1.ワイルド・バンチ!
随分昔な気もするし、ごく最近の気もする。突然の世界規模の気象異常。そこから始まる食糧危機、インフレ、世界恐慌。そして…人類は何も学んではいなかった。世界は…等しく戦争の炎に包まれた…。荒れ果てた世界。異常気象の名残で降水量も少なく、不毛の大地が広がり…世界は、果てしない荒野へと姿を変えた。皮肉にもそれは、人類の悲願であった国家という壁を壊した。国家という枠組みが失われた世界で、新しいルールが自然とできた。『強いものこそが、正しい』そんな無法の荒野で、弱者に生きるすべは少なかった息を潜めてひっそりと生きるか、誇りを捨て、矜持を失い、奴隷のように生きるか。しかし、中には、第三の選択をする者がいた。彼らは力を得る為、銃を手にした。ある者はその力で人々から糧を奪い、またある者はそれを倒し謝礼を得る。報酬次第で、どちらにも転がる無法者。人々は、気の赴くまま自由に生きるそんな彼らを…遥か昔…荒野を、運命を切り開いた者達の姿と重ねて…こう呼んだ…… 1. ワイルド・バンチ!どこまでも広がる荒野…。果てしない荒地。乾ききった大地。風が、誰のものとも知れない墓標の上を、そっと撫ぜた。寂れた町の、寂れた酒場の、錆びたドアが、風に吹かれてキィキィと音を立てる。暫くして…サングラスをした銀髪の女性が、煙草を咥えてドアを開いた。小汚い町の、小汚い酒場の、小汚い男達がその女に視線を向ける。サングラスで顔は隠れているが…間違いなく上玉だ。そんな男達の視線を無視して、女はカウンターまで進む。そして、奥の棚にある酒のボトルを指差した。バーテンが無言で小さなグラスに注いだ酒を女の前に置く。女がグラスに手を伸ばした瞬間、肩に手が置かれた。振り返ると、薄汚れた大柄な男が下卑た笑いを浮かべながら立っていた。「よお、ねえちゃん。一人でこんな所に来るなんて、危ないぜえ?」テーブルに座った男達も、ニヤニヤと銀髪の女を眺めている。 何を期待しているのか――分かりすぎる位よく分かる視線を浴びながら女はため息をつき…肩に置かれた男の手に自分の手を重ね…一気に捻り上げた。
男の叫び声を合図に、テーブルに座っていた男達が立ち上がる。ある者は射すような視線を女に向け…ある者は、腰に下げた銃に手を伸ばす。
そんな光景を無視し、女は片手で男の腕を捻り挙げたまま、もう片方の手でサングラスを外した。そして、ニヤリと笑い、囁くように告げる。「ごめんなさいねぇ…おねぇさん、これからお仕事があるのよぉ…。ナンパなら、他所を当たってもらえなぁい…?」そして、乱暴に男を突き飛ばした。
男は少しよろめきながら立ち上がり、怒りに拳を固め、女の顔を見て…「クソ…テメェ…同業者かよ…」少しばつの悪い顔をした。「チッ…。そうならそう言いやがれよ…」ブツブツ言いながら、仲間のいるテーブルに戻っていった。
いつの間にか周囲の視線から好色な笑みは失われ、男がテーブルに戻る頃には女に注意を払う者は誰も居なくなった。女は再び飲みかけのグラスに手を伸ばした。
店の中でも安くない酒を何杯か空け、灰皿の中で吸殻が小さな山を作った頃…再び小さく軋む音と共にドアが開き、一人の女性が入ってきた。
酒場の男達は新しい客を一瞥し…すぐに、興味無さそうに自分達の世界に戻っていった。女はツカツカとカウンターに――銀髪の女の横に陣取り、バーテンにチラリと視線を投げかけた。バーテンは意図を察し、まるで何も見てないように、黙々と自分の仕事を続けた。それを確認すると、女は意を決したように、銀髪に声をかける。「私は、この町の代表をしている佐原といいます。水銀燈さん…ですね…」そう言うと佐原は、カウンターの上に金貨を数枚置いた。「この町の『技術屋(マエストロ)』が先日、盗賊団に拉致されました…」銀髪の女―水銀燈は、金貨を指先で弄びながら答える。