Another RozenMaiden 第7話 疑惑
Another RozenMaiden 第7話 疑惑 翌日の放課後。私の視線の先にJUMが居る。紅「辛そうね。」昨日にも増して、JUMは落ち込んでいる様に見える。雛「JUM。欝なのねー。」百人に聞けば、その全てが落ち込んでいると分かるだろう。その上、些細なことで怒鳴ったり、腕を振り上げて威嚇したりと険悪な態度で接してくる。昨日の水銀燈とJUMのやり取り、それと同様のものが帰宅後にも続いているとしたら、JUMの変わり様は当然なのだろう。紅「何があったのか、気になるわね。」鞄から、くんくん印の虫眼鏡を取り出す。JUMを拡大して見てみるが、それだけではよく分からない。雛「JUMはねー。水銀燈と喧嘩したのー。」雛苺は何か知っているらしい。翠「まさか真紅、知らなかったのですか?」翠星石が口を挟む。紅「私が知りたいのは、JUMと水銀燈の喧嘩、その原因よ。」この機を利用すれば、まだ私にもJUMのアリスになる可能性があるかも知れない。その為にも、事件の原因を把握しておかなければならない。加えて二人は、まだお互いを想っている。油断すれば、また元の関係に戻ってしまうだろう。雛「雛も知らないのー。」無邪気に答える雛苺。紅「役立たずな家来ね。」軽くため息を吐く。雛苺に期待した自分が悪いのだが。翠「言われてやがるです。チビチビは役立たずですぅ。」調子に乗った翠星石が更に追い討ちをかける。雛「それなら、翠星石は知っているのー?」雛苺が疑いの眼差しで翠星石を見つめる。翠「う・・・・。」先程までの勢いはすっかり消え、後ずさりを始める翠星石。紅「貴女も知らないのね。」翠星石なら、知っていれば得意気になって即答するはず。雛「翠星石も雛と同じ、役立たずなのー!」翠星石に向かい大声を出す雛苺。翠「翠星石が役立たずなら、チビ苺はカス!ですぅ!!」雛苺に負けまいと、更に大きな声を張り上げる翠星石。紅「うるさいわね。二人共。」余り騒がれるとJUMに気づかれてしまう。私は二人を引きずりながら、教室を出て廊下の隅に移動した。
紅「これからJUMと水銀燈の喧嘩。その原因を調べるわよ。」一人で行うよりは効率がいい。そう判断し、私は二人を巻き込むことにする。雛「二人を仲直りさせてあげるのねー。真紅、優しいのー。」紅「そういう訳ではないのだわ。」二人が仲直りしてしまえば、私がJUMのアリスになれなくなるからだ。雛「それなら、どうして調べるのー?」先程から、なぜか冴えている雛苺。紅「うるさいわね。貴女は家来らしく、黙って私に奉仕なさい。」余り知恵を付けられるのも困る。私は雛苺の発言を一蹴する。紅「二人とも、黙って着いてきなさい。調査の準備をするわよ。」翠「何で翠星石が・・・・ですぅ。」雛「雛もなのー?」納得していない為、余り乗り気でない二人。紅「つべこべ言わず、付いて来るのだわ!」二人を家来として従えるには、あの勝負服を出すしかないだろう。私は二人を引きずり、準備の為に更衣室へ向かった。
紅「準備は整ったわ!」更衣室の扉を勢い良く開け、私の勝負服を披露する。雛「それは、くんくん探偵セットなのー。」雛苺の目が輝く。紅「その通りよ!」気分は最高。誰が見ても、今の私は立派な探偵。紅「今から私は探偵なのだわ。雛苺、貴女は助手として私に従いなさい。」雛「はいなのー!」ビシッと敬礼をして雛苺が返す。勝負服の効果は絶大だ。翠「見た目だけです。所詮コスプレですぅ。」紅「コホン!」軽く咳払いをし、翠星石をけん制する。紅「今回の任務はJUMと水銀燈の喧嘩、その原因を探ることよ。」雛「はいなのー。」すっかりその気になった雛苺は、敬礼して返答する。紅「では早速、助手の雛苺、行動に移りなさい。」雛「どうするのー?」頭上に?マークが幾つも出そうな表情をする雛苺。紅「現場の確保、周辺の人に聞き込み等をするのよ。」私は何も分かっていない雛苺に、くんくんを見て学んだ知識を教え込む。翠「ヒーヒッヒッヒ。いいこと思い付いたですぅ。」私に背を向け、翠星石が小声で何か言う。私の位置からでは良く聞き取れない。紅「何?翠星石。意見があるなら、ハッキリ言いなさい。」私の問いには答えず、翠星石はくるりと回って雛苺の方を向く。
翠「聞き込みするぐらいなら、直接JUMに聞いた方が早いですぅ。 チビ苺もそう思うですよね?」翠星石は自分の両手を雛苺の両肩に乗せ、その目を見つめる。雛「翠星石。頭いいのー。」雛苺が目を輝かせる。翠「当然ですぅ。早速聞きに行くですよ。」手を下ろし、翠星石は雛苺の腕を掴む。雛「はいなのー!」そのまま翠星石が走り出し、雛苺もそれに続く。紅「待ちなさい二人共!本人に直接聞いたら、秘密裏に調査する意味がないじゃない!」私の制止にも拘らず、二人は教室に入ってしまう。紅「リーダーは私なのよ!勝手な真似はやめて頂戴!!」このままでは、JUMに私の思惑を気づかれてしまう。紅「待ちなさい!二人とも!!」二人を止めるべく、私は教室に向かい走り出した。
