『劇場版名探偵くんくん~悪霊達の海の家~』
今日はお正月映画『劇場版名探偵くんくん~悪霊達の海の家~』の公開日。私立薔薇学園高等部の名物姉妹達は挙ってプレミア物の公開初日のチケットを注文し、結果的に全員分が揃ったのだった。真「全く、私一人で5枚も取れたというのにあなた達は何をやっていたの?」雛「ヒナ頑張ったもん!でも当たらなかったのー……」翠「私達は一人応募一通というルールをちゃんと守った結果ですぅ!」蒼「真紅、君はパソコンの回線を繋ぎ変えてID変えたりして何通も応募したんだろ?当然だよ」真「あら、注文は全部ジュンがやってくれたのよ。プロ串?……とか何とかも通していたし」金「その点、私は一度きりのチャンスを逃さず手に入れたのかしら!新年早々ついてるかしらー♪」薔「……当たった」水「まぁ、別に私は特別見たいって訳でも無いけどぉ、最近はお正月のテレビもつまんないし…」真「じゃあ皆行くわよ」皆「「「「「はーい」」」」」水「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!大体タイトルが季節外れすぎじゃないの!?」
そんなこんなで映画館真「さすがに早めに来たからいい席が空いているのだわ。皆、座りましょう」※簡単な配置図 スクリーン左← →右蒼 翠 雛 金 真 水 薔蒼(翠星石、また何か企んでるな……)翠(ヒーッヒッヒッヒ!チビ苺を映画の怖いシーンでビビらせてやるですぅ!)雛「画面おっきいのー!すごいのー!」金(何気に一番中央の席ゲーット!さすが姉妹一の策士な私!完璧な位置取りかしら!)真(さすが、チケット入手が困難だった映画館……すばらしい場所なのだわ!)水「私の左隣の人がちょっと不服だけど、ここはまあまあって所ねぇ」薔(あ、ポップコーン食べたい……)
薔「私、ポップコーン食べた」翠「やっぱり映画館と言えばポップコーンが食べたいです!」雛「ヒナはイチゴオレ飲みたーい!」薔「……」真「まあ、まだ上映まで時間はあるし欲しいわね。どうせ注文はバラバラだろうし、一旦皆で…」金「ちょっと待つかしら!ここは誰か一人が皆の分を買いに行くのが一番かしら!」雛「どうして?」金「皆でぞろぞろ行ったら他のお客さんの邪魔になるし、荷物だけ残していくのも無用心かしら!」翠「さ、さすが金糸雀ですぅ!」真「私達姉妹一の頭脳は伊達じゃないという事ね」金「ふっふーん……」皆「「「「「じゃあ買い物よろしくー」」」」」金「ちょ、ちょっと私が行くのかしら!?」翠「言い出しっぺが行くのが当然ですぅ!じゃあ私コーラで」雛「ヒナ、イチゴオレがいい!」真「午後ティーのストレートでお願い」水「ヤクルト」薔「ミスターX……※自販機にある、何が入ってるか買って出て来るまで分からない奴」金「皆勝手かしら……」蒼「……僕も手伝うよ、金糸雀」金「ありがとう……蒼星石だけが頼りかしらー……」
金「お待たせかしらー!」蒼「ジュースから渡すから、頼んだ人にまで回してね」薔(今日は……つぶつぶみかんだった……前は摩り下ろしりんご……果物強化月間……)水「あらぁ、これヤクルトじゃなくてピルクルじゃなぁい……別にどうでもいいけどぉ」真「やけに氷が多すぎるのだわ。これではせっかくの紅茶が……」雛「おいしーい!」翠「ふぅ、まずは一息ですぅ」金「はい、蒼星石の緑茶かしらー」蒼「ありがとう。じゃあ、ポップコーンも回すよ」翠「これは……塩とバターとキャラメル味が一緒に入っているですぅ!」金「どうせバラバラに買ったら途中で奪い合うのが目に見えているからこの私がチョイスしたのかしら!」蒼「ちょっと小さいけど、僕達の席の間に一つずつ置いて行くから足りると思うよ」翠「くぅー、このトロトロバターのかかったあつあつポップコーンは映画館ならではですぅ!うまいですぅ!」真「ちょっと、つまみ食いしないで早く回しなさい!それに食べるなら自分の分にしなさいよ!」水「ウフフ、まさに食い意地の塊ねぇ……」薔(どれから食べよう……)真「さて、トイレも一通り行ったし、もうすぐ上映よ……!」蒼「真紅、上映前から噂になっていたけど、今回はホラー要素が満点なんだってさ……!」翠「え!?そ、そうなんですかぁ?」蒼「うん。何でも今回は音響監督を始めスタッフが海外で本格的な研修をしてきた成果が出てるって」真「やけに詳しいわね……はっ!?あなた、まさか!」蒼「うん。さっき買い物に行った時に買ったんだ……今回の映画のパンフレット」金「し、しまったかしら!せっかく私も買い物に出たのに買ってなかったかしらー!」雛「いいなー!蒼星石、あとで私にも見せてー!」翠「ダメですぅ!どうせチビ苺はイラストしか見ないのだから、まずは蒼星石の双子の姉であるこの私が見るですぅ!」真「ああ……チケットと同じくプレミア必至と言われたパンフレットがすぐそこに……」水「うふふ……あんな冊子一つに必死になってばかみたぁい……」薔(塩おいしい……)
