「新説JUN王伝説~序章~」第14話
第14話真紅と黒王との戦いから1ヶ月…ジュンは北斗神拳の巻物の解読を進めていたジ「覇あああああああああああ…!!」ジュンは精神を集中させ静かに闘気を高めてゆく…周囲の大気はジュンの気迫に呼応するように張り詰め震えていたジ「噴っ!!」刹那、ジュンが高速の拳を振り抜く、するとゴゥ!と音を立て空気が声を上げるジ「てえええええええええぇぇい!!」続けて繰り出された凄まじい蹴りは大気が焼けきれるような勢いで空を裂いたジ「破あぁっ!!たあぁっ!てえええええええええぇぇい!!」そしてその後もジュンは高速の拳や蹴りを繰り出してゆく…その一撃一撃の衝撃は天を衝くかの如き勢いを抱き空間を引き裂いていった…ジ「ふぅ…」全ての型を終えたジュンは小さく息を吐いた毎朝早く、ジュンは庭先で武芸の型を行う。しかしここ最近は新たに覚え始めた拳を型に取り入れながら鍛錬を重ねていたジ「ふぅ、やっぱすごいな…転龍呼吸法は…あれだけの無茶な動きを繰り返したのに全く苦にならないなんて…」新たに取り入れた拳…それは言うまでもなくジュンが現在必死に解読、会得に勉めている伝説の拳法『北斗神拳』である
雪華綺晶から巻物を託されてからジュンは少しずつだが確実に巻物を解読し、記された技の数々を己のものへと取り入れていたジ「よしっ…今日の稽古は終わり。さて…朝飯食って学校に行くか…」朝の日課を終えたジュンは姉が作る朝食を摂るべく家の中に入るこうして今日もジュンの1日が始まるのであった…パカラ…パカラ…早朝の道に蹄の音が響く愛馬黒王の背に乗っての登校はジュンのいつもの風景だ。ジ「うぅ、随分と寒くなったよなぁ。」ジュンは軽く身震いをしながら黒王に話し掛ける黒『そうですね、しかし私はこの張り詰めたような寒い朝は嫌いではありませんよ?』黒王は白い息を吐き出しながら主の問いに答えたジ「まぁ目が覚めるってのは結構な事だけど…ん?」ジュンの目に見慣れた後ろ姿が映る。長い白銀の髪を揺らして歩くそれは冬のこの季節はより一層美しく見えたジ「よ、水銀燈。」銀「あらぁ、ジュン。おはよぉ。」ジュンはその髪の主である水銀燈に話し掛けたジ「おう、今日も寒いな。」銀「うふふ、そうねぇ…あ、だったら黒ちゃんから降りて私と歩かなぁい?た~っぷり温めてあげるから。」
水銀燈は上目遣いで色っぽい笑みをジュンに向けたジ「ば…バカ言ってないで行くぞ。遅刻しちまうだろ(///)」銀「くすくす、照れちゃってぇ…」同い年のくせにやたら大人びた雰囲気を持つ彼女にジュンは度々困らされていた随分と慣れはしたがどうも彼女からは一本を取れそうにないというのがジュンの正直なところであった…その時である?「す~いぎーんとっ♪おはよう♪」『ぎゅっ』銀「きゃぁっ!!」水銀燈がふいに小さな悲鳴を上げたジュンが水銀燈を見ると彼女の背後に誰かが抱きついていた銀「ち…ちょっと!めぐ!!(///)」それは水銀燈とは異なるが同じくらい長く美しい黒髪を持つ少女であった。彼女の名は柿崎めぐ。水銀燈の無二の親友であるジ「よ、めぐ。朝から元気だな。」め「おはよ、ジュン君。」銀「ち…ちょっとぉ、いい加減離しなさいよぉ!!」抱きつかれっぱなしの水銀燈が抗議の声を上げるめ「あら、ジュン君には温めてあげるって言ってたのに私はダメなの?」めぐが後ろから悪戯っぽく水銀燈に囁く銀「き…聞いてたのぉ?」め「勿論♪でも寂しいなぁ…やっぱり水銀燈は私との友情よりジュン君を取るんだね…」
