DIABOROS 第二話 「Farewell」
『桜田君へお元気ですか?私たちは全員元気でいます。もうすぐ、高校生ですね。受験はなんとかなりました。どんなことがあるのだろう、ととても高校生活が楽しみです。桜田君は、どんな部活に入るつもりですか?やっぱり裁縫?私はまだ決めてません。剣道を続けるっていう手もあるけど、元々好きでやってるわけじゃないので、あまり気が乗らなくて…それと、私の家にホームステイが来ました。名前は雛苺。2つ下で、フランス人の女の子です。見た目も心も子供っぽいけど、とても可愛い娘です。一人っ子だったので、妹ができたみたいで、嬉しく感じてます。高校入学祝い、ということで、携帯電話を買って貰いました。メールアドレスは ~~~@~.ne.jp電話番号は 090-○○○○-○○○○です。よかったら連絡してね。また会える日を楽しみにしています。 柏葉 巴』 DIABOROS 第二話 「Farewell」 「桜田。おい桜田。起きろ」どこからか声がする。眠い。ゴンッ!痛っ!目を覚ますとすぐ前に梅岡がいた。「寝てません」真顔で僕は言う。 「嘘つくなっ!」即答。クラスに笑いが巻き起こる。「いや、寝てませんって」と言いながら、少しだけ身体を後ろに移動。だって暑苦しいし。危険を感じるし、性的な意味で。「じゃあ、訳してみろ」少しキレそう。そういうやり取りの間に今どこかなのをホワイトボードを見つつ推理。辺りを付けて、訳し始めた。「えっと、『私はこの経験から、広く受け入れられている~』」起き抜けの頭には少しヘビーじゃないか?まぁ、僕が悪いのは確かだが。「よし。今日が午前中で終わるからって一限目から寝るなよ」あ、良かった。合ってたか。そして休み時間。昨日は遅くまでネットやってて眠いから寝る。彼女たちに叩き起こされないことを願って…。真っ赤な空。あれは夕焼けなどではなく、純粋な炎。悲鳴すらも焼き尽くされる業火。あちこちに人の形をした炭がある。気付けばこの躰も燃え始め…そこで目を覚ました。時計を見れば、5分しか経っていない。嫌な夢を見た。別に僕自身がそんな経験にあったわけじゃないはずなのに…。覚えてないはずなのに…。そういえば、柏葉は今、どうしているのだろう。そんなことを徒然なるままに思い浮かべた。一年前の、入学前のメールを最後に連絡がない。 今現在、この国には電波制限法なるものが敷かれている。これは、軍事防衛を目的とし、スパイ行為防止のためで、“二国間”の電波通信を制限したものだ。なら、どうすれば東西で連絡を取るかと言えば、そんな方法なんてない。郵便等の配達なんて受け付けられていない。ここら辺まで来たのなら、今のところ安全だが、“国境”付近まで行くと、物々しい警備の上、山間部には地雷まで埋まっているという。その他のあらゆる機関も国境の前には平伏すしかない。つまりはほぼ完全に国境は封鎖されているわけだ。意味もなく携帯を取り出し、トップニュースで総理が結菱氏に変わったことを知る。もう少しはまともな世の中になってくれないかな?というか、あの人結構な年だろ、大丈夫か?なんて思いながら、やっぱりすることがないので、あいつらの輪に入る。進路のこと、この国のこと、どうでもいい馬鹿なこと、そんなことを話していると、すぐにチャイムが鳴った。次の授業。流石に今は眠くない。あの夢のせいだ。仕方なく、真面目に聞いていると、背中を何かで刺された。ペンか?振り向かず、少しだけ身体を後ろにそらし、耳を傾ける。「今日は一緒にお昼を食べに行きましょう」と真紅。「二人で?」「いえ、残念だけど皆で、だわ。行くんでしょ?」苦笑している気配。「行かない、って言ってもどうせ無理矢理連れてくんだろ?」「その通りだわ。下僕なら当然よ。で、どうなの?」「はいはい」「はいは一回。何度言わせるの」僕は思ってもいなかった。この先の運命を全て変えてしまうような出会いが行った先に待ち受けているなんて。それも、僕自身だけのではなく、思い上がりかもしれないが、この国の今を揺るがすような物になるとは… DIABOROS 第二話 「Farewell」 了
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