蒼「……あ、もう始まるね。今回はかなり怖いらしいから、あまり大声出さないでね……?」翠「な、何でこの私を見ながら言うですか!?言うならチビ苺に言うです!」雛「ヒ、ヒナ怖くないもん!」金「ついに幕が上がったかしら!」真「くんくん……この大画面、迫力のステレオであなたに出会えるなんて……」水「まあ、せいぜい楽しませてもらうわぁ……」薔(塩……なくなりそう……)『く、くんくん探偵!おかしいですよ!だって僕達、さっきまでかき氷を……』『落ちつくんだ!とにかくこの焼きそばは、ただ事じゃないって事だ……』蒼(大丈夫かな、翠星石……震えてるよ……)翠(チ、チビ苺を驚かすタイミングが掴めんですぅ……べ、別に私が怖いのを我慢するだけで精一杯って訳じゃ)『うわあああああ!メ、メロン味がぁぁぁぁ!!』翠「きゃあああああああああああああああああああ!!」雛「いやああああああああああああああああああん!!」蒼「い、いい年してやめてよ二人共……みっともないなあ……」金「む、むしろ、二人の声で心臓バクバクかしらぁ……」真「……全く、同じ姉妹として恥ずかしいのだわ」水「……うふふふふふぅ……真紅ぅ、あなた今ちょっと震えてなかったぁ?」真「そ、そんな事はないのだわ。ただ、ちょっと二人の声がいきなりだったから……」水「そぉ?くんくんのかき氷に練乳がかけられたあたりからかわいいほっぺが引き攣ってたわよぉ?」真「そ、そんな事……そう言う水銀燈こそ、おでこのそれは冷や汗ではなくて?」水「こ、これはぁ……ピルクルの汗よぉ。乳酸菌が多いと、ついねぇ」薔(あ、バター味もおいしい……)
『こ、これは……フランクフルトのマスタードじゃ……』『うわあああああ!やっぱり、もう俺達はおしまいなんだぁ!』真「……ねえ、水銀燈。向こうのポップコーンを食べなさいよ。手が当たってるわ」水「……ふん、どっちのポップコーンを食べようと私の勝手よ。それよりあなたが手をどければぁ?」真「な、何を……このポップコーンは私が食べると決めたの。どこに手を置こうと私の勝手なのだわ」水「ふ、ふん、強情ねぇ……まあいいわぁ。私もあなたの指図を受ける気はないし別にこのままでも……」『きゃああああああああ!たこ焼きにマヨネーズが!!』真「……!」水「……!」真「……ちょっと、手を握ってこないでくれない?」水「な、あなたが先に握って来たんでしょう!?そっちこそ離しなさいよ!」『踊ってる……花カツオが踊ってるなんて……!』真「……!!」水「……!!」真「……あなた、手の平に汗をかきすぎなのだわ」水「そ、そっちの汗が移ったのよ!汗の中の乳酸菌を調べればちゃんと……」『……待ってくれ!声が聞こえる……これは……青ノリ?』真「……!!!」水「……!!!」薔(バターも無くなった……でもキャラメルおいしい……)
蒼「あー、面白かった!」翠「ま、まあ、今までのシリーズの中でも上から数えられる話だったと認めてやらんでもないです」雛「こ、怖かったのぉ……途中で翠星石が手を繋いでくれてよかったの……」翠「そ、そうですぅ!このチビ苺ったら私の手をいきなり握ってきて……」雛「違うの!翠星石が焼きとうもろこしの話の時からいきなり……」翠「なっ……でたらめ言うなですぅ!」蒼(その時僕の手も握って来たよね、翠星石……)金「ああ、怖かったけど楽しかったかしら!……あら?」真「……ハラショー」水「ま、まあ、アカデミー努力賞くらいはあげてもいいかもぉ……」金「二人共、おてて繋いでとっても仲良しかしら!」真「ち、違うのだわ金糸雀!これは途中から水銀燈がいきなり!」水「な、何言ってるの!?私は嫌がったのに、あなたが無理やり!」真「ちょっと、いい加減に離しなさいよ!……ああ、指という指が引っかかって取れない!」水「ひっ!?しかも下はポップコーンでベッタベタ……何とかしなさいよ真紅ぅ!」金「こういう時のためのお手拭かしら!ちゃんとお店で貰っていたなんてさすが私!……あら、これもう渇いてる…・・・」薔(完食……おいしかった……)ちなみに今回の映画はこの年の興行収入一位だったとかそうでないとか。あと、蒼星石が買った映画のパンフは散々姉妹に回し読みされて、帰って来たときにはしわと落書きまみれでしたとさ。完
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