ずっと傍らに…激闘編 第十四章~翠星石side~
翠「…」机の上でノートを開き、頬杖をついて、ため息をひとつ…はぁ。このノートも用無しですかねぇ。ジュンを引き篭もりから脱却させるために色々考えた作戦をまとめたノートなのですが──もうどうでもいいです。さっさと行くです。──まぁ、少しくらいはオシャレして行ってもいいかもしれないですけどぉ?~~~~~…さ、着替え終わりましたし、街へ出発しますか。まぁ、デ…デートなわけないですから、別にさっきの服装でも良かったのですが…どうせジュンは私と行きたくないようですし?コンコン…──誰か私の部屋の扉を叩く奴がいるです…翠「誰ですかぁ?」紅「私よ…」真紅ですか…翠「どーぞです」ガチャ…紅「…」真紅は入るなり、蒼星石のベッドにちょこんと座ったです。──ずっとこっちばかり見てきやがるです…気味が悪いくらいに…翠「何ですかぁ?…私の顔に何かついてるですか?」──まぁ、何を聞きたいのかは判ってるんですが。紅「私も下に居て少しイライラしたわ…」翠「…」紅「…いつまで経っても喧嘩してばかり…よく仲を保てたものだわ」翠「今日でその仲も終わりです!」紅「そう言って何回も仲を取り戻してるくせに…」翠「真紅は黙ってろです」ふ~んだ。何が1人で行ってやる!ですか。これからも…引き篭もりが治ろうがどうしようが、絶対誘ってやらねぇです!…絶対、…絶対。──はぁ。テンション下がるです…。翠「あ、真紅はチビ苺と一緒にジュンの家の警備をしてくれです」こうなった以上は仕方ないです。翠星石が1人で行ってやるですから、チビ人間はチビなりに1人でお留守番してたらいいんですっ!危なっかしいですからね…紅「あっ…それは翠星石のやるべきことよ」翠「いや、翠星石はケーキ買いに行きますから──」紅「いいから行きなさい。ジュンのところへ」翠「イ~~~ヤです!翠星石は1人で行ってくるです」紅「翠星石!」翠「今度ばかりは本気で怒ってるです!じゃあ行ってくるです。 真紅はチビ苺を連れて絶対ジュンの家に来るですよ?解ったですね?」ガチャ!!さぁ急いでドアを開けて家を出てやるです!紅「こら!待ちなさい」翠「妹は妹らしく姉の言うことを聞いてくれです!」あぁもう、追ってくるですぅ!階段…リビングのドア…玄関の靴…あっ…あったです翠星石の靴!ガチャ…とにかく走って逃げるです!…走ればこっちのものですよ。ほら、真紅ももう追って来ないですね。…まぁ家に帰れば捕まるんでしょうけど…どーせ妹なわけですし、華麗にスルーすればいいんです~w~~~~~…コソコソ──右…左…右……だ、誰も見てないですよね?こればっかりは誰にも見られるわけには…ピーンポーン…イライラ相変わらず遅いですねぇでも今朝はあれをやろうとしたと思われて怒られたですし…ったく、翠星石はそこまで…短気なんかじゃねぇですのにぃ……イライライライラピーンポーン…イライライライライライライライラ──た…た…短気なわけ…ないですよぉ?短気なんかじゃ…短気なんかじゃ…──くっ…!ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!…どちくしょぉぉぉ!──出ないですねぇ。居るんだったら窓から「五月蝿い黙れ」ぐらい言えばいいですのにぃ……よし、もう一度…。ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!──やっぱり出やがらねぇです…。まさか…本気で街へ行ったですか…??はっ…。…たっ…大変です!早く追いつかないと…人の多さに気絶して線路に落ちてもらったりなんかしたら…うわぁ…考えるだけで背筋が凍るです…。~~~~~はぁ…はぁ…──走るのも疲れるですね。ちょっとそこの公園で休むですか…。…ジュンの奴、そこまで意地張らなくてもいいですのに…。それとも、あいつなりに頑張って引き篭もりを治そうとしてるんですかね…。無茶しなくてもいいですのに…。歩いてでも行けるですが…やっぱり駅まで一番早く行く方法は…あっ…向こうにバスが来たです。走らなくては…──間に合ええええぇぇぇ!!!あいつのためなら200円なんて安いもんです。運『このバスは~23系統…』アナウンスなんかどーでもいいです!さっさとドアを開けて乗せろです!~~~~~ア『ご乗車、ありがとうございました。