第四十九話 JUMと文化祭巡り
「一つ屋根の下 第四十九話 JUMと文化祭巡り」
「引継ぎもOK……いこう、JUM。」「ん、そだね。じゃあ、午後はよろしくね桑田さん。」「うん、任されたよ。ごゆっくりね~。」僕と薔薇姉ちゃんは桑田さんに午後を任せて教室を後にした。今日の午後は薔薇姉ちゃんと約束してたからな。そんな訳で、僕らは校内を歩いている。ちなみに、薔薇姉ちゃんはメイド服で歩いてる。いや、文化祭の最中だから宣伝効果でいいんだけどさ……やっぱり着慣れてると恥ずかしくないとか。「そういえば…昨日はJUM…どこ見に行ったの?」「ん?昨日は銀姉ちゃんのお化け屋敷と、カナ姉ちゃんの実験ショーかな。どっちも散々だったけど。」昨日を思い出す。真紅姉ちゃんの方は、銀姉ちゃんの悪戯が爆発して真紅姉ちゃんは泣いちゃうし、カナ姉ちゃんの方はヒナ姉ちゃんが巨大水風船爆発させてずぶ濡れになったし。いやまぁ……散々だったけど色々とイイモノは見れたかな。と、そんな事を思っていたときだった。ぐ~~~っとお腹がなる。「あ……ははっ、そういえば何も食べてないね。」「うん……じゃあ、1-Bに行こうよ……欧米の食べ物があるらしいから……」1ーBと言えばヒナ姉ちゃんと柏葉のクラスだ。確か、『欧米かっ!』って某芸人みたいな店名だったな。欧米の文化を紹介しつつ、食文化に触れる。まぁ、食のがメインだろうけど。あれ?食といえば……「それで……その後キラキーのトコに行こう。ふ~どふぁいと。」ああ……いました。今回の文化祭最大の食のクラスが。昼は軽めにしよう。多分、キラ姉ちゃんの勇姿を見てるだけでお腹一杯になりそうな気がするしね。
「いらっしゃいませ。あ、桜田君と薔薇しー。」僕らは1-Bに到着する。店内にはハンバーガーだの、パスタだのピザだの。偏ってはいるが、欧米を連想させる食べ物が多くあった。「や、巴。席……空いてないみたいだね…」店内を見回す。そこは、うちの店ともいい勝負が出来る集客だった。むむ、侮れない。その中で目を引くのがクルクルと踊るようにメニューを運んでる小さなウェトレスだ。多分、うちで言う薔薇姉ちゃんや桑田さんみたいな看板だろう。そして、僕はその看板に見覚えがありすぎる。「あ、JUMと薔薇水晶なの~!」言わずもがな、ヒナ姉ちゃんだ。ヒナ姉ちゃんはチューブトップに短パンと何とも露出の高いアメリカンな格好をしていた。あれ?ヒナ姉ちゃんて何気に胸……ごほんごほん、何でもないです。「うん、繁盛してて満席。でも、隣……1-Aとウチは提携してるからこっちで買って、あっちで食べてもいいよ。」1-Aと言えば、真紅姉ちゃんのクラスだ。確か、休憩所とか言ってたな。うん、席余ってそうだ。「じゃあ、そうしようよ薔薇姉ちゃん。何か食べるもの選んでさ。僕は何にしようかなぁ…」「そうだね……じゃあ、私もメニュー選ぶ……」薔薇姉ちゃんとメニューを目で追う。なかなかお腹に溜まりそうなメニューが多い。「ヒナはハンバーガーがお勧めなの~!とっても大きいのよ~。」中学の英語の教科書で見たな。確かに、アメリカのハンバーガーでかかった。アレ、食べてみたな。「じゃあ、僕はハンバーガーにしようかな。薔薇姉ちゃんは?」「んと……私はパスタ……後、ピザ。二人で分けよう?」「ハンバーガーとパスタとピザだね。それじゃあ、出来たら雛苺に持っていかせるから、二人は先に隣のクラスに行っててね。あ、これ引換券。」柏葉に引換券を渡される。僕と薔薇姉ちゃんはそれを手に、隣の1-Aに行った。「あら?JUMと薔薇水晶じゃないの。いらっしゃい。ゆっくりしていくといいのだわ。」真紅姉ちゃんも店番なんだろうか。このクラスの人間だからな。でもさ……でもさ、何で……「?どうしたの?早く座りなさい。」「真紅姉ちゃんはどうして椅子に座って紅茶飲みながら本読んでるのさ……」