「あらぁ?それは大変ねぇ…。『技術屋』が居ないと、銃の手入れもろくに出来ないわねぇ…。自衛の手段が無くなっちゃうじゃなぁい…。危ないわねぇ…」「…はい。そこで…腕が立つと噂の貴女達に、『技術屋』の奪還を依頼したいのです…。報酬は、$8000。その金貨は前金です」「ふぅん…」水銀燈はそっけなく答える。そして…金貨を一枚、指で弾き、バーテンに渡した。「で…その『技術屋』の特徴、教えてくれるかしらぁ?」さらわれた『技術屋』の名前は、草笛みつ。独身。かなり腕は良いらしく、その腕を狙われての事らしい。それだけの事を告げた後、佐原は申し訳無さそうに付け足した。「あと…草笛みつさんの姪が…彼女を助けると言って一人で飛び出してしまって…。もし良ければ、そちらの保護もお願いしたいのですが…」 水銀燈は、新しく運ばれてきた酒を飲み、答える。「奪還だけなんて地味な事、めんどくさいわぁ。$8500。それで、当分の間悪さ出来ないように賊もとっちめてあげるわぁ。その姪っ子さんは、見つけたらサービスで連れて帰ってあげる」そう言い、空になったグラスを置いた。ポケットの中に、金貨の心地いい重みを感じながら、水銀燈は酒場を後にした。酒場の横で、3人の少女が水銀燈を出迎えた。テンガロンハットに巨大な鋏をいう、独特な格好の少女。白衣に身を包んみ、緑色の救急箱を持ったオッドアイの少女。片目に薔薇の模様をあしらった眼帯をつけた少女。水銀燈は前金として受け取った金貨を、彼女達に見せる。「さぁて、皆ぁ。お仕事よぉ」―※―※―※―※― 4人がそれぞれ馬を駆り、荒野をひた走る。そして…地平線の彼方から、一軒の廃屋が見えてきた。眼帯の少女が馬を止め、遠くに見える廃墟をじっと見つめる。それに気付いた3人も、馬を止めて廃墟に視線を向ける。が…距離が遠すぎて、何も見えない…。「…見張りがいる…二人…」眼帯の少女はそう呟くと馬から降り、ライフルを構えて地面にうつ伏せになる。G3SG ―最も、彼女はそんな名前など知らないが― 長年愛用した相棒の引き金に指をかけた。二発の乾いた銃声だけが、短く響いた。「相変わらず大した腕ねぇ…薔薇水晶」水銀燈が関心したようにそう呟く。命中したかは窺えないが、それ以上銃声が聞こえないという事は…そういう事なのだろう。薔薇水晶は服についた砂を軽く叩きながら立ち上がった。「…銀ちゃん…惚れたら危険だよ…?」照れたように、上目遣いで薔薇水晶が答えた。「変な事言ってないで…行くわよぉ」水銀燈は…少し苦笑いをしてから、再び馬を走らせた。馬を岩陰に留め、身を潜めながら廃屋に近づく。玄関の前の門に…見張り役だった二人が倒れていた。恐らく彼らは、何が起こったのか理解する時間も無かったのだろう。銃は腰に下がったまま、指一本かかってはいなかった。 「うぅ…薔薇水晶が敵じゃあなくって良かったですぅ…」白衣の少女は、わざとらしく怯えた口調で呟き、テンガロンハットの少女にすがりついた。「大丈夫だよ。君は僕がちゃんと守るから」そう言い、白衣の少女の髪を優しく撫でてなだめる。髪を撫でられながら白衣の少女は…「計画通り!」とニンマリする…誰にも見られないように。水銀燈は、いつもの光景…ベッタリとくっ付いてる二人に生暖かい視線を送りながら「屋内ではライフルなんて使いにくいでしょうし、薔薇水晶はここ居なさぁい」薔薇水晶を見張りに残し、二人の少女と共に廃墟の中に消えていった。―※―※―※―※―「外からじゃあ判らなかったけど、地下にもフロアが在るみたいねぇ…」水銀燈が小声で伝える。暫くの沈黙、そして…水銀燈が前触れも無く拳を突き出した。テンガロンハットの少女も同時に手を出す。『グー』と『チョキ』…ワンテンポ遅れて、白衣の少女も手を出した。「後出しだよ」「後出しねぇ」「し、しょーがないですぅ!