『K』~雛苺と黒猫の物語~第七夜
『K』~雛苺と黒猫な物語~第七夜『おい』雛「なぁになの?」『歩く度に俺の目線に近づいてきてるぞ』雛「うょ?」「やぁいバカ苺ぉ!雪に埋まって、ただでさえ小さい体が更に小さくなってるぞぉ」雛「…………!? 大変なのよぉ!引っ張ってホリーナイトぉ」『いや、無理だろ……常識的に考えて…』もうわかるように、俺等の街にも冬将軍がいらっしゃった。そこもかしこも雪!雪!!雪!!!まさに一面に広がる銀世界。子供が1人埋まってもおかしくない積雪量だ。まぁ、現に埋まりそうになったバカがいるわけだが雛「ちょっとぉ?ナイトぉ何してるの?早く来るのー」『わぁってるよ!』我が街に冬将軍が居座ろうとも、俺逹は相も変わらず絵を描く毎日。 とは言っても、買い出しのついでのスケッチ。外で描くのは久しぶりだ。『外にでないと太るぞ?』雛「うっ!猫は黙ってコタツで丸くなってればいいのー!!」『こたつねぇじゃん!』てなわけで、外にでたはいいんだけど…『寒くね?』 雛「自分が外行こうっていったのよぉ」恨めしそうな声で言う雛苺。『わーった!わかったから、その顔やめろ』雛「まったく… スケッチと買い物、どっち先にする?」『かい「買い物にきまってんだろ。でしょ?」この二年ですっかり意志疎通ができるようになった俺と雛苺。やりぁできるもんだなと感心せざるえないわけだが『わかってんなら聞くなっつうの』雛「えへ~ ぢゃぁ、噴水広場にレッツゴーなのー!!」………『お~、広場も白いなぁ。HIROBAも』雛「ホントなのー。誰か雪掻きくらいしろ!なの」『………お前、案外口悪いよな』 「幻聴なのよぉ。そんなことより、噴水のへりのとこに座ってなの」『へいへい』いつものように俺を描くわけだが、これがまた売れないこと売れないこと。まぁ、黒猫の絵だからってのもあるけど、この街には人がこなさすぎる。この街の人間が変わり者(雛苺)の絵を買うわけがないのに、他から人がこないってんで売れないだな。そんなんで、どうやって生活してるかっていうと雛「去年の暮れに金持ちのロリコン親父がヒナの絵い~っぱい買ってくれたのー」『俺の心の声読んでんじゃねぇよ!ってか、口わりぃなっ!!』雛「ふふふ~ だから、げんち……ゴホッゴホ」『おい、大丈夫か?』雛「ちょっと寒くなってきたの」いつの間にか、太陽が沈み始めていた。『……もぅ、こんな時間か。ぢゃぁ、買い物して帰るか』雛「よぉし!魚のベジータにレッツゴーなのー!! 着くの遅かったほうが奢るなのぉ」『…!?ちょっまてよ!無理だろ…常識的に』………………『ハァ…ハァハァ……』雛「ナイト、遅いの」『…お前の足の速さ異常……』俺が店の前に着いた時には、息の整った雛苺が待ちくたびれた様子で立っていた。雛「スイマセーン!アジくださいなのー」雛苺の呼び掛けに店の奥からM字ハゲが現れた。ベ「ケッ!てめぇらなんかに売る魚は…〔ガッ〕…グハッ!!」蒼「もぅ!ベジータ君!お客さんになんてこと言うのさ」ベ「蒼嬢~、いきなり殴るなんてないぜぇ」蒼「ごめんねぇ、雛苺。ウチの人、おでこは広いのに、心はせまいんだよ」夫は華麗にシカトか…やるな雛「えへへ~、いいのよぉ。その代わり…」蒼「ふふっ、わかってるよ。雛苺はやり手だなぁ」今、雛苺と親しげに話しているのは、蒼星石。この魚のベジータの看板娘(嫁)ことM字ハゲの奥さんだ。ハゲにはもったいない良い人だ。雛「……で……なのー。ゴホゴホ」蒼「ちょっと雛苺、咳してるけど平気?」