「しっぽの話」 メイメイ編
我輩は猫であるぅ。名前はメイメイ……クワァ~~~~~~ぅどこで生まれたかとんと見当も……ついてるわねぇ。近所の獣医さんの所だったらしいわぁ。何でも、「てーおーせっかい」だったそうでぇ。お医者さんの手の上でニャ―ニャ―鳴いてた、って話しよぉ?あー。さておき、おはよぉ。メイメイよぉ。この出だしは、スィドリーム曰く、猫のエッセイでは基本なんですってぇ。とりあえず、自己紹介と生まれたときの事は伝えるものらしいわねぇ。ま、それはいいとして。私の朝は、眠そうなご主人様の、缶きりの音からはじまるわねぇ。それが聞こえたらもそもそおきだして、足元でにゃぁ。たまにご主人様が寝坊をしたら、缶きりの音がしなくても、枕元でにゃぁ。起きなかったら顔を押してにゃぁ。それでもダメならもいっちょ押してにゃぁ。更にダメならお腹に乗って、起きるまで顔をぐにぐにぐにぐに、にゃぁ。たとえ払われても、めげない。まけない。このまま「ちこくすんぜん」になると、朝ご飯を抜かれてしまうのよぉ……これはかなりの死活問題だわぁ。で、何とか起こしてご飯をもらって、ご主人様が出発したら、猫用ドアをそぉっと押して外へお散歩。今日は屋根伝いに歩いていったら、ベランダでスィドリームがゴロゴロしてたから、降りていってしばらくお話していたわぁ。最初ちょっと毛がぶわっと広がって、何かに驚いていたみたいだけど、なんだったのかしらねぇ。そうそう、スィドリームはきれいな三毛の女の子。ちょっと口が悪いのが玉に瑕だけど、とっても元気でかわいい良い子よぉ。
それにしても、三毛っていうのは口が悪いのが相場なのかしらぁ。三丁目のミケさんも、江戸っ子べらんめえでかなりのものなのよねぇ。ま、それは今はどうでもいいわぁ。そのミケさん、じゃなくてスィドリームと楽しくおしゃべりした後は、二人でお昼寝。ここの家のベランダ、日当たりが良くてほんっと過ごしやすいのよねぇ。うらやましいわぁ。うちなんて、ご主人様は学生の一人暮らしなもんだから、三階建ての小さなマンションの一階で、日当たりは正直かなり微妙。西日は入るから、夕方にはあったかくなるんだけれどぉ。……あら、突然寒くなったわぁ。ああ、もうここは日が当たらなくなっちゃうのねぇ。そして、さすがは居住猫。スィドリームは、最後まで日が当たる場所を良く知ってるわぁ。それじゃ、そろそろおいとましようかしらねぇ。ベランダから一階のひさしに飛び降りて、そこから少し離れた塀にジャンプ。そのまま塀伝いに歩いて庭側へ。ここからだと、庭と縁側の様子がよぉく見えるのだけど、そこには、この家のもう一匹の住人、レンピカちゃんが幸せそうにひっくり返って眠ってたわぁ。ううん、あそこも日当たり良好で気持ちよさそうねえ。今度お邪魔させてもらおうかしらぁ?さてさて、そのまま歩いて次の行き先へ行こうと思うのだけれども。最近は、「ぼうはんたいさく」とかで塀の上に植木鉢とかが置いてあって面倒だわねぇ。避けたり飛び越えられるならいいけれど、場合によっては完全に通路をふさがれちゃって、大回りしないといけないこともあるし。横着して飛び越えたら、間違えて落っことしちゃって、おじさんに怒鳴られた事もあったわねぇ。ああ、もうすぐだわぁ。あそこに見える大きな塀の広い庭付き一戸建て。ココが次の目的地。この大きな塀に飛びのって超えれば……到着ぅ。
ウォン!!『誰です!』あぁ、ごめんごめぇん。私よぉ。吠えられた方を振り向けば、立派な黒い皮の首輪に、同じく黒く滑らかな毛皮。さっきのレンピカちゃんと比べても、一回りは大きく見える体のこの子は…『ああ、メイメイさんでしたか。いらっしゃい』名前はホーリエ。シェパードって種類らしいわぁ。性格は、どこまでも生真面目で優しい性格。ちっちゃい頃から厳しくしつけられて、芸も完璧。その上私みたいな猫に対しても礼儀正しいと来たかなりの完璧超犬よぉ。『今日もまたお昼寝ですか?』ええ。そのつもりぃ。あなたのおうち、日当たりが良くてすごく寝心地がいいんですものぉ。『ありがとう、メイメイさん。でも、いつも言っていますけれど、 ご主人様が帰ってくる前には、引き上げた方がいいですよ?ご主人様は猫がとても苦手ですから』苦笑しながらホーリエが言う。そうなのよねぇ……そのうえ、ホーリエのご主人様は私のご主人様も嫌いみたいなのよねぇ。犬猿の仲、っていうのかしらぁ? まったく、私たちはこんなに仲が良いのにぃ。ねぇ?ホーリエ。『あはは、でもほら。喧嘩するほど仲がいい、とも言いますし。 そのうち本当に仲良くなってくれますよ』
だといいんだけれどぉ。ふわぁ……あー、それじゃあありがたく、この日当たりのいいあなたのおうちのウッドデッキでお昼寝させてもらうわねぇ。『どうぞ。じゃあ、私ももう少し隣で休もうかな。庭の見回りの時間まで』どーぞぉ……おやすみぃ『おやすみなさい』……「ホーリエ!散歩に出るのだわ!いらっしゃい!」目を覚ましたら、もう随分日が傾いてたわぁ。ウォン!『はい!行きます!』そして、声に呼ばれたホーリエが、そろそろ帰るよう目配せしてから、嬉しそうに走っていく。散歩、かあ。確かにひろぉいお庭だけど、大きなあの子にしてみれば、随分狭く感じるのかもねぇ。あんなに尻尾振っちゃって。そういえば、さっきの声ってあの子のご主人様よねぇ。それなら、うちのご主人様も帰ってきているのかも。そろそろおうちに帰る時間ね。
犬小屋の、屋根の上から塀に乗って、すたすた歩いておうちへ帰る。広いお庭も、あたたかいベランダも無いけれど、やっぱりおうちが一番ねぇ。どうしてかって? それは、もちろん帰るのがこんなに楽しく感じるんですもの。もちろん、外も好きだけどぉ。でも、家には冬はコタツだってあるし。帰ったら、ご主人様は猫じゃらしで遊んでくれる? それともご飯が先かしらぁ?期待にしっぽを膨らませ、私は家路についたのでした。……あ、それじゃあ次、お願いねぇ?ホーリエぇ。ふわぁ……(頷く)『わかりました。では次は私の番ですね』
このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー と 利用規約 が適用されます。
1文字以上入力してください
本文は少なくとも1文字以上必要です。
1文字以上入力してください。