ジュン尾行作戦
金「みんな…ちょっといいかしら?」夏休みの喫茶店、突然緊急収集と称して皆を集めた金糸雀が深刻そうに口を開く。銀「何よぉ?急に人を呼び出しておいて、いいからさっさと話しなさぁい。」翠「そうです。もしつまんない相談だったらおデコぐりぐりするですよ?」急に呼び出されたことが不満なのか、椅子にふんぞり返った水銀燈と翠星石は苛ついた口調で金糸雀を急かす。蒼「まあまあ、2人とも。…で、金糸雀、話って何だい?」金「うん…実はね、昨日ジュンとみっちゃんが変なこと話してるのを見ちゃったかしら…」蒼「変なこと?」金「うん…昨日の夕方、図書館帰りに商店街で偶然買い物に出掛けたみっちゃんを見つけて…そこに行こうとしたら、ジュンと何か妙なことを話してたかしら…」【回想中…】み「そういえばジュンジュン、明日…アノ日じゃない?」ジ「あ!そういえば…じゃあ久しぶりにどうですか?こないだ誰も来ないいい場所見つけたんです。」み「いいわねぇ、じゃあ明日の夕方仕事終わりに待ち合わせしよっか。」 金(みっちゃんにジュン…さっきから何を話してるのかしら?)金糸雀は電柱の影から2人の会話を盗み聞きする。み「あと、悪いんだけど…ジュンジュン、明日掘ってくれないかなぁ?」金(…へ?)一瞬、金糸雀の目が点になる。ジ「あぁ、全然構いませんよ。」金(え…えぇえええええっ!?)金糸雀は2人の交わす話の内容に危うく大声を出しそうになりながらも慌てて口を押さえて心の中で絶叫した。み「ありがと。じゃ、明日楽しみにしてるね♪」ジ「わかりました。それじゃ。」金「……」夕暮れの商店街…別れた2人を見ながら金糸雀はしばし電柱の影で固まっていた。【回想終了…】金「…というわけかしら。」銀・翠・蒼「「「(゜Д゜)」」」金糸雀の話を聞いた3人もまた唖然とした表情で固まる。やがて溶けかけたアイスコーヒーの氷がカランと音を立てたと同時に翠星石が声を上げた。翠「あ…ありえねぇです!そんなデタラメな話!!」銀「そ…そうよぉ!よりにもよって何でみっちゃんなのぉ!?」 金「そんなのこっちが聞きたいくらいかしら~!!カナはありのままを話しただけかしら!」蒼「お…落ち着いて、みんな!ジュン君に限ってそんなアブノーマルなこと…きっと何かの間違いだよ。」銀「で…でもぉ、もしかしたらみっちゃんに色々仕込まれてたりして…」翠「あり得るですぅ…」金「みっちゃんはそんな人じゃないかしらー!!」蒼「と…とにかく!ここは一先ず引き上げて夕方真相を聞きに行くってのはどうかな?」銀「でも…もし本当にそうだとしたら…素直に吐くと思う?」蒼「それは…」銀「ここはジュンたちを尾行して現場を押さえるしかないわね…」蒼「ち…ちょっと待ってよ!いくらなんでもそれは…」翠「私は賛成です!そんな不埒な真似、この翠星石が許さんですぅ!」蒼「翠星石!」金「カ…カナも行くかしら!いくらみっちゃんでもそんなの嫌かしら!」蒼「金糸雀まで…」銀「決まりのようねぇ…じゃあ夕方!ジュンの家の近くに集合よぉ!」翠・金「「おーッ!」」蒼「お…おー。」 かくしてジュン尾行作戦の幕は切って落とされたのであった。そしてその日の夕方…銀「みんな集まったわね…それじゃ作戦を始めるわよぉ。」ジュンの家を臨む電柱の影に隠れた4人は各々変装し、ジュンが出てくるのを待っている。蒼「ほ…本当にやるの?」翠「何を今更弱気になってるですか?女がやると決めたらとことんやるですぅ!」蒼「うぅ…わ、わかったよ。」金「あぁっ!ジュンが出てきたかしら!」銀・翠・蒼「「「!!」」」4人の視線の先には家の門から出てきたジュンが映っていた。銀「恐らく…ジュンはまず駅に向かうはず。じゃあ、尾行を開始するわよぉ?」翠「了解ですぅ!」金「把握かしら!」4人はジュンを見失わぬよう細心の注意を払いながらその後をつける。だが端から見ればただの挙動不審の怪しい4人組であることは間違いなかろう。蒼(うぅ…恥ずかしいよ…///) そうこうしているうちにジュンは水銀燈の読み通りに駅の中へと入っていった。金「ふむふむ……どうやらここから一時間近く離れた駅まで行くみたいかしら。」金糸雀は双眼鏡を覗きながらジュンの買った切符から目的地を割り出す。銀「よし…私たちも行くわよぉ。」翠「ラジャーです!」