ずっと傍らに…番外編 第1話~小学校の思い出~
日曜。今日も昼飯が終わり、水銀燈は紅茶を嗜み、蒼星石が食器を洗っている。真紅は自分の部屋で読書。金糸雀、雪華綺晶、薔薇水晶、雛苺の4人は外へ遊びに行った。翠星石はリビングのテレビをつけ、とある番組の再放送をぼんやりと見ていた。丁度今は日本全国のどこかの小学校を訪問するコーナーであった。ディレクターが児童に取材する。デ『君、何年生?』児『6年です…』デ『これ、何やってんの?』児『え?栽培委員の仕事…』翠「あっ」その児童は花壇の花の植え替え作業をしている。翠星石は“栽培委員”という言葉に敏感に反応した。そういえば、懐かしきあの頃──~~~~~それは今でも忘れられない、6時間目のHR。担任の先生が黒板に委員会の数だけチョークで区切り線を引き終わり、こちらへ向き直る。先「さて。それじゃあ、今学期の委員を決めたいと思います」全「え~~~~!」翠星石は同じ班のメンバーの座席位置を今でも覚えている。翠星石の前がジュン。その左隣が巴で、翠星石の左隣が蒼星石で…そしたらジュンがいきなり振り向いてきて…ジ「お前、1学期はジャンケンで負けて蒼星石を置き去りにしたもんなw」蒼「いやあれは仕方のない…」翠「黙れです!掲示委員で押しピン地獄に泣いた奴は誰だったんですかねぇ~?」ジ「お前こそ『指にタコが出来そうですぅ~』って泣きべそ掻いてたくせに!」蒼「まぁまぁ、2人とも…」巴「まーた、仲良しね──」先「みなさんは5年生の時も委員をしたことがあるはずなので判ると思いますが、 全員何かの委員をやってもらいます。但し、1学期と同じ委員にはなれません! あと、1つの委員会につき定員は男女問わず2人ずつです。 希望者がそれを越えたらジャンケンで決めてもらいます。 では、自分のなりたい委員のところに名前を貼っていってください」児童が座っていた座席から一斉に飛び出し、黒板に自分の名前が書かれたネームプレートを貼っていく。翠「今度こそ栽培委員になってやるですっ!」他の者どもを押し退け、真っ先に『栽培委員』の下に貼り、自分の席にひょいと戻る。蒼「う~ん、栽培委員は前回やったし…迷うけどここに行きたいな」蒼星石は『保健委員』の下に貼る巴「じゃあ私は…ここかな」巴は『放送委員』の下に貼るジ「…う~ん、どこが良さそうかなぁ…ここなら“アレ”が無さそうだ!」ジュンは『保健委員』の下に貼ったが、その後すぐに別の男子児童に貼られる。ジ「定員オーバーかよ…ジャンケンしたくねぇええええ…」巴「それなら、うちに来る?」ジ「おぅ、そうする!絶対そうする!」当時、ジャンケンに非常に自信が無かったジュンはネームプレートを外し、枠が空いていた『放送委員』の下に素早く貼る。──ジュンがここまでジャンケンを避けるのには訳があった。“アレ”…つまり居残りが嫌なのである。例えば美化委員。美化委員は週に2回、いちいち居残りで自分の教室の掃除状況のチェックをしなければならないし、それを適当に済ましたり、サボったりしてしまえば担任に呼び出しを食らって職員室横の廊下の端っこで、こっびどく叱られるのである。そして、最も不人気な委員の1つでもある。というわけで、被った時にジャンケンに負けたらそういった委員へ飛ばされかねない。だからジュンは“ジャンケンは避けなければ負け”だと昼休みに巴たちに熱弁していた。ジ「ジャンケンで負けて嫌な委員に飛ばされなければ、それでいいよ…」巴「そんなに居残りが嫌なんだ…」ジ「当たり前だ!居残りで遊ぶ時間を削られたくないし──」しかし、またしてもジュンの後に貼る者が現れた。それを見たジュンは慌ててネームプレートを外して、他の空いてる委員を探した。さらにその様子を自分の座席から見ている翠星石と蒼星石──翠「まーったく、滑稽にもほどがあるです」蒼「…ちょっと待って、栽培委員に張ったみたいだよ」翠「え?…」ジュンが次に狙ったのは確かに栽培委員。『桜田』というネームプレートを貼られているのが見える。巴はその横で苦笑いしていた。翠「ジュン…」----全員が席に戻った。栽培委員は翠星石とジュン以外に誰も志望しなかったのでジャンケンなしで決定となった。翠「な、何でまた翠星石と同じ委員に…栽培委員も居残りで花の植え替えとかあるですよ?」ジ「お前は人見知りが激しいからなぁw 救ってやっただけだよ」翠「6年間も居て顔見知りが居なくて苦労するなんて、ジュンぐらいしかいないです!」ジ「何だと?この性悪!」翠「何ですかこのチビ人間!翠星石より7cmも低いようじゃまだまだですね~」ジ「まぁ、2年後には抜かすけどな」翠「そうなったら頭の上に土嚢を積んでやるです!」ジ「はぁ…もうほんと泣きたいよ…何でこんな性悪が中学も──」翠「あっ!!また言ったですね?次言ったら本気で殴りますよっ!」ジ「ああ、何度でも言ってやるよ。この性wa…ッグ!モゴゴモ…」巴「桜田君!もうやめて!」翠「ムッキー!もう我慢でき──だ、誰ですか?はーなーせーでーすぅっ!」蒼「翠星石、これ以上ジュン君を困らせたらダメだよ…」ジュンがただの幼馴染ではなくなったのも、この頃からかなぁ──翠「(イーッヒッヒッヒw これからが楽しみですぅ♪)」~~~~~~~~~~翠「グヒ、グフフフフw…」いきなり翠星石が不気味に笑い出したので、水銀燈は紅茶を吹きそうになり、蒼星石は危うく食器を落とすところだった。蒼「ちょっとまたぁ?!最近多いよ?」銀「ったく、ジュンくんの家にでも行ってくればぁ?」翠「…ご、ごめんです……」蒼「ねぇ、そろそろいいんじゃない?」銀「高2にもなって、グズグズしてると…」翠「…ふ、不安になるようなことを言うなです!」蒼「不安も何も…今なら振られることは無いと思うよ?」翠「…そ、そうですかぁ?」銀「でも翠星石は突き放してばっかだしぃ~」翠「…」蒼「それでも、ジュン君はわざとじゃないって判ってるはず──」銀「甘いわ!蒼星石。たとえ3年前にジュンくんを復帰させた翠星石であっても…」翠「…」銀「あんまり冷たくしてると──」翠「…冷たくなんかしてねぇです!」銀「あ~ら、そぉ」翠「今に見てろです!近いうちに両想いだったという証拠を突きつけてやるです!!」銀「へぇ~」翠「──翠星石を…なめんなです!」翠星石はテレビを消してドスドスと足音を立てながら2階へ上っていった。蒼「なんか…物凄く熱が伝わってくるんだけど…」銀「あの子の“本気”が拝めそうねぇ。(ニンマリ)」蒼「(かなわないなぁ…水銀燈には──)」
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