水銀燈×蒼星石
校門に向かって小走りに進む影があった。蒼 「うぅ…すっかり遅くなっちゃった。…怒ってるだろうなぁ。」水 「当たり前でしょぉ。私は待たされるの大嫌いなのよぉ?」蒼 「うわ!水銀燈!」水 「ちょ、ちょっと蒼星石…なんでそんなに驚かれなきゃいけないのよぉ…」蒼 「ご、ごめん。いきなり出てくるからお化けかと思って…」水 「…じゃあ何で水銀燈って呼びかけたのよぉ。」蒼 「な、なんとなくかな…」水 「…まぁ、それは置いといて。貴女、今日は6時までに部活が終わるって言ってたわよねぇ?」蒼 「…はい、言いました。」水 「だから6時ごろに校門に居てくれれば一緒に帰れるよ、って言ってたわよねぇ?」蒼 「…言いました。」水 「今、6時40分まわったころよねぇ。」蒼 「…ごめんなさい。」水 「この寒空の下、40分も待たされたのよぉ?ごめんの一言で許すわけないじゃなぁい。」蒼 「…なんか奢るよ。」水 「あら、そんなこと言っていいのぉ?私、すっごく高いもの奢ってもらうわよぉ?」蒼 「…常識の範疇で選んでくれると信じてるから。」水 「ん~…しょうがないわねぇ…それじゃ、本当に高いもの、奢ってもらおうかしらぁ。」 …一瞬、二つの影が重なった。
「やあ水銀燈」「蒼星石?貴女がサボりなんて珍しいわねぇ」「僕だってたまにこういう事をしたくなる日があるさ…隣、いいかい」「ええ、どうぞぉ。男の子だったら尚良かったんだけど」「おあいにく様。僕が男の子みたいなのは外見だけで、中身は立派な女の子だよ」「ほんとにぃ?ふふふっ、確かめてあげようかしらぁ」「水銀燈、それは僕への挑戦と受け取っていいんだね?」「…ちょ、ちょっとぉ。冗談に決まってるじゃないのぉ」「本当に?その割にはなんだか楽しそうだったけどね」「も、もちろん冗談よぉ!ていうか、貴女目つきが怪しいわよ…」「そう?ふふっ、残念。僕としては本気でも良かったんだけどね」「……貴女、そっちのケがあるの?」「うわ、そんな見て解るほど引かなくても。僕はね、どっちでもイケるタイプなんだ」「い、一応ほら。私はノーマルだからぁ……」「大丈夫大丈夫。一度経験してみるといいよ。世界が変わるよ?」「あまり変えたくないわぁ…」「女同士だから解るツボ、っていうのもあるんだよ…ほら、例えばこんな風に」「うぁ…ちょっ、と…変なところ…触らないでよぉ……」「うん?別に僕は君の首を撫でているだけだよ。そんなに変なことじゃないさ」「や…ダメだってばぁ。私はそっちのケは…いやぁぁぁぁ…!」
-あらあら~おやおや~それからどんどこしょ~-
「…なんで蒼星石を見て頬を染めやがるですか、水銀燈」「少しだけ視野が広がったんだよ。薔薇水晶、これでいいのかい」「ん……蒼星石、感謝……」「……もしかして、私…ハメられたぁ……?」「愚かね」「ヒナヒナヒナ!」「カナカナカナ!」
「退屈ねぇ・・・」学校の屋上で私は一人彼、もとい彼女を待つ。待ち合わせを約束させておいて一人遅れるとはどういう了見なのだろう。後でしっかりお仕置きしてあげなくちゃ、などという多少不謹慎なことを考えつつ空を見上げた。いいお天気。ただ真っ青なだけの空ではなく、綿のところどころ浮かんだ空。私は影に包まれているのに、上には透き通るような蒼色が見える。まるで、あの子のような、美しい色。「何かいい物でも見えたのかい?」そして、あの子。「遅いわよぉ蒼星石。」「ごめんね、途中で先生に教材運べって言われてさ。お詫びに飲み物買って来たよ、ほら。」何?その笑顔は。無条件で許したくなっちゃうじゃない。「水銀燈はレモンティーとミルクティーどっちがいい?僕はどっちでも・・・ひゃぅ!」だから、耳を甘噛みしてあげる。「蒼星石は悪い子ねぇ・・・物で人に許して貰おうなんて・・・」「ふぁぁっ・・・やめてよぉ水銀燈・・・」耳たぶはこの子の急所。しかも私の稚拙な行為でも感じてしまうのだ。「許して欲しいんなら愛してるって言いなさぁい。」「んん、はぁんっ・・・とう、あいしてる・・・」「声が小さい。」蒼星石が潤んだ瞳で睨んでくる。それでも私は攻撃をやめない。「・・・・・・水銀燈、愛してるっ!」OK。心でそう呟いて耳から口を離す。「ああもう本当に可愛いわぁあなたっ!」そう言って、私は彼女を昼休み中ずっと抱きしめていた。
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