DIABOROS 第四話 「Ash」
暴動、ついに終結・・・・・・・・・・・・・・12月24日をもって、多数の死傷者を出したテロ組織“ローザミスティカ”による暴動は鎮圧された。・・・・・・・・・・・・・・この暴動は世界数ヵ国の軍事的支援、もしくは軍への離反があったと思われる。・・・・・・・・・・・・・・また、このテロ組織“ローザミスティカ”のリーダーは誰であるのか、未だに不明であり、捕らえた犯人達も一向に口を閉ざし、言うにしても、「あの方は決して死なない」などのみであり、謎は深まるばかりだ。専門家はこの組織を一種、宗教的であったと見ている。・・・・・・・・・・・・・・(2012年12月25日付け 朝刊より一部抜粋)DIABOROS 第四話 「Ash」なんで今僕は、強盗に出くわしているのだろう。なんで今僕は、銃を突き付けられているのだろう。なんだ…この状態…。最初に返って考え直してみよう。ちょっとした寒気を感じながら、コンビニへ到着。早速立ち読みを開始した。今回の新連載は微妙だなぁ、とか、お、段々と面白くなってきたな、なんて思いながら読んでいると、視界の片隅に真っ黒な人間が。黒と言えば水銀燈だよな、と思うわけでもなく立ち読みを続けていると、「金を出せ!」という怒号が聞こえた。流石の僕もそっちを見ると、その黒づくめは店員に銃を向けていた。この時、僕には現実感なんてなかった。少し東へ行けば、国境付近は大変なことになっているというのに。きっと、その事実は知ってはいても、やっぱり他人事だったのだろう。だから、僕には目の前の出来事に現実感を失った。僕の後ろから、上から、右から左から、僕の外側からそれを見ている気分。銃を向けている男。固まる店員。苛立ちが募ったのか、レジへと押し入り、金を奪う男。その時、外でパトカーのサイレンが鳴った。見ると一台だけだが、そこにあった。おそらく巡回中に見つけたのかも知れない。慌てて逃げようとするが、サイレンに阻まれ、入口で止まる男。それを見ている僕。そして、男は一番近くにいた人間を人質に取った。僕だ。この時の押し付けられた冷たい銃の感覚で、熱病の中から戻り、ここに足を付けた。よくこんな状況のことを男の子なら、妄想しちゃうけど、いざとなったらあんなの無理だね。だって、足がガクガク震えて、立っているのがやっとだし。強盗事件から立てこもり事件へと変わってから約30分、ついに強盗は動いた。「そこをどけ!じゃねぇとこいつ殺すぞ!すぐだ!失せろ!」あぁ、もうすぐ僕は死ぬのかなぁ、短い人生だったな。とか思いに浸る。走馬灯まで見えてきた。今までの思い出。楽しかったこと、悲しかったこと、全部。巴ちゃんと遊んだ。ケンカした。仲直りした。引っ越した。その先で馴染めず辛かった。のりが、高校に受かった。旅行へ行った。地獄を見た。いや、違う。あれは夢だ。幻だ。左肩の火傷は、そう、昔火遊びして作ったんだ。違う。ちがう。あしもとがぐらぐらする。あたまがいたい。頭の中をいろいろな思いが駆け巡っていると、一人の若い男が、「すみません。男の子を人質にするのはどうかと思いますよ。そのくらいの年齢だったら体力もあり余ってますし」なんて言いながら出てきた。強盗は、「うるせぇ!なんなんだお前は!」と叫びながら、僕からその人へ銃を向け、パン。乾いた銃声。全てがスローモーションで見えた。でも硝煙が昇っているのは強盗の銃からじゃない。離れたところにいる、警官のからだ。ドサッ強盗はゆっくりと倒れ、痙攣している。この時、僕は初めて人が撃たれた所を記憶した。DIABOROS 第四話「Ash」 了
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