Phase1#-key-
やっぱり、5年っていう月日は長すぎたのかな?そんなことを思うようになった。でも、信じている。信じることしかできない私。間違っていたと気づいたのは、それから1ヶ月後のこと。でも、今更やっぱりなんて言えなかったし、それに・・・自分の性格を恨めしく思う。なんであの時素直になれなかったのだろう?って。「ジュン・・・」あの人は、まだこの街にいるのだろうか?夏の日、残像。Phase1#-Key-私の夢・・・世間一般では、夢をかなえた幸せな子。だけど、自分の中ではそんなことはなくいつでもジュンのことが心の中にあった。ジュンは今、どこで何をしているのかがものすごく知りたかった。何より、彼に会いたいから。離れ離れになって気づくことは多い。でも、どうしようもない事はどうしようもない。本当にそうなのかな?「翠星石?どうしたの?」「巴・・・なんでもないですぅ」「そう・・・」巴は私の大学の友達。最近よく一緒にいるようになった-と言うか、大学に入ってから-彼女の雰囲気はどことなく不思議・・いや、純和風と言った方がいいのかな?とにかく、私の双子の妹に似てるなぁ・・と勝手に思っていた。「昔のことか何か?」「・・・巴には関係ねぇですぅ」「って言われてもなぁ~、相談してくれてもいいんじゃない?」「相談しても解決には」「なるかもしれないよ?こないだだって翠星石が相談乗ってくれたからうまいこといったんだし」「うぅ・・・」少し、触れられたくない部分みたいなものとでも言うのだろうか?それでも土足で上がりこんでくるような真似を、彼女は決してしない。「5年も経っちまったです・・・あれから」私はことの大筋を、巴に話した。すると・・・「で、あなたはどうしたいの?」「どうしたい・・・ですか?」「うん。なんか翠星石がどうしたいのかが見えてこないから」「翠星石はできるならジュンのところへ行きたいですぅ・・・でも今どこにいるか・・・」「教えてあげよっか?」私はぽかんとした-それはもう、絵にかいたような顔を。ぽかんとしている間にも一応思考回路は動いていたようで、「何で巴が知ってるですか?」ちゃんと一番聞きたいことは聞けていた。「ジュンって、桜田くんのことでしょ?だって実家近いもん」「そ、そーなんですか」「うん、小学校と中学校一緒だったし。高校は別々になったけどね」「ふーん・・ですぅ」「で、どうする?」「何がです?」「何が?じゃないよ。彼のところに行くの?」「・・・」私は少し悩んだ。もし会いに行ったとして、彼に彼女でもいたらどうする?彼女がいなくても、好きな人がいたらどうする?それ以前に私のことを覚えていてくれるのかな?いろんな憶測が私の中で雨のように降り注ぐ。「悩む暇があったら、私は行くべきだと思うよ?その方が翠星石らしいしね」「翠星石らしい・・・ですか?」「うん。よかったら、彼に連絡入れとこうか?」「・・・頼んだですぅ」「わかった。いつがいい?」いつにしようか?本当に悩むところだ。でも、早い方がいいだろうし・・・「じゃあ、明日でも行ってみる?」「な、ななななーに言ってるですか!」「だって、早い方がいいでしょ?」「そ、そりゃそーですけど・・・」結局巴に押され、本当に明日行くことになってしまった。待ち合わせの場所は当時よく行っていたカフェ。彼もよく利用していた場所だった。「そういや何年ぶりですかねぇ・・・?」あの系列のカフェに入るのは本当に久しぶりだ。少なくとも、高校卒業してからは入った記憶がない。もしかすると、あれ以来入っていないのかもしれない・・・「記憶をつなぎとめるカギみたいね」「え?」「その場所が。翠星石と桜田くんの記憶の交錯する場所なんでしょ?」「少なくとも翠星石にとってはですぅ」「記憶の扉のカギね」「key...ですか?」Key to my heartなんてフレーズが何かにあった気がする。でも本当にその場所がそうなら、きっと彼も来てくれる。そんな淡い期待が、私の中で膨らんでいた。Phase1#-Key-fin
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