ずっと傍らに…激闘編 序章~ジュンside~
中学2年のまだ始まってすぐの頃。外では桜の花びらがほとんど散ってしまっている。そんなある昼休み。翠星石は蒼星石や他の友人たちと外へ行った。普段なら僕を誘っていくはずなんだが、珍しい…だが、教室で洋服を作るためのデザインを考えるなら今のうちか──小学校の家庭科の時間、翠星石に「お前そんなに不器用だったんですかぁ?」と馬鹿にされ、(翠星石だって同じぐらい裁縫がダメダメだったくせに…)ムキになって裁縫の特訓をした結果がこれだ。ハマりすぎた…でもここまで来たなら、自分で何かデカイものを作って翠星石を驚かせてやろう。しかしそれをどうするか…洋服でも作ってみようかなぁ…そうやってワクワクしながら、1枚目の紙に大まかなデザインを描いていって、2枚目の紙に布の寸法等の詳細を書き込んでいった。軽い気持ちで。そしたら、ある2人組みが僕の席に近づいてきて、いきなりその紙を奪ってきた。必死に取り返そうとする僕だったが、奴はそれを嘲笑うかのような口調で聞いてきた。A「おい、桜田~これ何だよ?」ジ「デザインだよ」A「何の?」ジ「洋服だよ…」A「ってか、これ女モンだろ?形といい色合いといい、怪しいぜ」B「いや、これ普通に女モンだろ?胸に膨らみなんか描いてるぜ?」ジ「おい、やめろ」A「おっと、こんな最高傑作手放すわけにはいかねーw」 B「黒板に貼ってみんなに見てもらおうぜ!」A「“重大告知!桜田ジュンはこんな趣味持ってました!”」B「それいいねぇ!」A「クラスの奴らの反応が楽しみだな」ジ「返せよ!」A「誰が返すもんか!」僕は席から立ち上がってそれを奪おうとした。が、奴は教室から飛び出し、それを持ったまま廊下の向こうへ走り去ってしまった。奴らは足が学年でも大分速い方だったので、僕は追いつけるわけがない。泣き寝入りするしかなかった。翠星石に対する秘密の計画が秘密でなくなることより、クラスの反応が怖い…~~~~A「はい注目!桜田の最高傑作を見てくれぃ!!w」その後の5時間目の授業が終わると、奴は予告通り黒板に笑いながらそれを貼り出した。一気にそこに集るクラスの生徒たち。どっと笑いが起こる。翠星石たちも見てるんだろう…。そのうち他クラスの生徒も押し寄せてきた。もうダメだ…X「うはwこれマニアかよw」Y「これはヲタクの範囲だよなw」Z「き、気持ち悪い趣味持ってんだな…」だから何だよ…B「先生が来たぞー!」人が多すぎて見えなかったが、その声と同時にあの紙は剥がされたらしい。生徒たちは一斉に自分の席に戻った。やっと6時間目が始まるのか。でも…この周りの雰囲気に押しつぶされそうだ…SHRが始まった。担任の梅岡が連絡事項を言ってる間も周囲からクスクス笑いが消えない。さっさと帰ろう。帰りたい…独りになりたい…起立、礼の号令が終わると、僕は誰よりも先に自分の席を後ろに運び、大急ぎで教室を飛び出しそうとした。そこに現れる1つの手が僕の左腕を掴んできた。翠「ジ──」ジ「離せ!馬鹿!」僕は全身でそれを振り払って教室から飛び出した。校舎から出ると、上の方から翠星石が罵声を浴びせてくる。翠「お前なんか!一生学校来んなです!もう一生翠星石の前に現れるな!!です!!」くそっ!あんなこと言いながら、後々猛ダッシュで僕を捕まえに来るに違いない。とにかく、翠星石に追いつかれるのが嫌だったから、僕は後ろを確認しつつ右折左折を繰り返して走って帰った。家に着くと、真っ先に自分の部屋へ駆け上がり、ベッドに潜り込む。もう食欲なんて全然ない。このまま寝てやろう。みんな、どうにでもなれ──あ、でもこのまま眠るのも嫌だな…風呂ぐらいは自分で洗って沸かして入って、あとは歯だけ磨いておくか…
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