T18k - 最終章
『T18k - 最終章』翌朝。曇り。水銀燈が起きると、一枚のメモが置いてあった。『先に家に行ってます。遅刻しないように あなたのばらしー』水銀燈はそれを見て微笑み、階下に降りていった。チーン、とトーストが焼ける。水銀燈はそれをくわえた。テレビでは丁度ニュースが終わった。窓の外を見る。少し薄暗い。銀「(今日は降るわね・・・・・まあマルイで遊ぶだけだからいいけどぉ)」水銀燈が傘を持っていこう、と決めたそのときだった。テレビ「みんなー、元気にしてたかな?探偵くんくんの時間だよー!」銀「!!!!!」ニュースの次に始まった探偵くんくんに、水銀燈は釘付けになった。
くんくん「じゃあみんな、また来週もよろしーくんくん!」銀「ふうっ・・・・面白かったわぁ・・・・・」まばたきをする間も惜しんでくんくん探偵を楽しんだ水銀燈。銀「でも・・・あのハゲタカ中尉の態度気に入らないわぁ。・・・モグモグ」感想を述べながらもふもふとパンを食べる。ふと、時計に目をやる。銀「しまっ・・・・た・・・・・・」くわえていたパンがポロッと落ちた。時計は9時58分を指していた。
銀「はあっ・・・はあっ・・・・ち、遅刻だわ」既に10時はとっくに過ぎて、水銀燈はダッシュしている。今日は黒いワンピースを着ている。
しばらく走ると、ようやく赤月駅の前に到着した。銀「もう・・・死ぬ・・・・・これは新記録だわぁ・・・・・・あ」息を切らした水銀燈の視界に、あの薔薇水晶お気に入りのたい焼き屋が飛び込んできた。銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」
さて、ここで選択をして貰います。銀「そうねぇ・・・・・少し列んでいるけど、どうしよう」A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしらB.今日の所は止めましょう
[Aルート]銀「お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら」そうして、水銀燈は列に列んだ。案外早く列はすすみ、すぐに水銀燈の順番が来た。銀「たい焼き4つちょうだぁい。あ、その大きいのおねがぁい」親父「おう!お姉ちゃん美人だからこの小さいのおまけしてやる!」銀「ふふ、ありがと」水銀燈は親父に料金を払い、店を後にした。
[Bルート]銀「今日の所は止めましょう」時刻は10時を大幅に過ぎている。銀「(たい焼きなら・・・今度も買えるしね・・・・)」たい焼き屋を後にした。
[A・B共通ルート]駅員「まもなく白壁駅行きが2番線より発車致します。ご注意下さい」銀「まっ、待ってちょうだい!!」プシューッゴトン・・・ゴトン・・・銀「ふう・・・ふう・・・ひい・・・・ひい・・・・」水銀燈は間一髪電車に乗り込んだ。駅員「お客さんー、飛び込み乗車は禁止です。気を付けてくださいよぉ」銀「あ・・・ごめんなさい・・・・ひい・・・ひい・・・・・」
5分ほどで白壁駅に着いた電車。水銀燈は電車から降り、走って階段を上った。外は相変わらず薄暗かった。横断歩道の向かい側を見る。銀「ごめんっ!遅刻しちゃったわっ!!」水銀燈は横断歩道まで走りながら、両手を顔の前に合わせて言った。薔「・・・・遅い。・・・・ふふ、早く来て」薔薇水晶は拗ねる素振りを見せて、すぐに笑顔になった。クリーム色のセーターと紺のスカートを穿いて、赤いキャップを被っている。銀「まあ待ちなさいよ。赤信号だから」二人は横断歩道越しに話す。薔「ふふ・・・・なんで遅刻したのかなー?」平日だけあって、辺りは人気が少ない。水銀燈は少し恥ずかしがりながら、理由を説明し始めた。銀「えっとぉ・・・・・実はね・・・・」
その瞬間だった。キイイイイイイイイッッッッッドンッッ
