二人は将兵
~出会い~私、柏葉巴。普通の高校一年生。どこにでもいる普通の女の子、のハズなんだけど…「・・・」お昼休み、私はいつも一人でいる。ううん、無意味な自己擁護はやめよう。私は“一日中”一人でいる。つまり、友達がいない。「・・・はぁ」別に一人がいいというワケではなく、私だって人並みには友達が欲しい。けれど、私はどうも無意識のうちに人に近寄りがたいオーラを発しているらしい。「あ、あの…柏葉さん?もしよかったら…一緒にお昼…」「え?(ギロリ)」「(ヒッ…!)ご、ごめんなさーい!!」ダッ「あ…」こうして、今日も一人の学園生活を送るのだった。あと、入学初日の自己紹介がマズかった。何か面白い事を言おうと考え抜いた結果に私が発した言葉は、『柏葉巴です…。趣味は、野鳩を竹刀で叩き落とす事です。今朝は三羽落として来ました』『・・・』こうして、その日私に話しかける者はいなくなった。 また今日も一人のお昼。最近は慣れてきてはいるけれど…「ねーねー!それ美味しそうだね~!」「あ、じゃあそのコロッケと交換しよ?」「わ~い!ハンバーグゲット~♪」「・・・」ああいう会話を聞くと、どうにも淋しくなってしまう。いつか私も友達とおかず交換してみたい…そんな考えにふけっていた時、彼女はやってきたのだ。「柏葉さん!一緒にご飯食べるの~♪」「は?(ギロリ)」しまった、と思った時には遅かった。あれほど愛想よく接することを誓ったのに…くっ、油断していた…!「ふんふんふ~ん♪」「(あ、あれ…?)」「あ、柏葉さんの荷物の美味しそうなの!コレと交換してほしいの!」「あ…うん…」「ありがとうなの~♪」「・・・」私は泣いた。 ~第一印象~《巴の日記》最初は夢か幻か、もしくはなにかのドッキリか…なんて思ってしまった自分を今はとても反省している。彼女の名前は『雛苺』と聞いた。なんて可愛い名前だろう…そして彼女はなんて可愛いのだろう…!くるくるでふわふわの金髪…大きなリボン…愛くるしい顔立ち…こんな子が私に話しかけてくれるなんて!!! 世界はまだ私を見捨ててはいなかったんだ…!私も普通の学園生活を送ってもいいんだ…!今日はお昼を一緒に食べただけだけれど、いつか…いつか本当の友達になれれば…《雛苺の日記》今日、対象に接触。昼食を共にし会話をした。睨んだ通り、友人との交友に飢えていたらしく上手く近すくことに成功した。彼女は素晴らしい…この一言に尽きる。この出会いを導いた私の力に感謝するというものだ。あとは、慎重にかつ迅速に手を打っていくだけか…~会話~「巴さん!隣りいい?」「あ、雛さん…」こちらが答える前に『んしょ!』と言って座ってしまう。ああ、どうして彼女はいちいち可愛いのか…見てるだけでこちらが幸せになってしまう…。ガヤガヤ…ここは体育館。集会のために一学年が集まっている。式までまだ少し時間があるので周りの人達は友達と雑談を…はっ!「・・・」「・・・」い、いけない!こうして隣に来てくれたのだから、何か会話をしなくては!でも、友達のいなかった私にどんな会話ができると言うの?私が持っている会話のネタと言えば…くっ!ええい!当たって砕けろだ! 「雛さんは…直刄と乱れ刄(刀の模様の種類)どっちが好き…?」「ヒナは真っすぐな直刄が好きなのよ♪」「うん、私も…」会話が、初めて私と友達との会話が成立した瞬間だった…~好きなもの~最近、ますます彼女と一緒にいる時間が増えてきた。はっきり言って幸せだ。今までの生活を思いだすと…ティッシュ一箱ではとても足りない。「…でね?…なの!」「うん…うん…」今ではこの通り、会話もスムーズにこなせるようになっていた。よし!今日は私から話しかけてみよう…「ねぇ雛ちゃん。好きな食べものって何?」「うい…?」雛母『ねぇ苺?今日の夕飯は何が食べたい?』雛苺『一万円以下のモノなら食すに値せぬ。食べさせたいのならフォアグラのテリーヌに白トリュフを乗せて持ってくるがいい』「…うにゅ~なの!