ジュンが売り場を離れると同時に4人は素早く切符を購入し改札を抜けた。そして夕方の駅は人も多くジュンからは4人が見えにくいことも幸いし、全員がジュンと同じ車両に紛れ込むことに成功した。蒼「ねぇ…やっぱりこの格好はかえって目立たないかなぁ?」スーツに大きなシルクハットを被った蒼星石が恥ずかしそうに呟く。銀「大丈夫よぉ。キョドってると怪しまれるでしょ?普通にしてなさぁい。」黒いゴスロリ服に身を包んだ水銀燈…本人はバレないようにと気合いを入れたようだが彼女もまた当選のように車内では浮いた存在であった。蒼「これじゃ変装じゃなくて仮想だよぉ…///」 周囲の視線を全身で感じながら蒼星石はしばらくの間、羞恥プレイにも似た時間を過ごす羽目となった…そして一時間後…ジ「お、着いたか。」電車はある街を離れた小さな駅に止まった。それと同時にジュンは席から立ち上がる。翠「ここで降りるみたいですね。」金「カナの予想は的中かしら。やっぱりカナはローゼンメイデンいちの…」銀「無駄口叩いてないで行くわよぉ!?」金「えぇ、ちょ…待っ…!」ジュンが電車から降りた後、4人はこぞって電車を降り、ジュンの尾行を再開した。そして改札を抜け駅の正門…み「あ、きたきた…おーい!こっちこっち~!」仕事を終え、私服に着替えたみつがジュンに向かって手を振った。ジ「あぁ、すいません。待ちましたか?」み「んーん、私もさっき着いたとこ。さ、早く行こっか♪」ジ「あ、じゃあ案内しますよ。」み「うん、お願いするね。」夏の夕暮れの中を2人は並んで歩いてゆく…翠「きぃいいい~!あれじゃ本当にデートじゃねぇですかぁ!!」 蒼「そうだね…信じられないけど…」銀「ゆ…許せないわぁ!みんな!後をつけるわよぉ!?」嫉妬に燃える水銀燈と翠星石を筆頭に4人はジュンたちを追いかけた。み「ジュンジュンこないだは凄かったよね。あんなにいっぱい…」ジ「みっちゃんさんこそ…つい最近まで初めてだったとは思えないくらいでしたよ。」み「そ…そうかな?そう言ってもらえると嬉しいな。」にこやかに話しながら歩く2人。だがその会話を聞いた4人は…金「み…みっちゃん…カナに内緒でそんな…酷いかしらぁ~!!」翠「お…おのれぇ~、ジュンのド変態ぃ~!!」銀「なんでよぉ…お姉さんキャラなら私の担当の筈じゃなぁい!!」蒼「み、みんな!声が大きいよ!?」嫉妬と怒りに大声を上げる3人。事件が起きたのは蒼星石が3人をなだめたほんの一瞬のことであった…蒼「あ…あれ?ジュン君たちは…?」なんと4人の視界から2人が忽然と消えていたのだ。翠「ど…どういうことですか!?」金「まさか…バレたのかしら!?」銀「と、とにかく探すわよぉ!?金糸雀は私とこっちを、翠星石と蒼星石はあっちをお願い!」 金「り…了解かしら!」翠・蒼「「わかった(ですぅ!)(よ!)」」銀「見つけ次第携帯に連絡すること!じゃあ!」4人は二手に別れ見失ったジュンとみつの捜索を開始した。だが、一時間たってもその居所は掴めず夜の闇が辺りを包んでしまった。翠「はぁ、はぁ、水銀燈…こっちはいなかったですぅ。」銀「こっちも全然よぉ…ふぅ。」金「うぅ…2人ともどこ行っちゃったのかしら?まさか本当に今頃…」蒼「や、やめようよ。まだそうと決まったわけじゃ…」銀「あの会話を聞いてまだそんなこと言ってるのぉ!?お馬鹿さぁん!」蒼「あぅ…でも……」翠「とりあえず今日はもう帰るですぅ…こうなったら明日ジュンをとっちめて口を割らせるですぅ!!」銀「それしかないわねぇ。」4人はジュンの捜索を諦め見知らぬ町を並んで歩き出す。その横では片田舎を流れる川が暗闇の中をサラサラとせせらいでいた。その時であった! み「あああぁっ!ジュンジュ~ン!!」銀・金・翠・蒼「「「「!!!!」」」」暗闇の中からみつの甲高い声が響いた。み「お…大きいよぉお!私、こんなの初めてぇ!!」ジ「くっ…こっちも凄い…あぅっ!」2人の声は川の近くの草むらの辺りから聞こえてくる。翠「な…ななな!ナニやってやがるですかあいつらはぁああああああああッ!!(///)」銀「まさか!あ…青○なのぉ!?(///)」金「ぶっちゃけアリエナイザーかしらぁああああ!!(///)」蒼「も、もちついて!こういうときは犬という字を掌に…!!(///)」2人の会話の激しい内容に4人は全員パニック状態だ。