雛「JUMー!」教室に入りJUMを見つけるや否や、その腕に飛びつく雛苺。そのまま掴んだ腕を引っ張り、JUMを席から引き摺り下ろそうとする。JUM「雛苺か。僕に何の用だよ?」明らかに不機嫌なJUM。強引に雛苺の腕を振り解こうとしている。雛「任意同行なのー。」JUMに構わず、その手を引っ張り続ける雛苺。その行為はとても任意とはいえない。JUM「雛苺!煩いんだよ!!」大声を上げ、雛苺を睨みつけるJUM。雛「!」びっくりした雛苺が手を離す。その様子に周囲がJUMへと目を向ける。JUM「ごめん・・・・。」それに気づいたらしく、JUMは雛苺に小声で謝罪する。雛「大丈夫。気にしてないのー。」雛苺はJUMに笑みを返す。JUM「また性悪に、何か吹き込まれたのか?」少し遅れて教室に入ってきた翠星石を見つけると、怒りの矛先を翠星石に向けるJUM。翠「性悪?誰のことですか?」雛苺に追いついた翠星石が、JUMの前に立ちはだかる。雛「違うのー。雛は助手なのー。」雛苺は両手振り上げ、必死にアピールする。翠「国家権力に逆らうなですぅ!」そう言いながら、JUMの肩をパンパンと叩く翠星石。JUM「いつ、お前が国家権力になったんだよ・・・・。」JUMが翠星石の肩を掴む。翠「痛っ。」掴まれた肩を押さえて、翠星石が小さく呻きを上げる。JUM「!?」自分の手に力が入っていたことに気づき、慌ててJUMが手を離す。JUM「ゴメン・・・・。」
翠「JUM・・・・。」JUMを悲しそうな目で見つめる翠星石。JUM「ところで、雛苺は翠星石の助手なのか?」JUMは視線を翠星石から雛苺に移し、問いかける。雛「それはねー。真むぐうぅ。」紅「雛苺!」間一髪。雛苺が私の名を口する寸前、私は雛苺の口に腕を回し、口封じに成功する。次に封じるべきはJUMの口。紅「JUM!今ここで起きたこと、全て忘れなさい!」私は人目も憚らずに大声を出し、JUMを威嚇する。そのまま2、3歩後ずさり、JUMと距離を取る。JUM「あ、ああ・・・・。」私の勢いにJUMが圧倒されている。これなら大丈夫・・・・・かも知れない。紅「いいこと?必ずよ!」もう一度念を押すと、振り向きざまに髪の毛でJUMをはたく。雛「真紅ー。苦しいのー!」腕の中で雛苺が暴れるが、気にしている余裕はない。JUM「何なんだよ・・・・・あいつら。」私は腕の中でじたばたする雛苺を引きずり、一目散に教室から逃げ出した。
紅「危うくJUMに気付かれてしまうところだったのだわ。」やっぱり一人で調査に当たるべきだったと後悔する。雛「雛、苦しかったのー。」雛苺は目を回しフラフラしている。翠「さすがの翠星石も、そこまで予想出来なかったですぅ。」少し遅れて教室から出てきた翠星石が、しゃあしゃあと語る。雛「想定の範囲外なのー。」JUMとの会話を途中で遮られ気を悪くしたのだろうか、雛苺はムスッとした表情をする。紅「少し考えれば分かるはずなのだわ。」ため息を吐くと頬を汗がつたう。雛「でもねー。雛はJUMに聞くのが一番早いと思うのー。」雛苺の膨れた頬が更に大きくなる。紅「だから、そうするとJUMに気付かれてしまうのだわ。」全く、困った子ね。雛苺の機嫌が悪いので心の中だけで呟き、口には出さない。翠「それにしても、JUMは結構追い詰められているです。」雛「JUM・・・・傷ついているのね。」二人が暗く沈みこんでしまう。紅「それを解決する為にも、JUMの身辺調査を再開するわよ。」気持ちを奮い立たせ、二人にも頑張って貰えるように声を上げる。蒼「JUM君がどうしたんだい?」不意に蒼星石の声がする。
声のする方を向くと、すぐ傍の階段を上がってくる蒼星石の姿があった。翠「蒼星石!」翠星石が蒼星石を見つけ、駆け寄る。蒼「真紅・・・・凄い格好だね。一体どうしたんだい?」階段を上り終えた蒼星石に注視されてしまう。こうして見つめられると、意外と恥ずかしいことに気づく。翠「長くて、つまらない話ですぅ。」蒼星石の問いに翠星石が茶々を入れてくる。雛「真紅ー。蒼星石に聞いてみればいいのー。」紅「そうね。蒼星石なら頼りになるのだわ。」昨日の放課後のことを思い返せば、蒼星石は何かを掴んでいてもおかしくない。蒼「僕に、何か用?」私と雛苺のやり取りに気づいた蒼星石が、こちらを向く。紅「蒼星石。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど、時間はあるかしら?」恐らく判明するであろう答えに、期待と不安が入り混じる。蒼「時間は大丈夫だよ。それで、真紅は何が聞きたいんだい?」不安が一気に膨れ上がり、押し潰されそうになる。紅「それは・・・。」言葉が出ない。あれほど仲が良かったJUMと水銀燈が仲違いを起こすのだ。私もそれを知ってしまえば、水銀燈の様になってしまうのかも知れない。でもこれを知らなければ、きっと先に進めない。もう逃げ場は無い。私は私、水銀燈とは違う。だから、きっと大丈夫。私は意を決し、核心に迫るあの問いを蒼星石に向ける。紅「私は・・・・JUMと水銀燈の仲違い、その原因が知りたいの。」蒼「それは・・・・。」私の問いに蒼星石が口を開く。そこで私を待っていたのは衝撃の事実だった。Another RozenMaiden 第7話 疑惑 終
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