ずっと傍らに…激闘編 第十章~ジュンside~
──今日は朝、昼、晩と病院食がクソ不味い。日を増すごとに不味くなってきてる気がする。まぁ、だんだん健康を取り戻してる証拠なんだろうけど、誰か差し入れ持ってきてくれないかなぁ……そうそう、こういう時にねーちゃんなんだよなぁ。ねーちゃん遅せぇぇぇ…もういい。寝よう…~~~~~──ん…何だろう…地下街だ…。物凄い人混みの中にいるけど、不思議なことに怖くも何とも無い。コートを着た誰かと手を繋いで歩いてる。──ここはケーキ屋か。明らかに欧州を思わせる店の名前だな…その誰かがチョコケーキを注文したみたいだ。この店の飾りつけは、さながらクリスマスのようだ。…うはぁ…それにしてもあのケーキ、メチャクチャ美味そう…w──店を出て、暫く地下街を歩き、地上に上がる。街の明かりで明るくなった夜空に星が見える。駅に向かう道々は人で混雑していた。僕は“誰か”に手を引っ張られながら、駅へ向かう人の流れに乗った。──駅のホームだ。電車が入ってきた。席が空いてるから座ったら次々と客が乗ってくる。満員状態で出発。その“誰か”は隣に座ったが、未だに顔を見せてくれない。──あっ…この駅…見覚えがある…最寄り駅だ。その“誰か”に手を引っ張られつつ降りた。同じ電車からはこの駅で一気に客が降り、空席が目立つ状態で出発していった。──駅からの帰り道。2人きりになったところで、手を繋いでるその誰かが、ようやくこちらに振り向いてくれた。銀「ねぇ、家まで送ってってぇ」えぇぇぇっぇぇぇーーーーー!!??そんな馬鹿な!!ジ「…ふw しょうがないなぁ──」──とか言って、水銀燈を背中に乗せる。勿論、僕はケーキを持ったままだ。…う~ん。それにしても何だろう。この展開。僕は何か狂ってるのかもしれない…銀「ジュン登りぃ~」水銀燈のほっぺが僕のほっぺとくっつく。──って、雛苺とかばらしーとか翠星石の間違いじゃないのか?あぁ僕は病気かもしれない……いや、確かにどこかで病気だった気がする。ジ「水銀燈…重いよ…」相手が水銀燈だから言える、率直な(冗談交じりの)感想。銀「うるさいわねぇ」そしてお約束のように、少し怒った水銀燈が僕をぎゅ~っと締め上げ…苦しい…ジ「ごめんなさいごめんなさい…」銀「あぁん?聞こえなぁ~い」ジ「ご!め!ん!な!さ!い!!」やっぱり水銀燈だ。ラクロスで鍛えられしその馬鹿力。参りました──銀「もぉ~…しょうがないわねぇ…」しかし、変な気持ちだ…。僕と同じくらいの背の高さの水銀燈。そして僕。なおかつ、過去にも水銀燈を背中に乗せたことがあるかのような、この感覚。──家についた。いや、水銀燈たちの家についた。ピンポーン紅『はい?』ジ「ジュンと水銀燈なんだけど、早く中に入れさせて~」ガチャ…雛「ジュ~ン~!すいぎんと~!早く来てなの~!」玄関から雛苺の声がする。雛苺もずいぶん背が高くなってる。幼稚園児か小学校1年ぐらい…の身長はある。銀「ただいまぁ」ジ「ただいまー」──中に入り、リビングのドアを開けると更にびっくり!翠星石がキッチンで料理をしていた!お前、料理下手くそなんじゃなかったのか?その横で蒼星石が翠星石の手伝いをしている。…しかも僕はその2人を見下ろしている。2人の身長が低くなったのか、それとも僕が高くなったのか…蒼「おかえり~」翠「おかえりですぅ~…2人とも遅いですよぉ?」ジ「ごめんごめん」しかし何だホントに…。翠星石のリズミカルな包丁捌きを見てると「ウソだ!」と言いたくなる。ますます変な予感がしてくる…とりあえず手を洗い、嗽をしてから炬燵に入って横になる僕。…と、既に入っていた、ばらしー、きらきー、真紅、雛苺、そして金糸雀。相変わらずデカイ炬燵をしてやがる。──水銀燈は翠星石たちの手伝いを始めた。またしても呆気にとられる。さて、この炬燵。一辺につき2、3人は入れる。すぐにきらきーが僕の隣に来た。相変わらず可愛い奴だ……と思ったらその瞬間、勝手に炬燵が逃げていった!僕ときらきーは炬燵の外へ放り出された格好になった。