第十一話「I for You」
心から キミに伝えたいキミの笑顔いつも見つめられたら心から キミを愛してるキミに降る光を 集めてあげたい すべて I for You LUNA SEA 第十一話 「I for You」「僕と結婚してください」「な、なな何言うですかぁ!いきなり!」自分から言い出そうとしたことなのに。突然のことには弱い。「だから、僕と結婚してください。あぁ、別に婚姻届まで出してどうこうしようじゃなくて、なんていうか…、雰囲気って言えばいいかな。それだけでいいんだ」驚いた。私が言い出そうとしてたことを彼に先に言われたことより、彼にそんなことを言える度胸があったことに。今までだったら絶対そんなこと口になんてできなかった。私についてもそうだが、この状況が言わせたのだろうか。「何言ってるですか!お前みたいな先の短いやつなんかと誰が結婚したがりますか!」「そうか…。ごめんな、悪かったよ…」しょんぼりする彼。私はなんてことを言うんだ。向こうから言ってくれるなんて、本望じゃないか。私も望んだことなのに。 「そ、そそそういやぁ、ちゃんと指輪は用意してるんですか?」なんとか空気を戻そうとする。「ん?あぁ、そういや用意してたよ。急だったんで出すの忘れてたや」そう言って近くの机の引き出しの奥から小さな箱を取り出した。「ちゃんとそれっぽくさ。給料三ヶ月分っていうけどもうちょい出してな。買ったんだよ」「え?どうやって買ってきたんです?」「うん、姉ちゃんに頼んだんだ。案外センスいいしな」「ゆ、指のサイズは合ってるですか?」「多分合ってると思うよ。蒼星石と同じサイズでいいんだよな?双子だし。付けてみる?」「い、いやいいですよ。指のサイズがぴったりなのは分かったですし。最近皆コソコソしてたのはこういうことだったんですか?」「コソコソ?うん、まぁこういうことだな。真紅さんにはプロポーズのアドバイス貰ったし、雛苺には検診に来る時間を合わせてもらうつもりだったし」「そうだったですか」私は目をつぶり、溢れそうになる涙を堪えた。「それより、さっきお前、自分から言おうとしてたんじゃなかったのか?」羞恥心に涙が吸われる感覚がした。「な、ななな何バカなこと言ってるですか!この翠星石がそんなこと言うわけないじゃないですか!」「じゃあ何言おうとしたんだよ」「そ、そ、そりゃあもちろん、け、け、『蹴らせろ』です!腹が立って仕方ないですから!」「おいおい…。病人相手にそんなこと言うもんじゃないだろ」「うるさい!黙っとけです!この状態じ蹴りにくいですから、変わりに殴らせろです!」そう言って拳を振り上げると、彼は身を固まらせ、目をぎゅっとつむった私はそのまま掲げた手をジュンの顔の真横へと振り下ろし、
…キスをした。
顔の下でジュンが驚いているのが分かる。それでも長く、ずっと口づけをしていた。
しばらく、どれだけ長かったかわからないけど、唇を放し、「仕方ないからいいですよ。どーせ、お前みたいなやつなんかと結婚したがるやつなんか、そーとーな変わりもんですからね。この優しい優しい翠星石様が一緒になってやるから、全身全霊をこめて、一生分感謝しろですよ」彼の側からは逆光になって、私の表情は見えてないだろう。…それに、今どんな表情をしているのか私自身にも分からなかった。泣いているのか、笑っているのか。きっと笑っているはずだ。だって、ジュンがもっと近くにいる。「ありがとうな、翠星石」「いいんですよ。翠星石だって望んでたことですから。でも、さっきは本当にごめんなさいです…。あんなこと言っちゃって…」「いいよ。本心なんかじゃないんだろ?」「あ、当たり前です!あんなこと思うはずないです!ジュンはきっとしぶとく生きてくですよ!奇跡って言われるぐらいに!」「そっか。頑張らなくっちゃな。お前の夫としてさ」息苦しくなるぐらいに赤面してしまう。分かってはいるけど、やっぱり言われると照れる。でも「そうですよ。あなた」向こうにすごいダメージを与えるけど、自分にもダメージが大きすぎた。何馬鹿なことやってんだろ。…だけどこの瞬間が堪らず愛しい。「あ、そうです」「何?」「ちょっと電話させてもらうですよ。」そう言って私は蒼星石に電話をかけた。病室だとか気にしない。気にするべきだけど。何をするのかと、不思議そうな顔をしているジュン。「あ、もしもし、蒼星石ですか?」『うん、どうしたの?』「今どこにいるです?」『ちょうど仕事が終わったから、病院に向かってる所だけど?』「ちょうど良かったです。ちょっとストップするですよ。来る前に、婚姻届貰ってこいです」ブッと隣で吹き出す音。チラッと横を見れば、ジュンが呆然としていた。『えぇっ!?な、何で!?いきなりそうなるの!?』「翠星石達は結婚することにしたですよぉ」『そ、そんなあっさり言わないでよ!?え?ちょっとジュン君に代わってくれない?』「はいですぅ♪」そう言って彼と電話を代わる。隣であれこれ言ってるけど、少しいい気味だった。私に寂しい思いさせた罰ですよ。イーッヒッヒッヒッヒッ。貰った指輪を見てみる。宝石は大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい大きさ。指に付けてみる。やっぱりぴったり。そして私は話している最中の電話を奪い取り、「じゃあそういうことですから、頼んだですよ~♪」ちょっと待ってよ、とか言ってるけど、それでも切る。「はぁ~。しょうがないなぁ、お前は」「でも、こんな翠星石がジュンは好きなんですよね?」「はは、まぁそうだな」私は痩せてしまった彼の手を握り、幸せを噛み締めながら、こう祈った。神様、もう少しだけ第十一話 「I for You」 了
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