銀「ば・・・薔薇水晶・・・・・・?」水銀燈は持っていたたい焼きの袋を落とした。すぐさま薔薇水晶の元に駆け寄る。倒れている薔薇水晶を・・・そっと抱き起こす。薔「水・・・・・銀燈」銀「なに?」薔「ふふ・・・・・おか・・・しいよね・・・・・ちゃんと・・・・・信号・・・守ったのに」銀「薔薇水晶・・・・・・・・」薔「大丈・・・夫・・・・・・だよ」薔薇水晶は笑って言った。薔「あのね・・・・水銀燈・・・・・・」
なに?薔「もし私が・・・・居なくなっちゃっても・・・・・泣いちゃだめだよ・・・」居なくなるなんて・・・・・そんなわけないじゃない・・・・・・。薔「私が・・・・・居なくなって・・・も・・・・・今まで・・どおり・・・・明るくて・・・ 素敵で・・・・・格好良くて・・・・・本当は面倒見が良くて・・・・・みんなの人気者で・・・ そんな・・そんな水銀燈で・・・・ずっと居て欲しい・・・・・」うん、私・・・・薔薇水晶の望みならずっとそんな私で居るわ。だから・・・・・・・薔「もう・・・・水銀・・・燈・・・・・泣かない・・でって・・・・言ってるじゃない・・・ 水銀燈の・・・・・泣き虫・・・・・」私は泣いてなんかいない・・・・・・・・・・・泣かないわよ・・・・。だから・・・・・・・・薔「水銀燈・・・・・・・もうひと・・つ・・・・お願いが・・・あるの・・・・・・」もうひとつ?薔薇水晶・・・・貴女のお願いならまだまだ沢山聞いてあげる。だから・・・・・・・・・・・薔「キス・・・・して欲しい・・・・・・」うん、してあげる。薔薇水晶・・・・・貴女が望むなら・・・・・・。だから・・・・・・・・・・・・・・お願い。
そんなに・・・悲しい顔しないで・・・・・・・。
水銀燈は薔薇水晶に顔を近づけ・・・・キスをした。ほんの数秒・・・・・しかし二人には永遠にも感じられた。薔「ありがとう・・・・・・・嬉しい・・・・・・・・」銀「・・・薔薇っ・・・・水晶・・・・・・・・」薔「泣かないで・・・・・・って・・・言ってる・・・・・・・・・・・」薔薇水晶は水銀燈の涙を指で拭う。銀「だって・・・・・・・薔薇水晶・・・・・貴女だって・・・・泣いてるじゃない・・・」薔「ふふ・・・・・水・・・・銀・・・・・・・燈・・・・・・・・・・」銀「な・・・・なぁに・・・?」水銀燈は涙をこらえて・・・・・できる限りの笑顔で返事をした。薔「ありがとう・・・・・・・たのし・・・・かった・・・・・・・・・・・・・・・」薔薇水晶はゆっくりと目を閉じた。水銀燈の手を握る力が・・・・・ゆっくりと抜けていった。銀「薔薇・・・・・・水晶・・・・・・?」
銀「・・・どうしたの、薔薇水晶?」紅い、世界銀「薔薇水晶・・・・こんな所で寝ちゃダメよ」辺り一面に広がる紅い世界銀「ほら・・・雨が降ってきたわ。早く起きて」それは深い紅銀「早く・・・・起きて・・・。風邪を引いちゃうわ」ケチャップの紅?・・・・・・違う銀「駅の屋根の下で・・・・雨宿りしましょう・・・だから・・・・起きて・・・・」絵の具の紅?・・・・・・違う銀「お願い・・・・・起きて・・・・・目を開けて・・・・・・・・いつもの笑顔で・・・・・・私を見て・・・・」それは・・・・・・・・・銀「薔薇・・・・水晶・・・・・・・」・・・・・紅い紅い、血の紅。銀「薔薇水晶・・・・薔薇水晶ーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!!!!」水銀燈の悲鳴は・・・・・・雨音で掻き消えた。
『T18k - エピローグ』[A.お詫びって意味も含めて、買っていこうかしら・希望編]・・・キーンコーンカーンコーン授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」