雛「うょ?さっきからちょっとしてるけど、平気なのよぉ。無問題なのー」蒼「そう?……ぢゃぁ、今日はいつもより多くオマケしとくよ。栄養とって風邪なんか吹っ飛ばしちゃえ。はい、どーぞ」雛「蒼星石は優しいの!ありがとなのよ。バイバイなのー」………………雛「ただいまーなの!」『元気だなぁ。さっきの咳…もしかして、また演技か?』雛「流石にアレは演技じゃないのよぉ。 ぢゃぁ、ご飯すぐ作るから待っててなの」『うぃ~』雛「できたのよぉ。」『……また、アジの塩焼きか。レパートリーすくねぇな。』雛「文句言うなら没収ートなの」『ちょ、待て待て。食うから食うから!いやぁ、旨そうだなぁ』雛「初めからそ…うゆう態度しろなのー。それじゃぁ、」『「いただきま~す」』………雛「……で…ゴホッなのー。ゴホゴホゲホッ」『おい?マジで大丈夫か?さっきからメシにだってあんまし手つけてないしよぉ』雛「ちょっとだる…いけど、平気…なのよぉ。ふふっ、ありがとなのホリーナイト」『あっ……あぁ』雛「ぢゃぁ、洗い物しちゃう…ね」そう言って、立ち上がった瞬間だった…よろめいたかと思うと、雛苺はそのまま床に倒れ込んだ『おいっ!!大丈夫か?』雛「……ちょっ…と…ころ……んだ…だ……」雛苺の額に触れると『熱あんじゃねぇか!クッソ!ちょっと待ってろ!!』家を飛び出し、医者の家まで走った。『ハァ…ハァ……ここか』医者の家のドアは勿論閉まっていた。猫の俺にそれを開ける術はなく、他に方法はないかと辺りを見渡す。『あー!クッソ!どっか……!!』運良く窓が開いてんじゃねぇか。そこから家の中に入った。流石医者。棚の上にはたくさんの宝石類があるじゃ……おっと『おい!雛苺が倒れたんだ。すぐき「キャー!野良猫よぉ!!」俺を見たババァが悲鳴をあげると同時に、そばにいた夫が「この猫!どっから!」そう言いながら、物を投げてきやがった。『おい!ちょっと待て!話を……』ちっ、こいつらには通じねえんだ雛苺のおかげで言葉が通じないことを忘れかけてたぜ。(早く…雛苺が……どうすりゃ…でも……そうだ!)棚の上の指輪だ!棚に飛び移り、指輪をくわえて窓から飛び出す「ちょっ!あなた!追いかけて!!私の指輪が…」予想通り。人間の女ってのはがめついからなぁ。高いもんとれば、奪い返そうとして夫に追わせると思ったぜババァの言葉に、夫が俺を追いかけて来た後は、こいつを持って雛苺のところまで行けば…「待ちなさい!野良猫」夫…つまり、医者が追いかけてくるが、ああも出っ張った腹じゃ、速く走れるわけもない。『あーぁ!もぉ!こっちは急いでんだよ! でも、あいつが俺を見失ったら意味がないわけで…… 付かず離れずってムズいなぁ』「どこまで…ハッ…逃げ……ハッハ…気だ?」よし、あの角を曲がれば!雛苺!今助けてやるからな「ぬぉ!曲がった!?クソォ、若い頃はカモシカフルバーストと呼ばれた儂をなめるなよぉ!!」よし!医者の野郎が来た瞬間…家の中に入れば……来た!!「ぬ!?野良ではなく飼い猫だとぉぉ?どんな躾をしてるんだ!!」「オォォォォォ!カモシカフルバァァァッストッ!!!」奇声を発しながら民家に駆け込む怪しい男…もとい、町医者「ゴラァ、ドコイッタァァァァァァ!??!なぬ?!」町医者が家の中で見付けたのは、倒れた少女に寄り添う猫だった。「……そうか、お前は…。よしよし!儂が助けてやるからな…」続く
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