そんな急に反応出来る訳無いですぅ!もう一回…」「じゃ、ここは宜しくねぇ」手をヒラヒラさせながら、水銀燈が地下へと続く階段を降りていく。「無茶したら駄目だよ、翠星石」テンガロンハットはそう言うと、階段を登っていった。 「うぅ~…人の話を最後まで聞きやがれですぅ!」悔しそうに腕をブンブンと振るが…誰も見てない事に気付き…仕方なくそのフロアの奥へと足を向ける事にした。盗賊のアジトにされているだけの事はあり、結構な広さを誇っている。…最も、片付けなどされていないせいで、住み心地は悪そうだ。そんな風に考えながら翠星石が進んでいると、一つの部屋から声が漏れ聞こえてきた。「泣いたり笑ったり出来なくしてやる!スリーカードだ!」「フウーハハハ!こっちはフラッシュだぜ!」ドアの隙間から翠星石が部屋を覗くと、数名の盗賊がポーカー勝負に興じていた。余程見張りの連中を信用しているのか、危機感の少ないアホ頭か…はたまた両方か。(…両方ですぅ)心の中でそう呟き、緑の箱からそっと小瓶を出す。再び部屋の中をそっと覗き…笑ってる男達の―その中心のテーブル目掛けて、小瓶を投げた。パリン、という小気味の良い音がする。「なんだあ!?」男達の声が聞こえる。ドサッ、と倒れる音が続いて聞こえる。…聞こえてくる音は、もう無かった。「翠星石特製の眠り薬『スィドリーム』で、スイートなドリームでも見るがいい!ですぅ」ニヤリと、悪役のような笑顔を浮かべ、実に楽しそうにそう言った。―※―※―※―※―「なあ、今何か聞こえなかったか?」「ん?そおか?」二人の盗賊は、二階の廊下でそんな会話をしてた。「いや、確かに何か聞こえた気がしたんだが…」「はっ!天下の『ベジータ一家』に喧嘩売る奴なんて居ねえよ。第一、見張りの連中だっているんだしよ」「それもそうだな」男がそう言おうとした時…不意に、天井から何かが背後に落ちた。「なんだ?」そう思い、振り向こうとするが…振り向けない…。体がまるで…まるで蛇に睨まれた蛙というのか…全く動かない。(痺れ薬!?)最初そう思ったが、未だ自力で立ってる点から、そうではないらしい。いつの間にか、全身に痙攣したかのような震えが走っている。一体、何が起こっているのか…何をされたのか…辛うじて眼球だけは動かせる…横に立つ相棒に視線を送る…そして…相棒の姿を見たとき、何が起こったのか、感覚として理解できた。震える体。止まらない冷や汗。背後から近づく、謎の気配。『恐怖』が全身を支配してる。それを理解した時…頭で理解した瞬間、彼はさらに恐怖した。(一体何が…何なんだ…)叫びたかった。恥も外聞も無く、助けを呼びたかった。しかし、声を出すどころか、呼吸さえ引き攣ったものとなり、満足に出来ない。背後から近づく、圧倒的な存在。せめて気絶できれば…。だが、彼の荒野で鍛えられた精神力は、それを許してはくれなかった。震えながら、ただ立ちすくむしかない二人のすぐ後ろで、謎の存在は足を止めた。そして…男は後悔する。なぜ…そんな事をしてしまったのか…蛇に飲まれる蛙のように、虚ろな目で空を眺めていた方がずっと良かった…。眼球だけを動かし、自分達の背後に立った存在を見た。巨大な…魂ごと粉砕するような、巨大な鋏。そして…帽子から覗く、血のように赤い片目。ついに恐怖が限界を超えた。―※―※―※―※―『ギャァァァァ!!』館全体に響く、断末魔。「あらぁ…蒼星石ったら、また派手にやったわねぇ…」地下の廊下を歩きながら、水銀燈は天気の話でもするように、にべも無く呟く。「何だ!?」「どうした!?」そんな事を叫びながら、横の部屋から男が一人飛び出し―一瞬で伸びてきた腕に捕まった。水銀燈は片腕で男の首を絞めながら、もう片手に持った拳銃で男の頬をゴリゴリと小突く。そして―男の耳にフゥ、と息を吐きかけながら、囁くように言う。