めぐは小さく息を吐き残念そうに呟く銀「そ…そういう問題じゃ…」め「じゃあ水銀燈は私の事好き?」めぐは抱きついたまま身を乗り出し水銀燈の目を見つめて言った銀「だ…だからそういう問題じゃ…」め「そう…やっぱり私のこと嫌いなんだね…」めぐはうつむき心底残念そうに呟いた銀「そ…そんなわけ…」逆に水銀燈は普段見せないような困った表情を見せてあたふたと取り乱すめ「ちゃんと水銀燈の口から聞きたいなぁ…フゥ」銀「あ…んっ…(///)」めぐは続いて水銀燈の首筋に小さく息を吹きかけたすると水銀燈の白い肌がみるみる真っ赤になってゆく銀「す…好きよぉ…(///)」ボソッめ「何ィ~?聞こえんなぁ♪(ニヤニヤ)」水銀燈の小さな呟きにめぐはニヤニヤとした笑みを浮かべた銀「…っ!!め…めぐのお馬鹿さぁん!!もう知らないんだからぁ!!(///)」ダッ…水銀燈はめぐを振りほどくと顔を真っ赤に染めて走り去って行っため「あ~、やっぱり水銀燈で遊ぶのはたのしいな♪」残されためぐは唖然とするジュンの横で楽しげに笑ってみせた
ジ「相変わらずだなぁ…」め「ん?なにが?」ジ「あの水銀燈をあそこまで取り乱せられるのはめぐくらいなもんだなってことだよ。」め「ふふっ、なんせ水銀燈とは長い付き合いだからね。」以前水銀燈から聞いたが、彼女たち2人は幼なじみであり昔からの親友であるというめぐは幼いころ病弱で幾度も入・退院を繰り返していたが現在は治療の甲斐もあり普通の人と変わらない暮らしを送っているめ「私は水銀燈のことならスリーサイズから最後のおねしょまで知ってるよ。」ジ「そ…それはどうかと思うぞ…って!だべってたら遅刻しちまうぞ!!」め「ありゃ、本当だ。じゃあまたねジュン君。」めぐは手を振りながらジュンから離れて行ったジ「あれで昔は病弱だったなんて…なんか信じられないなぁ…」黒『人は見かけによらぬといいますからね…』ジュンは呆れたように呟きながら黒王の手綱を引き自らも通学路を進んだ
その日の昼休み…銀「はぁ…まったくめぐったら…よりにもよってジュンの前であんな事しなくってもいいじゃなぁい…」ジ「僕がどうかしたのか?」銀「えぇ、あれじゃ私のイメージが…ってジュン!?」突然独り言に入り込まれた水銀燈は目を丸くして驚いたジ「そんなに驚かなくたっていいだろ?」銀「い…いきなり話し掛けないでよぉ…で、何の用?」ジ「いや、昼飯だよ昼飯。お前ずっとブツブツ言ってたから食わないのかなって思ってさ。」銀「た…食べるわよ!余計な詮索しないでほしいわぁ…」今日の水銀燈はやたらとあたふたとしている…原因は恐らく今朝のめぐとの一件であろうジ「それにしても…めぐって本当に病弱だったのか?」ジュンはふとした疑問を水銀燈に問いかけた銀「え?」ジ「今朝…いや、今のめぐを見る限りじゃ昔病弱だったなんて想像できなくってさぁ…」すると水銀燈は小さく笑って答えた銀「そうかもね…でも今のめぐがあるのは本当にめぐが頑張ったからなの…昔は辛い治療に生きていくことすら嫌がってたこともあったわ…でもめぐはその苦しみを乗り越えて、立派に病気と戦った…」