また“かの4人衆”の仕業かと思って向こうでばらしーの笑い声が聞こえたので、寝転んだままジ「こらぁ~…ばらしー、炬燵引っ張るなぁ…」って咎めたら…薔「今のはカナのせいだし~フヒヒ」金「違うわ!さっきのはばらしーが仕掛けたかしら!」──言い争いが始まった。手伝いを中断してリビングにやってくる水銀燈。気にせず料理を続ける翠星石。その手伝いを続行する蒼星石。不機嫌そうに本を抱えてリビングから立ち去る真紅。横になりながらばらしーと言い争う金糸雀。それが怖いのか、僕にしがみつくきらきー。その金糸雀に本気で言い争ってるばらしー。きらきーを見て僕の所へ避難してきた雛苺。そしてテレビからは気の抜ける声が聞こえてきた──テ『…ハ-イレハ-イレハイレハ-イレホー、ホッホー!!…』~~~~~こうなったのは僕のせいだよなぁ…──ふと、そう思ったときに、僕は目が覚めた。ジ「…?」さっきのは夢だったのか?…いや、夢にしてはかなり細かいところまで的確に覚えていられてるのだが…ジ「…」机がある。僕はベッドの上。向こうにも…ベッド?そして何故か目の前に…水銀燈…?ジ「…わっ!!」巴「こんばんは」ジ「…?」暫くして、やっと夢から覚めたことに気づいた。まだ春だ。ゴールデンウィークにも入ってない4月下旬くらいだ。そして、ここが病院で、誰がそこにいるのか…柏葉だ。ジ「ごめん…柏葉か」巴「──相変わらず、引き篭もり属性は直ってないのね」ジ「計ったな?」巴「ふふ…」ジ「それに、もっと気安く挨拶してくれたらいいのに… 8年ぐらい付き合いあるのに未だに『こんばんは』かよw」巴「『こんばんは』じゃ悪い?」ずっと微笑んでいる柏葉。何か急に恥ずかしくなってきたから、急いで話題を転換させた。ジ「まぁ、僕も明日退院出来るかもしれないし、ここの病院ともやっとおさらばだ」巴「えっ?そうなんだ」ジ「おう…」それでも微笑む柏葉。一瞬ドキッとした。ジ「…」巴「ねぇ」ジ「…」何だろう…この感じ。よく分からないけど、今なら外に出ても何も怖くない気がする。巴「…ねぇ!」ジ「あっ…」巴「ナニぼーっとしてんのよ」ジ「ごめん、ちょっと考え事」いやホント分からないや…何でだろう?巴「たっ…退院すれば、あとは…あの…リハビリが待ってるね」リハビリ…?ジ「そんなこと言うなよ!w」巴「でも私たちは出来るだけのことをしてあげるから、あの…心配しないで── あいつらと戦って、桜田君の引き篭もりを直してあげるから…」さっきまでの自信が一気に失せた。巴「あ、そうそう」ジ「何?」少し不安げな顔になった柏葉。僕はとてつもなく巨大な…例えようの無い懼れを感じた。訳もわからないままに──巴「やっぱり何でもない」ジ「何だよそれ」ちょっと安心。巴「桜田君が学校に来るようになったら話すw」ジ「柏葉も意地悪だなぁw…あ、そろそろ8時になるよ」そう。時計を見るとそろそろ夜8時になろうとしていた。巴「ねぇ桜田君」ジ「?」巴「明日、絶対退院してよ?」ジ「当たり前だ」何故か今は自信をもって断言できる。でも口だけになりそうな気もしないわけではない。巴「その言葉が聞けてよかった。じゃあまた明日ね」ジ「来るのか?」巴「えぇ。迎えにね」ジ「そか…わかった。じゃおやすみ~」巴「おやすみなさい──」柏葉は帰っていった。病室には、何かイマイチ消化し切れない変な感覚だけが残った。~~~~~午後9時。消灯!!──おい、こら!ねーちゃん結局来なかったしw何してんだよw留守電入れたのに聞いてくれなかったのかよwあぁ。それに、何で柏葉もこんなギリギリになって来たんだろう。…。あ、そうか…柏葉も部活だったのかな…。剣道部にしては今日は珍しく長い部活だったんだろうか…?…でも普段からちょっとおせっかいの入った水銀燈も来ないとなると、ラクロス部も長引いたんだろなぁ。また「地獄の“1日練習”だった」とか言うんじゃないだろうなぁ。今頃留守電聞いてるかなぁ。あっ…水銀燈は昨日の晩に色々あって怒らせてしまったんだな…そりゃ来ないわけだ…いや…でも…うわぁ…明日もし退院したら合わす顔がないや…ま、いっか。明日は朝5時に起きて考えよう…おやすみ…。
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