そう、真紅姉ちゃんは店番と言われてもとてもじゃないが、そうは見えなかった。家に居るが如椅子に座り、紅茶を飲みながら本を読んで笑えるくらい優雅だった。「あら、私はこれが仕事よ。クラスの子に聞いてみる?」「いや、いいよ。何となく分かったから。」僕は椅子に座る。それに続くように薔薇姉ちゃんも僕の隣に座った。そして、周りから声が聞こえてくる。「なぁなぁ、あの金髪の子可愛くね?しかも、何か上品な感じでよ……」「ここ寄って行こうぜ。近くで見なきゃ損だって!!」とまぁ。要するに、真紅姉ちゃんがここでリラックスしてるのは客寄せな訳だ。確かに、もし僕が真紅姉ちゃんと他人だったら、見たいがために留まる気がしなくもない。それが狙いなんだろう。「は~い、お待たせしましたなの~!ハンバーガーとパスタとピザなのよ~!」ヒナ姉ちゃんがトレー片手に入ってくる。お、結構早いなぁ~。「有難う、ヒナ姉ちゃん。」「有難う、雛苺……その服も可愛い……」「う、ありがとなのー!ヒナも結構お気に入りなの。ちょっとだけ恥ずかしいけど……」ヒナ姉ちゃんがホンノリ顔を赤く染める。まぁ、露出激しいしね。そんなヒナ姉ちゃんを見ながら。もとい、一部分を凝視しながら真紅姉ちゃんが睨みを利かせる。「……は、はしたないわよ雛苺。そんなにむ、む、胸を強調させて。」「う?なら真紅も着る?真紅はヒナよりちょびっと背が高いくらいだから予備があるのよ~?」僕は争いに巻き込まれないように他人のフリをしながらハンバーガーをがっつく。うん、美味い。「い、嫌よはしたない。私はそんな格好は……」「……真紅は胸がないから……チューブトップきたら……断崖絶壁が丸分かりになる…もぐもぐ…」うわぁ……断崖絶壁て……漢字四文字ってどうしてこう、あたかも凄そうな気がするんだろう。おーい?真紅姉ちゃん?生きてますか?薔薇姉ちゃんもさ。もう少し言葉選ぼうね。
さて、微妙な空気になった休憩室を後にした僕らはいよいよ、魔王の君臨を見に行く事にした。その教室はすでに熱気に溢れている。二つの机があり、一つに結構痩せ目の男性が座っている。「さぁ!我らがチャンプに挑戦する命知らずがやってきたぁああ!!!」どうやら、その男性は挑戦者らしい。僕と薔薇姉ちゃんは閲覧席に座る。しかしさ、テレビ見てても思うけど、大食いとかっていかにも!って人より細い人のが多い気がするよね。「さぁ!我らがチャンプよ!愚かな挑戦者に鉄槌を下したまえ!雪華綺晶ーーーー!!!」アナウンサー熱いなぁ。と、黒いマントに身を包んだキラ姉ちゃんが現れる。そして、マントをバサッと脱ぎ捨て「私の胃袋は宇宙ですわ…」と、お決まりの台詞を言う。う~ん、いかにもラスボスっぽいなぁ。「キラキー……かっこいい……」カッコいいかなぁ?まぁ、薔薇姉ちゃんのツボが外れまくってるのは周知の事実だ。「さぁ!挑戦者よ!何で挑む!ソバか?ハンバーガーか?寿司か??」色々メニューあんだなぁ。挑戦者が選ぶのはせめてものハンデなんだろうなぁ。「いや、チャンプが選ぶといい。私はそれで勝負しましょう。」歓声が起こる。あえて、キラ姉ちゃんにメニューを選ばせるというのだ。漢だ……無駄に漢だ。「あら、紳士ですのね。それじゃあ……吉○家の牛丼復活を記念して牛丼といきましょう!」キラ姉ちゃんが言う。うわぁ、ヘビーだなぁ。ちなみに、吉○家はしばらく限定で発売し年内には完全復活を目指しているらしい。まぁ、そんなどうでもいい話は置いといて、次々と机に牛丼が置かれてく。「ふふふっ、牛丼一筋16年~ですわ♪」キラ姉ちゃん、それ古い。しかも、今の16歳はきっと知らない……「さぁ!準備が整いました!果たして、チャンプを下す事が出来るのか!?フードファイトォ……レディ…」キラ姉ちゃんが満面の笑みで箸を割る。鬼気迫る顔の挑戦者とは対照的だ。「GOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」
