Another RozenMaiden 第9話 間奏
Another RozenMaiden 第9話 間奏 銀「何だか外がうるさいわねぇ。」五分ほど前から、断続的に何かを叩く音が聞こえる。私は音の正体を探るべく、辺りを見回す。すると窓辺で赤く光る物体を見つけた。私は、それに見覚えがあった。あれは真紅の・・・・・。銀「ホーリエぇ?」窓を叩いていたのは真紅の人工精霊、ホーリエだった。銀「窓を開けられないのぉ。真紅と一緒で、おばかさんねぇ。」私はホーリエを無視することにした。真紅が私に何の用があってホーリエを遣してきたかなど、興味はない。私は視線を机に向け直し、勉強を再開する。何かに集中していないと、JUMのことが頭によぎって辛い。ペンが走り始めた頃、窓を叩く音がまた鳴り出す。銀「邪魔すると、容赦しないわよぉ。」ホーリエの方を向き、睨みつける。すると驚いたのかホーリエが後ろに飛び退き、音が止む。その様子を見ると、安心した私は勉強を再開する。すると、またもや集中し始めた頃に窓を叩く音が鳴り出す。銀「うるさいわねぇ。窓を開ければいいんでしょぉ。」余りの騒音に、仕方なく窓を開けてやる。窓が開くと、ホーリエは待ち侘びていたかのように素早く部屋へと入る。銀「一体何の用なのよぉ。早く言いなさいよぉ。」そう言ったものの、ホーリエは喋ることなどできはしない。ホーリエは数回ほど私の周囲を旋回すると、私の頬に触れる。触れた頬を通じてホーリエに込められた何かが、私に流れ込む。銀「これは真紅の想い?」それは、とても寂しげで冷たい。そんな雰囲気と共に一言のメッセージが浮かぶ。
紅「水銀燈。今夜0時に学園まで来て頂戴。」銀「今夜0時に学園に来い?」思わず真紅の言葉を繰り返してしまう。けれども、物言わぬホーリエは私の問いに答えない。そして、役目を終えたのかホーリエは窓から外に飛び去る。後に残されたのは、私と真紅のメッセージだけ。今夜0時に学園まで来て頂戴。心の中に、真紅のメッセージが蘇る。それだけでは、何の意図があるのかすら分からない。銀「一体何なのよぉ・・・・もう・・・・。」真紅の言葉で私は時間が気になり、時計を見てみる。時計の針は、既に23時を回っていた。銀「もう23時ぃ。寝ちゃおうかなぁ。」集中するほど、時間が経つのは早いものだ。私は先程のことを忘れようとベッドに潜り込む。たった一人のベッド。以前なら寂しい時は、JUMの布団に潜り込むこともあった。でもここ数日、どれだけ寂しくても私は一人きり。一向に慣れない。JUMのいないベッドの隙間がそのまま心の隙間となり、どうにも落ち着かない。10分、20分と時間だけがただ過ぎて行く。目を閉じても浮かぶのはJUMのことばかり。離れれば離れるほど、その距離を埋めるように想いが膨らんでゆく。銀「もぉダメねぇ。全然寝られそうにないわぁ。」私は自嘲の笑みを浮かべると、電灯に手を伸ばす。何気なく見た時計、時間は23時30分。『今夜0時に学園まで来て頂戴。』不意に真紅のメッセージを思い出してしまう。銀「仕方ないわねぇ。暇潰しに行くだけよぉ。」私は自分に言い訳をすると支度を整え、JUMに気づかれないよう学園へと向かった。
薔薇学園。校庭の中央に一人佇む私。紅「水銀燈は来るかしら。」誰も答えない虚空に問う。蒼星石の言葉が心をよぎる。蒼「ねえ真紅。こう思うことはできないかな? 愛する人と、その人が愛する人の為に尽くそうって。」蒼星石の言葉で私は決心がついた。そして私は、考えられるだけ考えた。JUMのアリスになれない私が、JUMにしてあげられることを探して。その結果、思いついたのはこの方法しかなかった。紅「覚悟は決まったけど、いざとなると震えてしまうものね。」気がつくと私の体は震えていた。寒さにではない。理性では覚悟を決めても、体は言うことを聞かない。不意に足音が聞こえる。私は立ち上がり校門の方を向く。足音の主は水銀燈だ。紅「ホーリエ!」水銀燈に背を向け、私は人工精霊を呼び出す。私はホーリエにそっと口付けをし、JUMへのメッセージを託す。紅「行きなさい、ホーリエ。私の想いを乗せて。」私はホーリエを送り出す。あとはJUMがここに来てくれさえすれば・・・・・。気を取り直すと私は向き直り、キッと水銀燈を睨む。紅「来てくれて嬉しいわ、水銀燈。」銀「余り睨むと、しわが増えるわよぉ。」水銀燈は茶化すが、私はそれを受け流す。銀「私をこんな時間に呼び出すなんて、どういうつもりぃ?」ここで真意を悟られるわけにはいかない。
紅「他でもない、アリスゲームの為よ。」私は表情を変えずに答える。銀「アリスゲーム?」水銀燈が聞き返す。紅「そうよ。その決着を付ける為に、貴女を呼んだ。」感情を消すよう勤め、できるだけ淡々と喋る。銀「どういうつもり?」対して表情が硬くなる水銀燈。紅「貴女を倒して、私がJUMのアリスになる。それだけよ。」銀「何を言っているのぉ。私はJUMのこと嫌いになったのよぉ。」普段の口調に戻し、水銀燈が答える。銀「だから真紅がJUMをどうしようと、私には関係ないわぁ。」水銀燈の声が僅かに震える。これは嘘だ。水銀燈は嘘をついている。放課後に見た、あの涙は紛れもなくJUMへのもの。あえて、水銀燈の嘘を信じた振りをする。紅「それは知っているわ。でもJUMは、貴女への未練を捨てきれていない。 だから貴女を倒す。JUMに私の方が優れていることを思い知らせるのよ。」私は虚空へ腕を伸ばすと愛用のステッキを呼び出す。銀「その為に、私を倒すというのねぇ。」紅「覚悟なさい、水銀燈。」私は水銀燈へ真っ直ぐにステッキを向ける。銀「本気なのね。」水銀燈が鋭い目付きで私を睨む。紅「当然よ。」私も負けじと水銀燈を睨み返す。雨の降り始めた薔薇学園、二人の戦いの幕が切って落とされた。Another RozenMaiden 第9話 間奏 終Another RozenMaiden 第10話 激突 に続く。
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