Blacktea-ReinerRubin-
秋深ったある日、大学の友達がいきなり誘ってきた「ねぇ、水銀燈?」「なぁにぃ?」「紅茶でも飲まない?少しお話しましょう」Blacktea-ReinerRubin-銀「何よぉいきなり」真「たまにはいいじゃない」銀「私がコーヒーに誘ったら来ない癖にぃ」真「また行くのだわ」銀「わかったわよぉ」彼女に連れられて喫茶店に入る。こんな感じの喫茶店は何年ぶりだろうか。「いらっしゃいませ・・おや、真紅さんじゃありませんか」真「久しぶりね、マスター」マスターと呼ばれたその男はどこか・・・兎に似ていた。「そちらの方は・・・おや、湖の側のカフェのバリスタさんではありませんか」銀「あらぁ、ご存知で?」「店長からお話は聞いております」真「看板娘なのね」銀「そんなとこかしらね」「またドッピオでもお願いします」銀「はぁい」真「マスター、いつものお願いするわ」銀「常連なのねぇ」真「そんなとこだわ」
彼女はアッサムティーを注目したようだった。正直言うと、私はコーヒーとお酒以外はかなり疎い。だからアッサムと言われても何のことかわからなかった。真「最近何だか浮き沈みが激しいわね」銀「そぉ?」真「こないだはルンルン言いながらヤクルト飲んでたのに、昨日は何だかどんよりしていたのだわ」この子はどうしてこう・・デリカシーみたいなものが無いのかとたまに思う。振る舞いは確かにレディにふさわしいのだろうが、もう少し考えてもいいのではと。銀「そうねぇ・・確かに言われてみたらそうかもね・・」真「素敵な男性(ひと)でもできたの?」銀「違うわよぉ」私は慌てて否定する。真「その割には・・・随分慌てているわね」銀「そんなことないわぁ・・・少し昔のこと思い出しちゃっただけよぉ」JUNが泊まった日の夢がフラッシュバックする。また少し沈みそうだ。真「そう」彼女は一言だけ言った。なんと言うか、これが彼女のやり方なのだろうと思う。必要以上の詮索はせずに自分から話すように誘導する。警察官にでもなったらどうだろうか。真「少し、葉が古いの?薫りがあまりないのだわ」
「おっと失礼。すぐに煎れなおしましょう」真「そうして頂戴。それから、お茶請けも頂けるかしら?」「かしこまりました」慣れた感じのやりとり。何だか私とJUNが店で交すような感じだった。銀「・・・好きな人できたのよ。でも、何だか相手は気付いてないだろうし・・・それに」真「?」銀「私なんかが幸せになっていいのかなぁって・・・」真「・・・貴方は今、幸せ?」私はキョトンとしてしまった。銀「幸せ・・・そうね。幸せなのかもね」真「なら、お好きになさい。私が決めることではないわ。相手がどんな方は知らないけど、貴方を引き込むだけの魅力はあるんでしょうから」銀「パッとしないわよぉ」真「あなたが外見だけで判断するとは思えないのだわ」銀「そらそうよぉ」真「そう。それよりさっき言ったこと・・昔のことと、関係あるの?」銀「・・・少しね」
銀「私ねぇ・・・人一人死なしてるのよ」真「えっ?」銀「私が小学校上がる前よぉ・・・」真「そう。その人は貴方を憎んでると思うの?」銀「わかんないわぁ・・・」真「そう」銀「でも・・・」真「でも?」銀「毎年お墓には行ってるのよぉ。それでね・・・」3年前の墓参りの帰りに、私は事故にあいかけた。相手のクルマは信号無視。だが、私は無傷で済んだ。何故か靴ひもがその日は結んでも結んでもほどけていた。・・・横断歩道で信号が青になったその時も。何故か私は靴ひもを引きずらずに屈んで結んだ。そして起き上がってあるこうとしたその時・・・銀「一歩踏み出してたら死んでたわぁ」真「そう。でも・・・その人はあなたのことを思っているわね」銀「そうなの?」真「そうよ。貴方は思われているわ。思われていなかったら・・・今私と紅茶を飲んでることはないでしょうね」銀「そうなのかなぁ・・・」真「ま、どう考えるかはあなたの自由よ。マスター、御勘定を」
どうも彼女は私の文まで払ってくれたようだ。真「またコーヒーをお願いするわ。」銀「・・・確信犯ねぇ」真「なんのことかしら?」銀「もういいわぁ」真「・・・正直になること。私からは、それだけよ」自分に正直に・・・なんだかそんなことを考えて生きてきた気がしない。これからは、‐少しだけでも‐自分に正直になろうかと思う。クリスマスは・・・思いきって誘ってみよっかな。おしまい
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