ガツガツガツ!!!バクバクバク!!ムシャムシャムシャ!!!そんな効果音が挑戦者から聞こえてきそうだ。物凄い勢いで牛丼をかっ込んでいる。一方、チャンプはと言えば「卵割っておいてください。あ、胡麻ドレッシングも下さいな。ああ、幸せですわぁ~。」何とも余裕。余裕なんだが……物凄く規則正しく箸で牛丼をつかむ→口にもっていく→噛み砕くを行っていた。もうね、コンマ1秒の狂いもないくらいに同じペースで箸を進めていく。笑顔で。「矢張りチャンプは恐ろしいいいいいい!!その体のドコに入るんだぁああ!!すでに10杯めええええ!!」一方、挑戦者は4杯目だ。いや、これでも頑張ってるとは思うけどね。「胡麻ドレ追加ですわ~!」キラ姉ちゃんがサラダ用の胡麻ドレッシングを牛丼にかける。ちなみに、これがなかなか美味しい。豚丼でも美味しいから一度やってみるのをお勧めする。さて、勝負はと言えばすでに一方的な残虐ファイトで終わった。改めて、恐るべしキラ姉ちゃんだ。「ご馳走様でした。大変美味しゅう御座いましたわ。」行儀よく手を合わせる。ああ、本当笑顔で食べるよなぁ。「恐るべしチャンプ!!彼女の本気の前には挑戦者は足元にも及ばずだあああ!!」「あら?それは違いますわよ?今のは本気ではないです。ウォーミングアップですわ。」キラ姉ちゃんが、某大魔王様が「今のはメラゾーマではない。メラだ。」と言わんばかりに力の差をアピールする。てか、あれでウォーミングアップですか……本当に宇宙の胃袋を持ってるのかもな、キラ姉ちゃんは。「キラキー……凄いね。」いやさ、凄いとかそういう次元じゃないと思うよ。いや、本当。「JUM~!薔薇しーちゃ~ん!私の勇姿見てて貰えましたか~?」僕らに気づいてたのだろうか、キラ姉ちゃんがブンブン手を振る。ええ、本当に勇姿を拝ませて貰いました。
「二日目も終わっちゃったね……文化祭は後一日……」夕方……僕は薔薇姉ちゃんと二人で帰路についていた。「そうだね。そう考えると少し寂しいよね。」祭りはいつか終わるもの。楽しい時間は何時までもは続かない。「うん……でもね。でも、とっても楽しかったよ……」「そうだね。僕も楽しかったよ。」テクテクと夕日を背に歩く。ふと、手がギュッと握られる。隣を見れば、薔薇姉ちゃんが僕をじーっと見ていた。「あのね……楽しかったのは、JUMが居たから……お姉ちゃんたちと居ても楽しいけど…私が一番好きなのはJUMと一緒にいる時間……文化祭じゃなくても…一緒にいる時間がいつも一番楽しい時間……」薔薇姉ちゃんが小さな声でボソボソと言う。僕は思わず顔が赤くなるのを感じる。「JUMと一緒なのが大事なの……だから…今日はずっと一緒にいれて幸せだったよ…」そう言って薔薇姉ちゃんはニッコリ笑った。僕はつい、手を強く握り返す。「僕も薔薇姉ちゃんと一緒に回れて楽しかったよ。それに……薔薇姉ちゃんが僕といるのが幸せなら、薔薇姉ちゃんはきっと何時も幸せで居られるよ。」何だか我ながら恥ずかしい事を言ってる気がする。でもまぁ、たまにはこんなキザでもいいでしょう?「なぜならさ……僕らはずっと一緒だから。今までも、これからも。だって……姉弟だからね。」「JUM……うん、一緒。ずっと一緒……私もJUMもお姉ちゃん達も…だから、みんな幸せ。」僕らは再び家に向かって歩き出す。いつも側にあるささやかな幸せを手にするために。END
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