「第一話 Begegnung」 #2 Enju
『 Eine Paradiesische Phantasie 』「第一話 Begegnung」 #2 Enju真「…」ジ「…」真「…」ジ「…」真「何か話しなさいよ」ジ「って言われても…」真「聞きたい事とか無いの?」ジ「う~ん…。じゃあ、どうして神子に選ばれたの?」真「…」ジ「ほら、聞いたら聞いたで答えないじゃないか…。」真「選ばれた理由は知らない。生まれた時にはこのローザミスティカを手に持っていたの」ジ「その指輪の宝石?」真「そう。これが神子の証…」最初の塔、地の塔へと向かう途中の馬車の中真紅とジュンは会話少なげに時を過ごしたジュンが真紅から聞いた話は魔法について、神子の仕事についてジュンは魔法が使えなかったこの世界で魔法が使える人は少数派だったしかし、これといって特に使える人に条件は無い「魔法の属性は何種類?」と聞いたら馬鹿にされた「近衛隊隊長の癖に何も知らないの?」と最初に向かう塔は、地の塔ローゼン王国領土内にある六つの塔は六つの魔法の源を象徴するこの世に確認されている魔法は、天地海光闇無の六つ六つの源が開放されたということは、すなわち世界に流れ出る魔力が増えたということ崩壊を止めるには多量のマナが必要と考えられている強大な魔力を持って輪廻は遂行される地の塔は王国の整備が行き届いているので、危険は少ないだろう…会話が止み、日が沈み、夜が明けた魔法で動く無人の馬車が止まった真「…着いたようだわ」ジ「ここが地の塔?」真「そうよ。伝説になっているけれども、地の塔は王国の管理下にあるわ。何十紀もの間」ジ「だから綺麗なのか…」大地が突き上がったかのような巨大な塔外壁は土によって出来ており、纏うかのような風がやさしく吹いているその様子はまるで御伽噺ジュンが伝説に出会ったのは二度目だがこの伝説は優しい感じがした真「登るわよ」ジ「わかった」警備のものへ挨拶し、中へと進むジュンは魔物に警戒していたが、一匹も出ずに拍子抜けした長い螺旋階段を上がり、いくつもの階を歩いていく伝説とはよく言ったものだ魔力の無いジュンにも空気に満ちた魔力の強大さに気付いたしかし、とてつもなく高い塔だ旅疲れもあり、偶然見つけた小部屋で一泊することにした魔物もいないし安全なのだが万が一を考えジュンは警戒し、真紅だけを眠らせた…何も出ない塔魔力だけが満ち、このような高いところに人が入ったのはおそらく50紀前の輪廻の時以来だろう真紅とジュンが塔に入ってすぐある人物が塔に近づいていた彼の名は槐引き連れているのは二人の少女名は雪華綺晶、薔薇水晶槐の放つオーラには異質さを感じるが二人の少女の放つオーラはさらに異質周りの空間が歪んで見えるほどだ塔の入り口を通過しようとする警備兵が静止しようとしたその刹那二人の少女が手をかざす不意を疲れた警備兵数人は一瞬のうちに息絶えた槐「二人とも、よく聞きなさい。中には神子が既に入っている。神子だけは殺してはだめだよ」雪「お供のものは?」薔「殺していい?」槐「好きにしなさい」槐が微笑むと二人とも微笑む三人は静かに真紅の後を追って塔へと入った静かに静かに、真紅とジュンの身に危険が迫っていた…ジ「真紅、真紅」真「んっ?」ジ「そろそろ出発しよう。何か嫌な予感がする…」真「そうね、誰かがこの塔に入ったみたいだし」ジ「わかるのか?」真「ええ、かなりの魔法の使い手が二人…。それと、もう一人は…わからないけど、三人だわ」ジ「近づいてくるのか?急いで上に行こう!」真「ええ」二人は急ぎ足で上を目指す五時間ほど歩いただろうか?最上階と思しきところへ出た広い空間に、大きな宝石が埋められている宝石?いや、魔力の原石魔力が固まって出来た石だ強烈に、肌を刺すように魔力が降り注いでくる真「ここが…封印の間」ジ「ここの封印を解けばいいのか?」真「そうよ」ジ「どうやって?」真「壊す」ジ「えっ!?」真「壊すのよ!神子にしか使えない魔法があるわ。古代の解除の魔法…『Freilassung』」ジ「それをぶつけるのか?」真「そう。地の魔法は大地と炎を司る。大地と炎を解除する!