巴短編8
巴(剣の道に生きる乙女として…この技の修得欠かせない…)巴(心を落ち着かせて…集中…邪念を振り払い…澄んだ心で気を高め…)巴(目で見ようとしては駄目…奥の奥、研ぎ澄まされた心の目で真実を解き明かす…今!!)ジ「ん…なんか視線を感じた気が…」翠「気のせいじゃねーですか?」巴「はあ…はあ…やっと桜田君のトランクスまで見えた…!これで…あと一枚!」
巴が透視能力を覚醒させたようです。巴「いける…今の私なら。精神の水面に放たれた小石ですら、私の心には僅かなさざ波も立てる事はない…」巴「拘束制御術式第零号解放…状況A、クロムウェル発動による承認認識…眼前布の完全透視の間、能力使用完全解除開始…はぁっ!!」梅「やあ桜田!今日もいい天気だね!」ジ「あ~先生…どうもです」梅「むむ!?先生、何やら熱い視線を感じるよ!青春だなぁ!」ジ「きっと気のせいですよ」巴「~~~~~~~~~!!??%◎★$℃¥@△→※〒¢くぁwせdrfgyふじこlp;」ジ「なぁ雛苺。今日も巴は休みなのか?もう5日連続だぞ?」雛「トモエはこころにいえることのない深い傷をおってしまったの」ジ「はぁ」雛「まいばん乙女の涙で自分のまくらをぬらしてるのよ…」ジ「難儀だなぁ…」
肌にまとわりついてくる……なんとなく変な空気。私は、ここに足を踏み入れたときから、それを感じていた。みんなの平然とした表情から察するに、気づいているのは、私だけらしい。 ――高校の修学旅行のグループ行動で訪れた、古い都の、古ぼけた博物館。「あれ? みんな……どこ?」 ――狭い館内で、いつの間にか、独り。手近なドアを開けると、そこはセピア色の木造家屋――研究室のような場所だった。目の前の机には、こちらに背を向けて座っている、男性の姿。ここは、どこ? そう訊ねるより僅かに早く、男性は振り返って、優しく微笑んだ。「やあ、よく来てくれたね。君が、僕の新しい助手を務めてくれる子かい」「えっ? さ……桜田くんっ?!」その男性は、幼なじみの男の子と、よく似ていた。面差しとか、背格好とか。でも、いま目の前にいる男性のほうが、ずっと年かさだと思う。多分……30前後くらいかな。無精ヒゲも濃いし、口振りも、どこか古めかしい。「おや……どうして、僕の名前を? 君とは、どこかで逢っていたかね」「いえ、あの…………多分、初対面だと思いますけど」「だよねえ。僕はこう見えても、考古学者だからね。記憶には自信があるのだよ」考古学者――言われてみれば、うらぶれた風貌も、それらしく見えてくる。 男性は、ゆっくりと私の前に歩いてきて、静かに右手を差し伸べてきた。私も同じようにして、握手する。彼の手は、女の子のものかと錯覚するほど、しっとりと潤っていた。「あらためて名乗ろう。僕の名前はだね」言って、彼が据え付けの黒板に書いた字は……「桜田……た、たけのこ?!」「筍だよ、ジュンって読むんだ。子供の頃は、チビ筍って苛められたものさ。 どうやら、ウチは小柄な男ばかり生まれる家系らしくてねえ。 両親は背が高くなるよう願って、この字を使ったんだろうけどさ」はた迷惑な話だとは思わないかね?……と、真顔で同意を求められても、なんと返せばいいのやら。曖昧に笑ったら、バカにしたと思われそうだし……ここは無難に頷いておいた。「あの……私、柏葉巴です。普通の高校生で――字は、こうです」「ふむふむ。いい名前だね。凛とした、もののふの魂を感じさせるよ」「私、女の子なんですけど」「いや、これは失敬。やれやれ……まいったな。 どうにも口で失敗することが多くてね。僕自身、困っているのだよ」「でしょうね」なんと言うか……不器用な性格まで、桜田くんと似ているなんてね。この男性とは、初対面で、赤の他人だったハズなのに――いつの間にか、旧知の仲のように感じ、振る舞っている私がいた。「君のこと、巴くんと呼んでも構わないかね?」「はい、どうぞ。私は、どう呼んだらいいんでしょうか?」 なんとなく、彼の放つ独特の雰囲気に、私は呑み込まれていた。この場所に自分が立っていることを、なんの疑問にも思わないままに。「僕のことは、好きに呼んでくれていいよ。教授とでも、先生とでも」「たけのこ――でも?」「それだけは却下」「ふふ……分かりました。それじゃあ、桜田くん……では?」「少し馴れ馴れしすぎる気もするが――まあ、そう呼んでくれたまえ」どうして、ほのぼの会話なんかしてるんだろう……私。こんなコト、してる場合じゃないのに。博物館ではぐれた、みんなのトコに帰らなきゃいけないのに。「それじゃあ、巴くん! 