雪が降る。
雪が降る。他の人は雪のことを綺麗だから好きだとか言う。けれど私には綺麗に見えない。むしろ雪を見ると昔のことを思い出して心が痛む。あの時の醜い私を思い出す。だから私は雪が嫌いだ。雪が入っている自分の名前も、そして自分も……。そんなことはどうでもいい。今は関係ない。今はそんなことに思考に意識を向けている場合じゃない。今、意識を向けなければならないのは、私が密かに思いを寄せる目の前にいる彼にだ。彼に私は呼び出された。彼はどうしてこんな日に屋上になんか呼び出したのだろう?もし彼からの呼び出しじゃなければ無視していただろう。だけどおかしい、彼も知っているはずだ私が雪が嫌いだって事も。そして私の雪の日の過去を。それなのに何故?まあいい、きっとすぐに彼から答えが聞けるだろう。「……あのさ、雪華綺晶……」「何ですかJUM様?」彼が私の名前を呼ぶ。彼に私の名前を呼ばれるのは好きだ。何故かはわからないけど。「その……僕は……君のことが好きなんだ。だから、僕の恋人になってくれないか?」それは私には思いも掛けない言葉だった。醜い私を誰も、もちろん彼も愛してくれるはずが無いと思っていた。彼が私とよく一緒にいてくれるのは、彼が優しい人だから、私のことをほって置けないから、だと思っていた。「JUMさまの気持ちは嬉しいですわ。でも……私は醜い人間ですよ。あの時私は皆のことを見捨てて、一人逃げたんですのよ。 そんなクズのような人間とJUM様がつり合う訳ありませんわ。それに私一人が幸せになるわけにはいきません。 だから……ごめんなさい。」彼の告白に私は、私の考えを正直に述べた。「それって、あの火事のときのことか?」「ええ……」それを聞いた彼が口を開こうとしたとき、
「そんなのいくない。」急に何処からか義理の妹の声が聞こえた。辺りを見回すと、貯水タンクのところにいつの間にか妹がいた。「ばらしーちゃん!!」「昔のことなんて関係ない……大切なのは今なんだよ。たしかに昔のことも…忘れちゃいけない。 でも、だからって過去にとらわれてちゃダメ。そんなんじゃ……きっと…… きっと、きらきーのお姉さん達も悲しむ。たぶん、きらきーのお姉さん達だってきらきーに幸せになって欲しいと思ってるはず。」普段あまり喋らない薔薇水晶が私に一生懸命話す。「本当にそうでしょうか?本当にお姉様達は私に幸せになって欲しいと思ってくれているのでしょうか?」「大丈夫……きっと大丈夫だよ。ね……だから…正直になって……きらきー。」私は薔薇水晶の言葉を聞いて考える。確かに過去に囚われて続けていては駄目だ。でも、本当にいいのだろうか?私はそれから数分後心を決めた。「わかりましたわ。ばらしーちゃん。私、本当の気持ちをJUM様に言いますわ。」私は前に進むことを決めた。お姉様方のことはきっと一生私は背負っていかないといけないだろう。でも、私はそれでも進むことを決めた。彼と、そして、私に勇気をくれた薔薇水晶と。私は深呼吸をして彼のほうを向く。彼は黙って私の瞳を見つめてくれている。「JUM様、私もJUM様のことが好きです。こんな醜い私ですけれど、貴方の彼女としてこれからも宜しくお願いします。」私は私の本当の気持ちを彼に伝える。彼は私の言葉を聞き終えると、「こちらこそ宜しく雪華綺晶。それから、さっき言いそびれたけど、君は醜くなんか無い。 僕はいつも君の傍に居て君を見てきたけど、君はちゃんといつも自分の過去の弱さと向き合っている。 そんな君が醜いわけ無いじゃないか。むしろ、そんな君を僕は美しいと思うよ。 でも、君は少し無理をしているようにも見える。だから、僕に君を支えさしてくれ。 しんどくなれば僕に寄りかかってきてくれ。わかった、雪華綺晶。」その言葉を聞いて私は涙が溢れた。そんな私を彼は優しく抱きしめてくれた。
少しして私が落ち着いたのを見るとJUM様は私をそっと離してくれた。私に勇気をくれた薔薇水晶にお礼を言おうと思い探すが、彼女はまたいつの間にかいなくなっていた。気を遣ってくれたのかもしれない。私は彼にもう一度抱きしめてもらう。雪はまだ降り続いている、私の嫌いな雪が。でも今は、少しだけど好きになれた様な気がした。end
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