ずっと傍らに… 第6話~蒼星石の問いかけ~
蒼「ふぅ、ようやく食器が片付いたね…」小学校・幼稚園組の朝食も終わって、翠星石と蒼星石は食器を洗い終えた。翠「そろそろ巴が来る頃ですよ」ピーンポーン翠「あ、来たです」蒼「えぇと、カバンカバン…」翠星石はインターホンのモニターを見に行った。そこにはしっかりと巴の顔が映っている。翠星石は受話器を取った。翠「ちょっと待つです!今すぐ行くです」----翠「じゃ、行ってくるです」蒼「行ってきまーす」紅「行ってらっしゃい」雛「ヒナはまだ行かないもん!」金「でも、夕方があるじゃない」雛「むー…」薔「テレビと一緒に幼稚園に連れて行ったら万事解決かもね」雪「テレビはペットじゃありませんわ」紅「シッ!もうすぐ始まるわ」雛「えぇぇ~!?」翠「ほら、雛苺、行くですよ!」 翠星石と蒼星石は雛苺を連れて(半ば強引に)家を出た。真紅たちは某探偵番組を観るために少し遅めに家を出るのだが…雛「とぉもぉえ~この2人に何か言ってやってなの!」巴「…う~ん」雛「あ~~もう、見たいの!!」翠「あれは夕方にも再放送があるんですから見る必要はないです」雛「じゃあ今日は夕方までに迎えに来てくれるの?」翠「そ、それは…」雛「翠星石のバカ!」翠「なっ……じゃあ幼稚園に行くなです!」巴「2人とも、喧嘩はや──」雛「真紅に送り迎えしてもらうもん!」翠「コラ!チビ苺!待つです!」雛「ジュンに言いつけてやるんだから!」雛苺は蒼星石と繋いでた手を振り払い、門扉を開け、玄関のドアを開き、家に引き返していった。蒼「あ…」巴「…」翠「ったく…あのチビは…」蒼「懐いてもらえないね」翠「…仕方ねぇです。これ以上遅くなると遅刻するですから──」 両親が海外赴任中の今、雛苺の送り迎えは翠星石と蒼星石の役目である。が、実際に下の子たちを動かす権力を握っているのは真紅である。さらに翠星石は普段からガミガミ五月蝿いという理由で雛苺にはあまり好かれていない。両親の海外赴任を境にイジメっ子から一転、親代わりになった翠星石はこうして雛苺との付き合い方に苦労している。翠「まーったく、そもそもこの家のチビどもは無茶苦茶ですぅ…チビばらしーもチビカナも…」蒼「まぁ、遊びたい盛りなんだから…」巴「真紅ちゃんに任せたらいいんじゃない?」翠「甘やかすなです!後でエライ目に遭いますよ?」巴「翠星石も変わったんだね」蒼「ふふ…そうかもね(去年と比べると、母親役も板についてきたなぁ)」翠「…何ですか?」蒼「何でもないよ」巴「うん、別に──」翠「…」蒼「…」巴「…」翠「…」蒼「…あ、そうだ」ちょうど空気の流れが止まった時、蒼星石は思い出したように切り出した。蒼「起きた時からずっと気になってたんだけど…」翠「…何です?」 蒼「…水銀燈と何で喧嘩したの?」巴「え?また喧嘩したの?」翠「…」翠星石はまた胸がキュッと締めつけられた感じがした。翠「それは…」蒼「…」巴「…」翠星石が朝食を作る最中に襲われた不安が蘇る。心の中のモヤモヤが堤防を乗り越えてきそうだ…今、蒼星石に聞きたいことを聞いておかないと後悔する…翠星石は思った。翠「蒼星石は…ジュンとはどうなりたいんですか…?」蒼星石はハッとした。翠「巴も…ジュンとはどうなりたいんですか?…」巴もまたハッとした。 蒼「…」巴「あ…」翠「…」蒼「…」翠「…やっぱり…ですか」巴「や、やっぱりって…」蒼「いや…ちょっと待って──」翠「…!」翠星石は何も言わずに駆け出してしまった。だが、蒼星石も巴も後を追おうとはしなかった。蒼「僕は翠星石を応援する。でも僕は…僕だって幼馴染なんだよ……」巴「…」
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