKNOWNは全く行動に支障をきたしていない様子で立ち上がる。「…と、言いてーところですが…。あいつは予想以上のバケモンですぅ…」先ほど翠星石が放ったのは、数ある武装の中でもトップクラスの攻撃力を持つ大口径レーザーキャノン、「CR-WBW98LX」。MTはもちろん、並のACがこれを喰らえば、装甲が剥げるだけでは済まない威力。しかし、目の前の人型イナゴモドキは、それを物ともせずに立ち上がってきた。「あれを喰らって立ち上がるとは見上げた根性ですぅ…。 ―――ですがぁ!」「翠星石はてめーなんぞに負ける気はさらさらねぇです!!!」翠星石はそう言うと、機体内部に搭載された追加兵装、インサイドを開放した。出てきたのは………「I01M-URCHIN」。吸着地雷である。「そらそらそらそらぁ!!ですぅ!!」普通の使用法としては、接近する敵機に対し、カウンターの意味でばら撒く。もしくは、敵機の周りに撒き、行動を制限するという用途が一般的である。そして翠星石は………どちらでもなかった。吸着地雷を連続で発射し、全てをUNKNOWNに取り付けたのである。「そこから一歩でも動けばぁ………ボンッ!ですぅ! しかぁし!翠星石はてめーに歩かせようなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇですぅ!!」そして、機体側面に取り付けられた補助兵装、エクステンションを起動させた。起動したのは、緊急用エネルギーパック「JIREN」。それにより、レーザーキャノンの発射により減少したエネルギーを、一瞬で回復させる。「こいつでてめーのドタマぶっ飛ばしてやるですぅ!!!」先ほどのレーザーキャノンを、再びUNKNOWNに直撃させる。地雷の爆発も相まって、さすがに倒れこむUNKNOWN。「まだまだですぅ!!!」そしてもう一度、JIRENを起動させる。その直後、レーザーキャノンを叩き込む。さらにJIRENを起動させる。さらにレーザーキャノンを叩き込む。―――そして、爆煙が収まった時、そこにあったのはバラバラのジャンクとなったUNKNOWNであった。「どーです!参ったですかぁっ!!」「(ここまでバラバラになると、同情の念すら沸いてくるわぁ…)」勝ち誇る翠星石と、少しばかり恐怖を覚えた水銀燈。「さぁて、そろそろ帰ろうかしらねぇ…」ピピピッ「…え?」少し精度の落ちたレーダーに目をやる水銀燈。そこにはやはり敵反応。なんと、5km程先からUNKNOWNと思われる機体が多数接近中だった。しかも、レーダーのディスプレイを埋め尽くすほどの。「翠星石ぃ!悦に入ってる暇はないわぁ!UNKNOWNの大編隊が接近中よぉ!!」「何を言うですか。バカな事言うもんじゃないで――― ―――ひぇええ!?本当ですぅ!!」「だから言ったでしょぉ…」「一刻も早く離脱するですよ!ちょっと手足をもぐですが、コンパクトにするためですから勘弁するですぅ!」そう言うと、翠星石はレーザーブレードでコアと両手足を切り離した。「スィドリーム!オーバードブーストですぅ!」『BEREIT!』「え?今なんて言っ―――んごぇっ!!」「全速前進ですぅ!!」オーバードブースト―――通称OB。機体のエネルギーを大量に消費する代わり、絶大な推進力を得る特殊機能である。構造が単純なため、多くのコアに搭載されているが、使用時には大きなGがかかるのが難点である。それにより、使用中はよほどの熟達者でない限り、移動が直線にほぼ固定されてしまう。ちなみに翠星石のAC「ヤーデシュテルン」に搭載されているコアは、発熱量が低く、長時間の使用が出来る「CO4-ATLAS」である。「OB使うなら早めに言いなさぁい!このおばぁかさぁぁぁああん!!!」「しゃべってると舌噛むですよ!水銀燈!」「OBなんて、絶対に使うもんですかああああぁぁぁぁぁ……………」風のように飛び去る翠星石機の腕の中、絶叫する水銀燈。「(でも、来てくれて助かったわぁ…。ありがとう、翠星石――) ――うごぁっ!!」「大丈夫ですぅ!方向をちょっと修正しただけですよ!」「前言撤回よぉ!!全然大丈夫じゃないわぁ!!!」To be continued...
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