『貴女のとりこ』 最終回
『貴女のとりこ』 最終回――それから、事件は、どうなったと思います?女子高生失踪事件の被害者に、一人の男子生徒の名が、加えられました。警察も八方手を尽くして捜索しましたが、彼女たちの足取りは杳として知れず、半年も経つと、事件は風化し始めていたんです。マスコミは、すぐにセンセーショナルな話題に飛び付きますからね。やがて、15年の歳月が過ぎて、事件は公訴時効を迎えました。事実上の迷宮入り。私は罪に問われることもないまま、人目を憚るように暮らしてきました。それが正解だったのか、誤答だったのか……。今も、苦しみが続いていることから察すると、やはり過ちだったのかも。ずっと――私の人生には、あの6月が付きまとっています。だからなのでしょうね。時々、こうして誰かに、ヒミツを打ち明けてしまいたくなるんです。身体中にこびり付いた重石を、そっと誰かに預けて、少しでも楽になりたいから。あら? 随分と……怠そう。ごめんなさい。やっぱり、お話が長すぎて、疲れてしまったようですね。え? そんなこと無いですか?ああ…………よかったぁ。どうでしょう。お紅茶をもう一杯、いかがですか?お帰りになるにしても、眠気覚まし程度に、もう一杯だけ。ね?さあ、どうぞ。……あらら、零しちゃいましたね。どうしました? カップが持てないくらい、手が震えてますけど。そんなに、私が恐ろしいですか?殺人を犯した、この私が――ふふふふっ。逃げようとしても、もう手遅れですよ。そろそろ…………お薬が効いてくる頃ですものね。ヒミツを知った貴方を、帰すわけないでしょう?ほぉ~ら。もう、満足に歩くことも出来ない。ウフフフフ……。疲れたのなら、思う存分、お眠りなさい。あっちの世界で、永久に――――
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