終点──』バスに乗ったらあっという間でしたね。さっさと200円払って降りるです。──もぉ…バス停から駅まで中途半端に距離があるんですから…再開発してでもこれですか。まったく──ったく!あの赤信号、さっさと青に変わりやがれです!あぁもう…何で券売機にこんなに人が並んでやがるですか。…イライラするですぅ。ピンポン!翠「なっ…」ガチャン!自『切符をお入れ下さい』あっ…入れ忘れてたです。焦り過ぎると却って遅くなるですね…。~~~~~…ホームの上も人でいっぱいです…。さてさて、ジュンは…と。──あ。あんなところにオドオドしてる奴が…同い年くらいの背の高さに見えますね…。……。はぁぁ…あれは完璧にジュンですぅ。あの眼鏡の形といい服装といい…。…いやぁ、分かりやすい野郎ですぅ。だから無理するなって言ったですのに。しかも、どっからどう見ても挙動不審じゃねぇですかw──なんて、ぼーっと見てる場合じゃねぇです!翠「…ジュン?」ちょっと呼んでみて振り向けば…。ジ「は…?」──やっぱりジュンです!ガシッ!ジ「…!」翠「ちょっとこっち来いです」人のいないホームの端まで何としてでも連れていくです。こういう所で怒鳴りつけるつもりはないですが…念のため…ジ「…何だよ…まさかさっきのをずっと見てたのかよ」翠「ずっとではないですけど、やっぱりお前が1人で出歩くのは無理…」ジ「無理じゃないよ」翠「震えてたくせに!」ホームの端に人がいないからって急に元気になりやがってぇ…ジ「話はそれだけかよ。じゃあな」パシーン!!翠「どーしても1人で行くってなら…意地でも連れて帰るです!」あぁ…無意識のうちに手を出してしまったです…ここには人がいないって言ったって、向こうからは不特定多数の人間が見ているかもしれないですのに…ジ「じゃあ僕は翠星石から逃げるだけだ」ガシッ…翠「そうはさせるかです」ふん。お前の右手をゲットです。こうなったら、もう後戻りは出来ないです。そこまで街へ行く意思が強固なものなら、2人で行くって言うまで放すもんですか──ジ「放せ…放せったら」翠「イヤです!」ギュウウウウウ…ジ「痛い痛い!!…何なんだよその握力…」翠「ふっふっふ…水銀燈を姉にもつ翠星石をナメてもらっては困るです」ジ「だったら少しぐらい手加減しろ!」──本当は私にもよく判らないんですが…。ジュンが弱くなったのか、それとも翠星石が強くなったのか。どうなんですかね。でも…そんな事よりもっと大事なことがあるです。翠「さ、行きたければ翠星石を…」ジ「…」翠「…」乱暴なやり方になってスマンです…さぁ…お前の口から言ってくれです。「連れて行く」と。ジ「…乗り越えろ!か。よし任せろ」翠「はぁ?」ジ「──しかしお前強いなぁ。なっかなか解けないや…」翠「…」…ブチッジ「よいしょっ…ホントほどけないな…」…ピキッ翠「…」ジ「くそっ…」──こんちくしょお!!翠「──お前を…連れて行くです」ジ「あ?」…電車が来たです。ちょうどいいタイミングですね。翠「乗るですよ──」ジ「…」こいつ…次に降りたらボッコボコに叩き潰して────あ、ありゃ?何かラッキーなことに、この電車、ホームの端まで来やがったです。しかも…めちゃくちゃ空いてるですね。ジ「あ、これなら座れる…」席に座ってる客も2、3人しかいねぇです…凄まじいぐらいの空き具合です!翠「おぉ!ちょうどそこの2人席が空いてるです♪さっさと乗るですよ♪」ジ「あれ?何か急に…」ドアが開いたです♪何か幸先良いスタートが切れそうです~翠「つべこべ言わずに、ほらほらぁ…」ジ「てかお前いつまで僕の手を握ってんだよ」翠「お前がホームと電車の隙間から落ちないようにするためです♪」──ジュンと一緒に行きたいからです♪だから…ジ「誰が落ちるか!w」翠「お前のことだから何が起こるか判らんですからね~ …ずっと前から変わらんです」ほんのちょっとだけ不安なだけなんですが…。ジ「お前こそ、昔っから寂しがりやのくせに… だからこうやって繋いでんだろ?…幼稚園じゃあるまいし」翠「──他にも理由があるですよ?」そうです。他にもちゃんと訳があって…。ジ「…」別に謝らなくてもいいですから、せめて──翠「…」お願いです…。ジ「……分かったよ。逃げないから──」
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