ずっと傍らに…激闘編 第一章~ジュンside~
──チュンチュン…チュンチュン…雀がベランダで鳴いている。昨日あんだけ早く寝たのになぁ…いや、逆に寝すぎたか…こんなに空気の淀んだ朝は初めてだ。下では…どうやらねーちゃんが誰かと電話してるらしい。声が聞こえてくる。の「すすす…水銀燈!大変なのよ…」きっと余計なことを話すんだろう。そう思った。せんたくのりめ…と、ここで思い出して携帯を開く。昨日あんなことがあったから、あいつらが心配してメールしてきてるかもしれない。ジ「やっぱりそうか…」そこには何回もメールを送った後、手段を電話に切り替えて何度も何度も掛けてきたことが記されていた。だが、そのように履歴に残ってるのは翠星石のだけである。公衆電話からのもあったものの、蒼星石や柏葉のは一件も履歴に残っていない。何故だ──ブルルブルル…バイブだ……画面の表示を見ると、やはり翠星石からだった。すぐに電話に出る。ジ「はい、もしもし…」翠『ごめんですぅ~許せですぅ~』必死な声が耳にワッと飛んで来る。そこで瞬時に昨日の一場面が思い浮かんだ。あの時、八つ当たりしたのは…ジ「僕も…悪かった」翠『ジュン…』ジ「…」翠『うぅうぅぅぅっ…くぅぅぅぅっ…』ジ「おいおい、泣くなよ」翠『…だって…昨日は全然返事もなくて…心配だったんですよぉぉぉぉ…」ジ「…そか。ごめん」翠『…うぅっ…』ジ「…」翠『…それで…ジュン?』ジ「ん?」翠『今から学校に──』ジ「行きたくない」ピッ通話中断!判ってるよ。お前が短気なのも泣き虫なのも。それに、冷静に考えてみれば、僕も翠星石に辛く当たったのは悪いと思ってる。でも僕が今どうしたいのかはハッキリしているんだ。もう学校になんか行きたくない。あいつらは僕のツラを見て笑うに決まってる。あのクラスが嫌だ…あの学校が嫌だ…僕は1人でいいんだ。その方がラクに決まってる──僕は布団を被った。ピンポーン誰か来た。水銀燈がわざわざねーちゃんを誘いに来たのか?…いつもは途中の交差点で合流してるのに──僕は窓から誰が来たのかを見ようとした…が、窓から顔を出そうとしたところで悪寒がした。僕は外に出たくない…とてつもなく恐ろしい世界なんだ。だから震えるんだ。鳥肌が立つんだ。冷や汗が出るんだ──そう思うと、再び布団を被るしかなかった。の「ジュンく~ん!巴ちゃんよぉ~…ねぇ…起きて来てよ~」ねーちゃんは泣きそうな声で僕を呼ぶ。それがまた僕をイライラさせる。でも柏葉か…まぁインターホン越しにでも話してみるか。ジ「ちょっと待てよ。今下りるから」-----1階に下り、インターホンのモニターを見る。そこには柏葉が心配そうに立っていた。僕は受話器を取った。ジ「はい」巴『おはよう』ジ「ん…」柏葉の顔が急に顔が明るくなった。巴『眠そうな返事はいつも通りだね』ジ「ん…そか?」巴『ふふ…』いつもなら交差点で交わす毎朝の会話。少しだけだが、鬱な気分が和んだ。でもこのまま話し続けても延々と会話が続くだけだ。早く言うべきことを言っておかないと…ジ「それで話があるんだけど…」巴『何?』ジ「…」柏葉は明るい表情のままで聞いてくる。僕はその顔を見ると言葉が出てこなくなった。“学校へ行きたくない”と──ジ「…」巴『…いいのよ。言いづらいのなら』ジ「あ…」巴『無理して言わなくてもいい…』ジ「…」巴『将来、私の服を作ってくれたら嬉しいなぁ』ジ「…」巴『翠星石にも蒼星石にも作ってあげて…』ジ「…」巴『のりさんにも水銀燈にも真紅にも…』…いよいよ瞬きを止められなくなってきた。翠星石の泣き虫が移ってしまったのか…ジ「…」巴『…わかった。じゃあ行ってくる』ジ「…おぅ…ごめん」巴『…仕方ないよね』ジ「…」ここで柏葉の顔が真顔になった。僕はずっと言葉少なだったから怒らせてしまったのかと不安になった。巴『うん、潰しに行って来る』──驚いた。ジ「え!?」巴『戦場へ』声を低くして、予想だにしないことをどんどん言い始める。こっちは心臓がバクバクと悲鳴を上げている。ジ「な、何をいきなり…」巴『もう怒った』ジ「…」巴『翠星石、昨日の帰りに泣いてたの。知らないでしょ』ジ「さっきも…電話越しに泣いてた」巴『電話したんだ…』ジ「蒼星石とは話してないけど…」巴『そ…』ジ「そうだ」巴『ふ~ん』ジ「…でも戦場って…」巴『…他クラスだからって、甘く見ないで。じゃ』ジ「…」僕は受話器を定位置に戻した。の「ど、どうしたの?」ジ「…」僕はうわの空で自分の部屋のある2階へ上り、ベッドに横たわった。気になる…こっちが心配になる…何をしに学校へ行くんだ?いや、これは柏葉が僕を学校へ向かわせる作戦なのか?…でも…ダメだ。僕は学校へ行けば周囲に潰されるんだ。あんな環境、僕にとっては地獄なんだから──
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