詠唱に時間がかかるから少し待って」真紅は詠唱の体勢に入る指をを目標に向け、眼を瞑る柔らかな唇からは古代の言葉らしき呪文が漏れ出すジュンが今まで見てきた魔法とは少し違うなんというか、周りを遮断しきっている感じだ今はどんな物事も真紅の興味を誘わない槐「さぁ、やめようか。その耳障りな詠唱を…」ジ「!!」突然後ろから声が届いたそれと同時に突風がジュンの身を打つ床に叩きつけられ頭がくらくらしたが立ち上がって声の主を探した金髪で背の高い男整った顔からは冷たい何かを感じるその両脇には二人の似通った少女まるで鏡に映したように左右対称の女の子白いほうが手をかざしているジ「お前らか!この塔に侵入していた奴らわ!」槐「薔薇水晶」薔「…」薔薇水晶と呼ばれた紫の女の子は手をかざす詠唱も無く飛んできたのは闇を固めたような球体ジュンは慌ててリュックで受けた唖然とした衝撃は無かったが、リュックが消し飛んだのだいや、消し飛んだという表現は違う無くなったのだ!薔「…それに触ったら…消える」雪「私のに触ったら、生まれる」「「私達は天と闇の魔法使い」」ジュンは初めて見る魔法に動揺を隠せないファイヤーボールや氷の矢など、普通の魔法には臆する事無く突っ込んできたが今回の魔法はヤバイ天の力を見たわけではないが、闇の魔法だけでも危険だジ(僕だけでは勝てない…。真紅は?)真紅はこの騒ぎの中でも自分の世界に没頭している心を閉ざして体内で魔力を練っていく過程に、周りの状況なんて関係ないからだジュンは今までに無い恐怖を感じた死線はいくつも超えて生きたが、今回ほど死を覚悟したことは無かったジ(やばい、…やばい!)とりあえず剣を抜いただが、あの力を見た後では剣がとても頼りなく思えた今までは剣だけで自らの命を守ってきたしかし、この剣も今日は役に立たないだろう部屋の中を走り回り、標準を外すしかし、薔薇水晶はお構い無しに次々と球体を放ってくる避ける度に床に空間が出来た槐「薔薇水晶、神子を狙え。あいつは庇おうとするはずだ」薔「…はい」薔薇水晶は標的を真紅に変える真紅は詠唱中で身動きが取れないジ(まずい!)とその時!突然真紅の手が輝く指輪が真紅の魔力を吸い込み増幅する増幅した魔力は光となり溢れ出す ―詠唱が止む― ―眼を見開く― ―手を、翳す―真「『解除、Freilassung!』」急激な空気の渦が部屋一体を包むそれは一回収まり一気に広がると同時に強烈な光が魔力の塊を貫く魔力の塊は音も無く砕け散った…槐「しまった!封印が解かれてしまった!」魔力の石が砕け、柔らかな光が溢れ出すそして、神子の体を包んでいく真「塔に宿る命よ!我が名は真紅、輪廻の神子である!守護神の名の下に契約を結べ!」溢れ出していた光は徐々に勢いを落とし真紅の左手の薬指へと吸い込まれていった槐「雪華綺晶!薔薇水晶!神子の指輪を壊せ!」二人が同時に白と黒の球体を放つが、真紅は契約の途中塔の大いなる力によって契約者は守られた真「私が詠唱中に邪魔者が入ったみたいね…」ジ「奴らはヤバイ!特にあの二人!」真「わかってるわ。天と闇の担い手…。」真紅と薔薇水晶、雪華綺晶が対峙するジュンは真紅がどんな魔法を使うのか見たことが無いのを思い出したジ(あいつ、解除以外にどんな魔法を使うんだ?)真「逃げるわよジュン!」ボソッと、真紅が何か言ったジ「何?聞こえない!」嘘だったジュンの眼は確かに見た真紅の口が「逃げるわよジュン」と動いたのを真「逃げるって言ってるのよ!」ジ「戦わんのかい!」真「さっき自分でも言ってたじゃない!あいつらやばすぎよ!目的は達成したし逃げるわよ!」真紅は急いで何かを取り出すこんな時のために王から授かっていたマジックアイテム瞬間移転の魔法が入った魔法の筒急いで開け唱える真「私と桜田ジュンを塔の下へと送りなさい!」空間が歪み二人を包む二人の少女が慌てて放った白い球体と黒い球体が、二人の消えた空間を虚しく空を切った…寸での所で二人は脱出できた槐「逃げられたか…。まぁ封印が解かれたのはまだ一つ、後の五つを止めればよい…」~#2 Enju~
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