早速で悪いが、老禅遺跡まで、発掘調査に行くぞ」「え? ちょ……いきなりすぎませんか?」「なにを言うんだ。諺にもあるだろう。『老禅は急げ』とね」「知りません」 ――そして始まる、摩訶不思議なアドベンチャー。「桜田くんっ! ここに、斜光器土偶が」「おお、でかしたぞ巴くん! これは、まさしく縄文時代の老禅姪殿だ」「姪……って、女の子なんですか、これ?」「そうだよ。この胸を見たまえ。ボイーンって盛り上がってるだろう」「なんか……その言い方、やらしい」「誤解だ! 決して、やましい気持ちなんてないぞ」「本当かなぁ」 ――まったりと過ぎゆく日常。「ねえ、桜田くん。書架から、江戸時代の春画が山ほど出てきたんだけど……」「ちょわぁー! そそ、それはだね。そう! 考古学的資料なのだよ。 当時の生活や風俗を知る、貴重な手懸かりだとは思わないかね?」「でも……葛飾北斎の『喜能會之故眞通(きのえのこまつ)』って――」「人間、たまには幻想も必要だよ。僕の持論だがね」「つまり、桜田くんは触手陵辱系が好き、と」「なんのコトかな?」 ――覆される常識。「あ……新聞が届けられてる。今日のニュースは―― え? ウソ……なに、これ?」紙面の上端にある日付の年号は、明治。 ――甦る記憶。「そう言えば、桜田くんの両親も考古学者で、世界を飛び回ってると言ってたわ。 じゃあ、もしかしたら、この時代の桜田くんは……彼のお祖父さん?」 ――そして訪れるロマンス。 「巴くん、すまない。君まで危険に巻き込んでしまって」「そんな……桜田くん。気に病まないで」「だが、僕のような朴念仁ならともかく、若い身空の君を――」「私が望んだことだから。どんな結果でも、私は後悔しないわ」「…………巴くん。君は、とても強い人だね」 ――告げられる想い。「もしも、2人……生きてここを出られたのならば…… 巴くん。僕と、一緒になってくれないだろうか」「ええっ?! で、でも――」(そうしたら、私……桜田くんのお祖母ちゃんってコトに……。 でも、ここで断って、今の桜田くんが死ぬ気になってもまずいわ。 ど、どうしよう。巴、困っちゃうぅ~) ――それぞれの決断が引き寄せる未来は、いかに。ダイジェスト版『巴トリッパー(仮)』本編は近いうちに。 な / ______ぁ 訳/  ̄ヽぁな / \ぁ い レ/ ┴┴┴┴┴| \ぁ じ / ノ ヽ | ヽぁ ゃ> ―( 。)-( 。)-| |んぁ > ⌒ ハ⌒ | / !ぁ> __ノ_( U )ヽ .|/ ん |ヽエエエェフ | | \ | ヽ ヽ | | | √\ ヽ ヽエェェイ|/ \ `ー― /ヽ
「おはよう、柏葉」「おはよう、桜田くん」今日も私は彼と挨拶を交わす。朝、高校へ登校する時のいつもの言葉といつもの風景。でも、数か月前からその風景が変わった。彼の隣に寄り添う少女が現れたのだ。彼女の名前は真紅。碧い瞳と金色の髪をもつ、気高く美しい少女。「おはよう、巴」「おはよう、真紅」彼の恋人の真紅と挨拶を交わす。少し先を歩く二人の背中を見ながら、私は思う。――本当は私も桜田くんの隣を歩きたいの…。でも、彼女の友達である私にはそんなことは言えない。――ずっと前から好きでした…。彼の友達でもある私は、そんなことは絶対に言えない。友達から恋人へと変わった桜田くんと真紅。今もずっと友達のままで変わらない桜田くんと私。そして、変われないこの想い…。――ねぇ、桜田くん、私も貴方が好きなんだよ。言葉にはできないけど、貴方が鼓動を揺らすから、私は今日も胸の中でそっと伝えるの。――私なら、此処です。少しだけでいいから、振り向いて…。【私なら】【此処です】
「桜田くん、一緒に帰ってもいいかな?」月曜日、JUNは学校の帰り道で巴に出逢った。「桜田くん、お買い物?」火曜日、JUNは自宅近くのスーパーで巴と出逢った。「桜田くんもそういう雑誌を読むのね…」水曜日、JUNは本屋で巴と出逢った。「桜田くんも苺大福を買いに来たの?」木曜日、JUNは不死屋で巴と出逢った。「桜田くん、勉強熱心なのね」金曜日、JUNは図書館で巴と出逢った。「桜田くん、今日は真紅と一緒なのね……」土曜日、JUNは映画館で巴と出逢った。「おはよう、桜田くん」日曜日、JUNが目を覚ますと何故かそこには巴がいた。「柏葉…。お前、なんでこんな所にいるんだ?」JUNの問いかけに巴は意味ありげな微笑みを浮かべた――。「クスッ。知りたいの?」紅「巴、恐ろしい子!」
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