涙の味
涙の味それは、学校から帰る時の出来事だった。僕はある異変に気づいた。ジ「なあ」薔「……」ジ「薔薇水晶」薔「……」そう、僕と一緒に下校している彼女・薔薇水晶は怒っていた。…もちろん理由は解らない。とりあえず場を明るくする為に、バカ話をしてみた。ジ「えっと…今日の授業さ、面白かったよな。金糸雀が授業中に寝ちゃってて、梅岡がそれに反応してチョーク投げたら見事におでこにヒット!それで起きた金糸雀の顔は笑えたな、凄いビックリしてて…」 薔「ごめん……黒板の内容写してたから見てない……」いや、嘘だ。薔薇水晶もそれを見て笑ってたはずだ。
でも僕はジ「え……そ、そうか」と言ってしまった。やっぱり薔薇水晶が怒っているから、嘘だと言えなかったのだろう。こんなグダグダな会話をしながら帰るのは流石にキツいので、怒っている理由を聞いた。ジ「……あのさ、さっきからなんで怒ってるんだよ」薔「……怒ってなんかないよ……」絶対に怒ってる…と思う。いつもより…なんとなく、なんとなく雰囲気が恐い。だけど僕は、めげずに追求した。ジ「本当か?」薔「うん……」ジ「絶対か?」薔「………」そこで薔薇水晶は足を止め俯いて、黙ってしまった。ジ「…薔薇水晶?」僕がそう呼んだ瞬間、薔薇水晶の顔から何かがポロッと落ちた。
…涙…?泣いている、薔薇水晶は泣いている。そんな薔薇水晶を見て、僕は驚いてしまった。薔「うっ…グスッ……っく…」次々と溢れ落ちる涙。正直、僕はどうしていいかわからなかった。とりあえず、どこか人目のない所に行かなきゃと思い、薔薇水晶に声をかけた。ジ「ば、薔薇水晶、そこの公園に入ろう。こんな所で泣いてたら、恥ずかしいだろ?」薔「……ひっく…ぐしゅ…」そして僕らは公園のベンチに座った。ジ「落ち着いたか…?」薔「……うん」
ジ「やっぱり怒ってたんだろ?怒ってなかったらいきなり泣くはずがないからな(よくわからないけど…)」薔「……うん」落ち着いたみたいなので、もう一回、怒ってた理由を聞いた。ジ「じゃあもう一回聞くぞ、なんで怒ってたんだ?」薔「だって……今日…銀ちゃんとベタベタしてたから…」ズザーッと転けたかったが、話を続けた。ジ「そんなにベタベタしてないと思うけどな…」というか水銀燈の場合、あっちから僕に迫ってくるから怒られるのは僕じゃないのでは?と言いたかったが、今この状況では言えないので心の中で言う事にした。……意味はないけど。薔「だって今日の朝……キスしてたじゃない…」痛い所を突かれた。それは誤解だ…と言っただけじゃ意味がないので詳しく説明した。
ジ「あ、あの時は水銀燈からいきなりキスしてきたんだよ、『乳酸菌あげるぅ~』とか言いながら…」薔「でもキスしたのは事実でしょ……?」更に痛い……。僕はもう反論出来なくなってしまった。ジ「う……そりゃ…そう……だけど…」薔「その後も鼻の下伸ばしてたし…」ジ「……」…やっぱりそう見えるのだろうか。伸ばしてるつもりはなくても、他からはそう見えてしまうらしい。そして、薔薇水晶は突然僕の腕を抱いた。薔「…どっちにしろ…私…寂しかったんだよ…?」ジ「薔薇水晶…」薔「銀ちゃんとジュンを見てたら…ジュンに振り向いてほしくて…ずっとがんばってきたけど…やっぱり…意味ないのかな…って思っちゃって……そしたら涙が出て…止まらなくて………」
薔薇水晶は涙を流しながら、そう言った。ジ「…そうだな、僕って酷い奴だよな…。薔薇水晶の気持ちも知らずに…」僕は薔薇水晶を、なるべく優しく抱きしめた。ジ「ごめんな…薔薇水晶…」薔「う…うわああああああああん!!」ジ「本当に…ごめん…」『ごめん』の一言で終わらせたくない、終わらせたくないけれど、何回も『ごめん』と言うしかなかった。薔薇水晶は、温かくて、そして冷たかった。薔「ご…ごめんじゃ……ひっく……許さないもん……ぐず…」
ジ「…ごめん」薔「うく…じゃあ………これを……」その時、僕と薔薇水晶にしか聴こえない特別な音、唇と唇が触れ合う音が聴こえた。僕の唇に触れているその唇は、甘くて、涙の味がした。薔「…ジュンの方から……してくれたら………許す…………」ジ「…ありがとう…」そして僕達は二度目の、『特別な音』を奏でた。fin
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