み「あぁっ!そ…そんなに引っ張っちゃ、らめぇええ!!」ジ「くっ…だ、大丈夫です!さぁ、一気にいきましょう!」み「うん…2人で、一緒にいこう!」ジ「じゃあ…抜きますよ!せーの!」銀・金・翠・蒼「「「「駄目ぇええええええええええええッ!!!!」」」」たまらず4人は声がする元へと土手を走り降りる。そして暗がりの中にジュンとみつの背中を捉えた。 そして…ジ・み「「うりゃあああっ!!」」その瞬間、ズボッという音を立て何かが4人の顔を叩いた。銀「ぷわっ!」金「へびゅっ!」翠「ひゃあっ!」蒼「うわっぷ!」その感触はまるでこんにゃくを数倍ヌルつかせたようなものであった。思わず間抜けな声を上げた4人はそのまま河原へと尻餅をつく。み「あれ?カナ…どうしてここに?」ジ「お…お前ら…こんなとこで何やってんだ?」2人は思わぬ客人たちにポカンとした顔を向ける。翠「そ…それはこっちの台詞ですぅ!お前らこそ何を……ん?」ふいに翠星石の近くで何かが蠢く…翠「何ですか?これ…」不思議に思った翠星石がそれを見つめた。すると…翠「ひ…ひぃぎゃああああああああああッ!!」静かな夜の河原を翠星石の絶叫が貫く。蒼「こ…これは……うなぎ?」河原で蠢くものの正体は口から釣り糸をぶら下げた二匹の大きなうなぎであった。銀「ど…どういうことぉ?」 ジ「あちゃー、バレちゃったか…」バツが悪そうにジュンが頭を掻く。金「みっちゃん、説明してほしいかしら!」み「実はね…ジュンジュンが天然のうなぎがいっぱい釣れる川を見つけたから前にお願いして連れてきてもらったのよ。」よく見ると2人の手には釣り竿が握られ、川にはまだ数本の竿が立てかけられていた。ジ「うなぎは夜行性だから夜しか釣れないんだ。しかも、ここはこないだより更に穴場だからあんまり人に教えたくなかったんだよな。」金「じ…じゃあ、さっきのは…」み「ジュンジュンと同時にうなぎが掛かっちゃって、私、こんなに大きなの釣ったことなかったから焦っちゃって…」ジ「うなぎは見掛けによらず引きが強いですからね。」銀「じゃあ…ジュンが掘るってのは…?」ジ「あぁ、うなぎの餌は自分で掘った野生のミミズが一番だからな。よく知ってるな。」み「餌代もタダで高級食材が釣れるってのも魅力よねー♪」 ジ「それに、今日は丑の日だし…みっちゃんさんは金糸雀に美味しいうなぎを食べさせてあげたかったんだってよ。」銀「アノ日って…丑の日のことだったのねぇ…」金「み、みっちゃん…カナのために……疑ってごめんなさいかしらぁああああ!!」全てが自分の誤解だと気付いた金糸雀はたまらずみつに抱きつく。み「きゃっ、もう…よくわからないけど…いいのよ、よしよし。」ジ「話が読めないけど…ま、いっか。」誤解も解け、全て一件落着と思われたその時…翠「ちーっともよくないですぅ!!」銀「結局いつものあんたのドジだったじゃなぁい!!」蒼「はは…ははは。」金糸雀のせいで一日中振り回された水銀燈と翠星石が烈火の如く怒りを露わにする。それには流石の蒼星石も乾いた笑いをあげるしかない。金「ご…ごめんなさいかしらぁああああ!許してー!!」銀「待ちなさぁあああい!!」翠「焼鳥にしてやるですぅうううう!!」金糸雀は2人に追われながら夜の河原を逃げ惑った。 ジ「何やってんだか…」蒼「い…色々あったんだよ。」ジ「ふぅん…ま、いっか。おっ!」仕掛けられていたジュンの竿が突如川に引き込まれるように弧を描いた。ジ「来たっ!」ジュンは竿を手に取るとそのまま大きく合わせ、うなぎとの戦いを開始する。金「た~すけてかしらぁ~!!」ジ「悪い、こいつを釣るまで待っててくれ!」金「しょんなぁあああああ~!!」銀・翠「「待てぇええええええええ!!」」み「あぁん、必死に走り回るカナもきゃわぃいい~♪」その後、迷惑料として水銀燈、翠星石、蒼星石は美味しい天然うなぎの蒲焼きに舌鼓を打ったのであった。金「うぇええ~ん、カナも食べさせてほしいかしらー!」パタパタ翠「やかましいです!さっさと追加を焼くですよ!!」銀「ほらぁ!もっと強く扇いで炭を起こしなさぁい!!」蒼「うん、やっぱり夏はうなぎだね♪」金「びぇええええええ~ん!!」ちゃんちゃん。
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