「ねぇ…?『技術屋』がどこに居るのか教えてもらえなぁい…?」「あ…ああ、わかった…」男はそう答えながら…腰に下げた拳銃に手を伸ばす。しかし、その指が拳銃に触れるより早く…水銀燈は男の頚動脈をキュっと絞めた。男の意識は廊下にゴロンと転がる自分自身を認識する事も無く途切れた。「抵抗するなんて、残念だわぁ…」何の感慨も受けてないような声でそう言うと、水銀燈は散歩するような軽い足取りで再び廊下を歩いていった。暫く進むと…遠くから足音か聞こえた。せわしなくパタパタと走っているが…それでも足音を殺そうとしているのが窺える。(人数は…一人。こっちに気付いて迎撃の準備してるのかしらねぇ…)廊下の角に身を潜め、足音が近づいてくるのを待つ。そして…足音の主が廊下を曲がると同時に、先程と同じ要領で首を捉える。再び囁くように、質問する。「ちょっと聞きたいんだけど、教えてもらえるぅ?おデコの素敵なお譲ちゃん…」―※―※―※―※―「思ったより人数も居ないし…大した事ないね…」蒼星石は注意深く周囲を探りながら、フロアを探索して回る。途中発見した盗賊は、全て夢の世界に案内してあげた。そして、一番奥にある派手な装飾をされた大きなドアを(変な趣味の人がいるみたいだね)と考えながらテンガロンハットを被り直し、開けた。 十分に警戒はしていた。油断など、決してしてはいない。にも関わらず…部屋に入った瞬間、閃光かと見紛う速さで白刃が走り、帽子が飛ばされた。とっさに後ろに飛び退いたおかげで、首はしっかりとあるべき場所に留まっている。が…(強い…)蒼星石は対峙した男の強さをその肌でひしひしと感じた。男も、完全に不意を突いた筈の一撃をかわされ、目の前の少女の強さ理解した。盗賊稼業に身をやつして以来…いや、今まで生きてきた中でも、こんな事は無かった。闘争本能に火がつくのが分かる。今からの戦いを想像すると、胸が高鳴る。さらに…その相手は美しい少女。男はこの出会いに、震えるほどの幸せを感じた。「貴様、このベジータ様の女にならんか?今なら寛大な心で許してやらんことも無いぞ」男は剣を構えたままニヤリと告げた。蒼星石は何も答えず、巨大な鋏を構えなおす。「クックック…良いぞ…ますます良い!」ベジータはそう叫ぶと同時に剣を大きく振りかぶり、ダンッと地面を蹴った。振り下ろされた剣を、蒼星石は鋏で受ける―が、その威力は止めきることが出来ずに、そのまま後方に吹き飛ばされた。壁を蹴り体勢を立て直し、そのままベジータに切りかかる。ベジータはその一撃を片手に握った剣で止める。互いに一歩飛び退き、間合いを取る。「女…名前ぐらい聞いておいてやるぞ」「…蒼星石」互いにジリジリと間合いを詰める。ベジータが両手で剣を構え、上段から袈裟切りに切りかかる。蒼星石は鋏の留め金を外し、二刀流に構える。「バカがッ!片手では受け止めることすら出来んぞ!!」ベジータの豪刃が振り下ろされる―しかしそれは、蒼星石の足元の地面を抉るだけだった。「受け止める気は、無いよ…。そして…」蒼星石は片手の鋏を斜めにして―ベジータの一撃を逸らし…「チェックメイトだよ」もう片手の鋏がベジータの脇腹にめり込んだ。―※―※―※―※―捕まえた素敵なおデコの少女に楽しい尋問タイム。というか、勝手に喋りだした。曰く、金糸雀という名前。曰く、みっちゃんを助けに来た。曰く、ダンボールに隠れてここに潜入した。曰く、怪しい者じゃあない。曰く、お願いだから食べないで。「…とりあえず…お願いだから落ち着いてぇ…」… 「そういう事なら、カナも手伝うかしら!まだ探してないのはこっちの方かしら!きっとこっちにみっちゃんが捕まってるかしら!」意気揚々と先陣を切って進む金糸雀の首根っこを掴む。「むぎゅぅ!?」みたいな声が聞こえた気がするが、気にしない。