さよなら…大好きな人…
いつものようにすぐにケンカをして…「まったく…使えない下僕なのだわ…」「…おい、終いには怒るぞ…?」「なに?下僕のくせに主人に反抗するの?」「お前…いい加減にしろよ!?」「何よ!?私が悪いっていうの!?下僕が主人に従うのは当然でしょ!?」いつものように軽い口づけをして…「ごめんなさい…私が悪かったのだわ…」「…」「…もう寝ましょ」……ちゅっ「…」いつものように朝寝ぼけてみても…「ん…ジュン…おはようなのだわ…」「ジュン?どこにいるの?」いつもと違う…貴方が私の傍にいない…?
あぁ…そうか、私は彼に捨てられたのか……当然と言えば当然よね。彼の気持ちも考えずにいつもワガママばっかり…「ううっ…ジュン…私が悪かったから…謝るから…素直な女の子になるから…帰ってきてぇ…」女々しいヤツ…と思われるかもしれないけど、私はまだ彼を愛している…この想いは決して消えない「お願いだから…私をもう一度愛して…」貴方が部屋を出ていく気配はわかってた。ただそのときはどこかに出かけるのだろうと思い、帰ってきた貴方を驚かそうと思って寝たフリをしていた。何故あのとき寝たフリなんてしたんだろう…あのときに起きていたらもしかしたら…「今なら…まだ間に合うかしら?」そう思って携帯に手を伸ばし、かけ慣れたNo.000(メモリー)を押し掛けて………静かに指を止めた。
忘れたいから普通に振る舞う「あら、水銀燈?久しぶりね」「久しぶりぃ~…あらぁ?今日はジュンは一緒じゃないのぉ?」「……私…ジュンに振られちゃった…」「えっ…真紅…それホントぉ?」「ホントよ…でも私は大丈夫。全然気にしてないわ。あ、じゃぁ仕事があるから…また今度ご飯でも食べましょ?じゃあね。」「あ、真紅…」忘れたいから貴方の写真も捨てる「…(ぽいっ)」「こうしてみたら…貴方との写真ばっかりだったのね…」忘れたいから酔いつぶれてみる「んぐっ……ぷはぁっ…すいません、もう一本欲しいのだわ…」「真紅まだ飲むのぉ?そんなに飲んだら体壊しちゃうわよぉ…」「大丈夫…これくらい水よ…」「そんなこと言ってぇ…もう顔真っ赤じゃなぁい…」「大丈夫って言ってるでしょ!?」「真紅…」「ご、ごめんなさいなのだわ…」「……気にしないでぇ」
忘れたいのに…気付けば貴方のことばかり思いだす…貴方は私の最初にできた恋人だった…いっぱい笑いあって、いっぱい泣いて、いっぱいキスして、いっぱいケンカして……もうあの頃には戻れないの…?ねぇ…応えてよ…"考えない"と思うことは"考える"と同じコト…貴方を失って今気づいたわ…私は自分で思ってた以上に脆く、儚い人間だったのね…「今なら…まだ間に合うかしら?」そう思って貴方の帰り道を探しかけて、ため息で目を伏せた…
「真紅…ホントに行っちゃうのぉ?」「えぇ…ごめんね水銀燈…いっぱい迷惑かけて…」「何言ってるのぉ。私たちは友達でしょぉ?」「…ありがとうなのだわ」貴方と二人で過ごしたこの街は、どこにでも貴方が溢れてる。貴方と一緒にご飯を食べたレストラン、貴方と一緒に買い物をしたブティック、貴方と初めてキスをした公園……この街にいると貴方のことをまた思い出してしまう…辛すぎるから、私は今日この街を出ていく…肌寒い朝を待たずに。「今ならまだ…」なんて言葉は結局最後まで言えなかったわね…さよなら…大好きな人…
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