あ、苺大福の事なのよ?」「そ、そうなんだ…」ああ可愛い!可愛過ぎる…!「な、なら…将来の夢とかは…?」「夢なの…?」 雛父『苺は将来何になりたいんだい?』雛苺『神。もしくはそれと同等の力を持つ存在か』「…お姫様なの!」「はぅうっ…!」たとえ逮捕されたとしても、いつか彼女に抱きつく覚悟が今できた。~それぞれの想い~《巴のキモチ》どうしてだろう…気が付くと雛苺の事を考えてしまう。そして胸がドキドキする…そして雛苺が笑顔で他の人と話しているのを見ると、少し胸が痛くなる…このキモチは何…?こんなキモチ、生まれて初めて経験する…もっと雛苺を知りたい…もっと雛苺といたい…もっと雛苺と話したい…もっと…もっと…《雛苺のキモチ》ああ、なんという逸材。なんという性能か!あの鋭い眼光を見た時にざわめくモノを感じたが…やはり予想通り…いや、予想以上だ!あの強靭な足腰…マットの運び台を軽々と押し進めるパワー…周りの状況を瞬時に察する洞察力…やくざも恐れぬ度胸…そして見る者全てをひざまずかせるあの眼光!これほどの戦力がついに我が手に…!!! ~相談~《巴と先生》「あ、あのみつ先生!」「ん?何かな柏葉さん」ある日、いてもたってもいられなくなった私は担任に相談に乗ってもらうことにした。「その…相談したいことが…」「んん~?そのカンジ…さては恋かな?」「へ!?い、いやその…あ!これは友達に聞いてくれって頼まれた話しで…」「うんうん、わかったわかった。じゃ、話してみ?」「その…女の子が女の子を好きになっちゃダメですか!?」「・・・」「・・・」「いやいいんじゃないかな普通だと思うな私はあはは」「そ、そうですか!」「うんどこかの本にも書いてあったし先生も応援するよがんばってねえへへ」「せ、先生…?」「ああもうこんな時間だいけない職員室に戻らなきゃごめんね柏葉さんまたねうふふ」「・・・」 《雛苺と男子》「あの…雛さん!」「うい?」「その雛さんに相談したい事が…」「なんなの?」「僕…柏葉さんの事が好きなんです!」「・・・」「だから雛さんに紹介して欲しいな…って…」「うせろ」「え?」「彼女は私のモノだ!貴様なんぞには髪の一本とてくれてやるものかぁ!!今度彼女に近付いてみろ!?その汚い(ピー)を踏み潰してくれるわ!!わかったらささっと我の眼前から消え去れぇ!!!」 「ヒィィ!?」~約束~あの運命の出会いから二ヶ月。雛苺と過ごしていたせいか、他の女の子も私に寄ってきてくれた。ああ…、私の周りに可愛い女の子が沢山…幸せ…。先生の生暖かい視線を感じつつ、雛苺と二人で帰る事になった。実は最近では二人だけで帰るのは珍しい事でもあった。「巴…人気者になったのね…」突然の言葉に驚いた。「な、何言ってるの…?雛苺の方がいっぱい友達いるじゃない。男の子も女の子も、先生だって…」フォローしたつもりだったのだけど…彼女の顔は沈んだままだった。「その中に、ヒナの心を見てくれる人は何人いるの?」「雛苺…」「皆私の姿が好きなだけなの。私の事をちゃんと考えてくれる人なんて…」「わ、私は!」気が付いたら叫んでいた。自分でも驚く程の大声で。「私は、雛苺の全てが好き…毎日雛苺の事考えちゃうし…雛苺の為だったら…!」「…巴?」「なに?」「じゃあ巴は…私が困った時は…力になってくれる…?」その問いに対する答えなんて、とうの昔に決めていた。だから、私は言った。「うん。雛苺のためなら、私は貴方の剣にも盾にもなるわ」私の言葉を聞くと、雛苺は少し俯いた。もしかして…泣いているの…?「ありがとう…トモエ…」袖で目を擦った後、笑いながらそう言ってくれた。この笑顔を守るためなら、私は何だってしてみせる。誰にも、誰にも汚させたりなどしないんだから。「じゃあこの契約書に血印押してくれる?」「ふふふ~♪どれどれ~?」
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