「はいはぁい…危ないから後ろに引っ込んでてぇ…」金糸雀が後ろでちょこまかと注意力を奪っていくが…それでも精一杯警戒しながら、廊下を進む。幾つかの廊下を曲がり…幾つかの部屋を調べ…廊下の角から、手鏡で先の様子を窺う…鏡には―女性を人質に抱えながら、銃を構える盗賊の姿が映った。男は廊下の先から鏡が出たのを見て取ると、手にした銃を乱射し、それが水銀燈の小さな手鏡をかすめる。「レディーにとって鏡は大事な物なのよぉ…危ないわねぇ…」呆れたように呟く。「この女がどうなってもいいのか」とか「武器を捨てて出て来い」とか聞こえるが、無視。小悪党の恫喝なんて、気にしない。しかし、金糸雀は青い顔で震えている。「こ…こうなったら、カナが出て行って油断させる作戦しかないかしら…!」小さな体から、はちきれんばかりの勇気を振り絞った金糸雀の一言を、額にチョップを入れて却下。もう一度、鏡を使って男の立ってる位置。人質の位置を確認する。そして…ゆっくり、慎重に狙いをつけて…壁を撃った。 直後、男の短い叫び声と、地面に倒れる音が聞こえた。跳弾。ビリヤードでワンクッション置くように、壁で弾丸を跳ねさせての攻撃。曲撃ち。という事になるが、水銀燈は見世物や芸としてではなく、純粋に攻撃の為だけに習得した。静寂が広がったのを確認すると、水銀燈は静かに煙草に火をつけた。―※―※―※―※―感動の再開を果たした金糸雀と草笛みつの二人を連れて、盗賊のアジトから出た所で…ちょうど仕事を終えた蒼星石と出会った。「あらぁ?あなたにしては時間かかったんじゃなぁい?」「ちょっとしつこいのがいたからね」蒼星石がニコリと答える。何だかんだ言った所で、彼女がここに居る。という事は、作戦は成功した、という事だろう。「さぁて…」帰りましょうか。その言葉は、背後から響いた大声に遮られた。「待てえ!!貴様、このベジータ様のプロポーズを無視して…ただで済むと思うな!!」振り向くと…筋肉質な男が、ロケットランチャーらしき物を担いですごんでいる。 「…蒼星石…あなた、あんなのにプロポーズされたわけぇ…?」「僕が?ふふ、まさか。彼、変な物でも食べたんだよきっと」余裕の表情を崩さない二人に、ベジータはキレた。「クソッタレ…コケにしやがって…。 食らえ! ファイナルフラーーーッシュ!!」叫びと共に引き金を――引くより早く、ロケットランチャーがその場で爆発した。アフロになった男を無視し、水銀燈と蒼星石が振り返れば――顔を真っ赤にして怒った翠星石と、一筋の煙を上げるライフルを構えた薔薇水晶。「大丈夫ですか!?何か…その…変な事されなかったですか!?」一瞬ですがるような目つきになった翠星石を蒼星石がなだめる。「ありがとう、薔薇水晶。助かったわぁ」水銀燈が薔薇水晶の頭をガシガシと撫でる。「…へへ…銀ちゃんに褒められた…」「さぁて、帰りましょうか」そう言い、咥えていた煙草を指先で弾き飛ばした。 ―after story―「それにしても、カナが助けに来てくれなかったら、大変だったわ」帰り道、金糸雀を抱き上げながら、草笛みつがテンション高く喋る。「そうかしら!カナ頑張ったかしら!」「ほんと、あのままだったら今頃…儚く美しい草笛みつは人買いに売り飛ばされ…」「みっちゃんは『技術屋』だから捕まったかしら」「そしてどこか成金オヤジに買い取られ…あんな事やこんな事を…」「…みっちゃん?」「でも、いつしか素敵な殿方に見初められ…『ああ!そんな、駄目です!』『僕には君が必要なんだ!』…」「…」「『ハネムーンは何所に行こうか』『貴方と一緒なら、どこでも…』…ふふ…ふふふふふふ…」「…」夕日が眩しかった。西日が射す中で金糸雀は…そっと涙を拭った。
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