真紅と水銀燈は隣りに並んで歩いた。でも、並んでいただけ。何も喋らなかった。そのまま二人は道を進み・・・・赤月駅で電車を降りた。銀「あ・・・・ちょっと待ってなさぁい・・・真紅」先に口を開いたのは水銀燈だった。紅「あっ・・・・・・行ってしまったのだわ。何をしにいったのかしら・・・・・」しばらくして、水銀燈が紙袋を抱えて戻ってきた。銀「お待たせぇ。・・・・・これ、奢ってあげるわ」
紅「これは・・・たい焼き?ありがとう、水銀燈」真紅が食べ始めようとするのを、水銀燈が止める。銀「ちょっと待ちなさい・・・・早とちりねぇ」紅「・・・・・?」銀「これはね、ただのたい焼きじゃないのよ。世界一美味しいたい焼き。 そして・・・沢山の想いが詰まったたい焼き。私が今こうやって・・・・普通の高校生活を 送っていられるのもこのたい焼きのおかげ。だから・・・・・ちゃんと味わって食べなさぁい」真紅はしばらくきょとんとしていたが、水銀燈の表情を見て微笑んだ。紅「そう・・・・それは素晴らしいたい焼きね。美味しく頂かせて貰うわ・・・・・」水銀燈は儚げに、しかし幸せそうに笑って空を見上げていた。
銀「(薔薇水晶・・・・・・・)」銀「(貴女が居なくなってしまったら・・・・私はきっと泣いてしまう。約束は守れないわ・・・ ごめんなさい)」銀「(でも・・・・貴女の体がなくなってしまっても・・・・・貴女の想いは私の心にある・・・・)」銀「(だから・・・・貴女と私はいつまでも・・・・いつまでも一緒よ・・・・・・・・・)」紅「そろそろ・・・・行きましょう」銀「あらぁ、ごめんなさぁい」紅「そういえば水銀燈、貴女数学の課題プリント未提出だったわね」銀「それはぁ、そのたい焼きで免除ってことでよろしくお願いするわ」紅「またそんなこと言って・・・・そんなことで免除になるわけないのだわ!早く提出しなさい!」銀「あらぁ、こわ~い。あ、私こっちだから。まったねー♪」紅「あっ!ちょっと!待ちなさい!待ちなさい水銀燈!!」
『T18k』END
[B.今日の所は止めましょう・絶望編]キーンコーンカーンコーン授業終了のチャイムが鳴った。放課後になったわけだ。薔薇水晶の席には・・・・誰も居ない。紅「水銀燈・・・・・私、今日は委員会が無いの。一緒に帰りましょう」銀「・・・・・・・・五月蠅い」水銀燈は一言吐き捨てると、逃げるように教室から出て行ってしまった。紅「あ・・・・・・・・」
銀「・・・・・・・・・・・・・・・」水銀燈は何も考えずに、朝登校した道を戻っていた。ガチャッバタン水銀燈の母「あら、お帰りなさい。水銀燈」銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」母親の言葉も無視して、階段を上がっていく。ガチャッ、と自分の部屋のドアを開け、中に入る。水銀燈の部屋は、カーテンで閉め切っていて薄暗かった。バタン、とドアを閉めた。
銀「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」机の上のあるものに目を向ける。銀「・・・・・・・・・・・・・・」水銀燈はそれを手に取った。銀「薔薇水晶・・・・・・・・・・・・」それは、一枚のプリクラ。銀「薔薇水晶・・・・・・・・貴女の居ない生活なんて・・・無理よ・・・・うっ・・・・・ 会いたい・・・・・貴女に・・・会いたい・・・・・・・・」泣き崩れる水銀燈。銀「私は・・・貴女が思っているほど・・・・・完璧じゃない・・・・・・大切な貴女を失った 私は・・・・一体どうすればいいの・・・・うっ・・・・うっ・・・・・・・」水銀燈の部屋には・・・彼女の泣き声だけが響いた。
※『T18k』は『タイヤキ』と読みます
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