水銀燈は懐かしげに呟く。その口調はいつもの妖艶な猫なで声ではなく、我が子を慈しむような穏やかなものであった銀「あの娘ったら…発作で苦しんでる時に水銀燈…水銀燈ってずっと私を呼んでいたの。親やお医者さんじゃなくって、私の名前を…だからその時私は決めたわ。ずっとあの娘の親友でいてあげるって…まぁ、今じゃ元気になりすぎて振り回されっぱなしだけど…」ジ「水銀燈…」銀「あ…あらぁ、ごめんなさぁい…ちょっとお喋りがすぎたわねぇ。」ふいに水銀燈ははにかんだようにいつもの口調に戻ったジ「水銀燈、お前っていい奴だな。」銀「なっ…と…突然何を言うのよぉ!?お馬鹿さぁん!!(///)」その時、教室の扉が開いてめぐが顔を覗かせため「水銀燈、一緒にお昼食べない?」銀「え…えぇ、今行くわぁ。」水銀燈は弁当の包みを片手にそそくさとめぐに駆け寄って行っため「たまにはジュン君も一緒にどう?」ジ「いや、折角だけど2人の邪魔にはなりたくないからな。ありがとな。」め「そう、じゃあ水銀燈借りてくね♪」そして2人は教室を出て遠くへと歩いていったジ「親友…か。」残されたジュンは教室で2人の様子を思い出しながら呟いた
ベ「呼んだか?ジュン。」するとお馴染みのM字禿が声をかけてきたジ「なんだ…ベジータか。」ベ「なんだとはなんだ!折角親友の俺様が昼飯の誘いを…ひでぶっ!!」鈍い音を立てて倒れ込むベジータの背後には真紅や翠星石たちがいた翠「暑っ苦しいからM字はすっこんでやがれですぅ!!」紅「ジュン、一緒にお昼を食べてあげるのだわ。紅茶を用意なさい。」金「かしら~♪」雛「なの~♪」ベ「こ…ここからが本当の…ぐふっ。」ジ(親友…ねぇ。)ジュンは後頭部から煙を出して倒れたベジータを見ながら小さくため息を吐くのであった…放課後…黒『お待ちしておりました、我が主。』校門にはいつものように黒王号が待機していたジュンはそれに飛び乗り学校を後にした黒『さぁ、日が暮れぬ間に帰るといたしましょう。』ジ「あ、今日は楽しみにしてた雑誌の発売日なんだ。悪いけど商店街までお願いできるか?」黒『はい、お安いご用意です。』黒王はジュンの頼みを聞いていつもの帰り道とは違う経路を進んだ
しばらく進んだ時であった…『キュキュキュ…』ジ「ん?」ジュンは妙な音を耳にしたジ「今…変な音がしなかったか?」黒『ええ、何か…車が急発進するような…』ジ「……」ふいにジュンは得体の知れない胸騒ぎを感じたジ「黒王、すまないが今の音がした場所まで連れて行ってくれ。」黒『御意!!』ジュンの命黒王を受けた黒王は先ほどの音の発信源と思われる場所を割り出し疾走を始めたそして数百mほど進んだ小さな通りに辿り着いた時、ジュンの目には道端に倒れた人影が映ったしかもそれは自分のよく知る銀色の髪の持ち主であったジ「水銀燈!!」ジュンは黒王から飛び降り水銀燈のそばに駆け寄るジ「おい!どうした、しっかりしろ!!僕だ、分かるか!?」ジュンは水銀燈を抱き起こし必死に声を掛ける…するとかすかに水銀燈の瞼が動いた銀「ジュ…ン?」ジ「水銀燈、よかった……でも、何があったんだ!?」すると水銀燈は必死に口を動かし消えそうな声で囁いた銀「めぐが…さらわれた…」ジ「なんだって!?」銀「うぅっ…」その一言を放つと水銀燈は再び気を失ってしまったジ「しっかりしろ!水銀燈!!水銀燈!!」暮れかけた狭い路地にジュンの必死な呼び声だけが響きわたった…続く
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